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風見さんが戻ってきたらすぐに食べれるように、小夜はご飯を並べて待っていた。
「小夜、いつもありがとう。美味そうだ。」
「どういたしまして。手を洗ってきて?ご飯よそうね。」
食事をしてもらいながら、篠崎のおじさんから言われたことを風見に話した。
「ふーん、なるほどね。」
「だからね、おれにできる仕事って何だろうって思って。」
今まで、教師以外の職業を考えたことがなかったおれの もやもやを話したら、風見さんは携帯を操作し始めた。
「・・・就活ってしたことある?」
「ううん。おれ、公立の学校の先生になるための試験と面接だけしかしたことない。」
試験対策も、特化したものしかしなかった。
「そっか。サイトがあってね、こういうの。」
画面をタップしてみせてくれた就活サイトには色んな企業が掲載されていた。
「小夜の知っている会社もあるだろうし、知らない会社もあるだろうし。まずは、どんな仕事があるのか見てみるのも良いかもだよね。小夜としては、司法書士になりたい?」
「正直、分かんなくて。」
風見さんに携帯を返した。
「多分、おれが勉強を始めたら母さんも叔父さんも喜んでくれるだろうけど。」
そう言うと、風見さんは何とも言えない顔をした。
「小夜、そこじゃないかな?」
「そこ?」
風見は頷いた。
「身内の誰かが喜んでくれるから、その仕事を選ぶって違うと思うよ。その仕事を選択するかしないかは、自分の意思だけで決定しなきゃ。じゃないと、続けられないよ?」
小夜は頭を殴られたような衝撃を受けた。
「あ・・・。おれ、だからダメだったんだ。」
「ん?」
「父さんが教師で。父さんが喜んでくれるから、先生になった。」
・・・小学生のときの作文を思い出した。
父さん、忙しくて遊んでくれなかったから。
おれも先生になりたいって書いたら、父さんが勉強見てくれて。嬉しくて、それで。
「いつの間にか、それが夢になっていたんだ・・・。」
「実際に、教員にはなったんだろ?」
「うん。でも、違うって思ったんだ。ここには居場所がないって。」
思い出すと、胸がヒリヒリする。
そっと胸を押さえた。
「小夜。きっかけはどうあれ、夢を現実にした能力は凄いことだから、それは自分自身を認めてやって?」
風見さんの言葉に、ほんの少し、胸の痛みが和らいだ。
「うん。・・・でも、よくわかったよ。おれ、自分自身では何にも考えてなかったこと。」
「ん。」
「・・・これから、ちゃんと考える。真剣に、仕事を選択する。」
風見さんが笑顔で手を広げた。おれも、笑顔で飛び込んだ。
「ありがとう!もやもやしてたの、無くなった!」
「良かった。これで心置きなく一緒に風呂に入れるな!」
もぉ、風見さんてば。
でも、本当にスッキリした。
そういえば、風見さんの悩みって何だったんだろう。
おれに出来るのは、支えることだけだ。
だから、今度は風見さんを甘やかしてあげることにした。
ギュッと抱きしめて「ご主人様、お礼にお背中お流し致しましょう」と答えた。
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