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271 小樽
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あっという間に、小樽駅に到着した。
電車を降りる時に気付いたが、乗降扉の横に開くボタンと閉じるボタンが付いている。
・・・これってはじめて見た。
お、押したい。
きょろきょろと視線を彷徨わせて、誰も手にかけていないことを確認した。
よし!
押そうと手に力を入れた途端、何故か自動で開いてしまって、開くボタンは押せないままホームに降りた。
・・・むー。残念。
風見さんは、おれのその様子を見て、笑っている。
ホームを降りると改札を出て、風見さんが着替えるためトイレへ行った。その間、おれは売店を覗いて待っていた。
程なくラフな格好に着替えた風見さんは、スーツケースと鞄をコインロッカーに預けてきており身軽になっていた。
「お待たせ、行こっか。」
普段は出来ない手繋ぎデート。
今日これからはずっと手を繋いでデートが出来る。
知り合いの居ない地で、おれたちはのびのびとデートを楽しむことにした。
------------※ ※ ※------------
「まずは海辺に行くよ?」
「うんっ!」
駅を出て、まっすぐに坂をくだっていく。
気持ちのいい風が吹きあげてきた。
「なんだか気持ちがいいねー。」
「そうだな、風景が横長だからかな。開放感があるね。」
そんな話をしながら歩いていくと、急に線路が現れた。
旧手宮線・・・いまは使われていない線路らしい。
ふたりでくっついて写真を撮った後、看板を読んだ。
「昔、石炭を運んでいたのか。・・・ね、確かブラックダイヤモンドって言っていた時代だよね。」
「だな。その頃は凄く賑わっていたらしいぞ。」
今は歴史の深い観光の街のイメージだ。
だけど、昔は
「小樽っていえば、ニシンだよね。」
「あぁ、そうだな。ニシンの水揚げが盛んだったらしいからな。」
「でもそんなに大量のニシン、どうやって運んでいたんだろ?昔は冷凍技術も今ほどなかったろうし。」
おれがそういうと、風見さんが手をぎゅっと握って笑った。
「食べるために採ってたわけじゃないんだよ。」
「魚を食べないの?」
「そう。肥料として加工していたらしい。」
鰊(にしん)という字は2つあるらしく、東で採れたから魚へんに東という字。
もうひとつは魚へんに非で、魚ではあらず。魚としては扱わないことから、鯡(にしん)という字もあるらしい。
小樽では大量に採れたニシンを加工して、高値で肥料として売っていたそうだ。綿花栽培や蜜柑(みかん)などの肥料として重宝されて、ニシン御殿がたくさんあったらしい。
「へぇ、知らなかった。」
風見さんの博識ぶりに、なんだか胸がときめく。
「あ、レンガが見えてきた。運河だね。」
テレビでよく見る運河だ。石造りの護岸がなんとも素敵だった。
でも・・・運河クルーズもいいけど、ゆっくりお散歩もしてみたい。
風見さんにそういうと、にっこり笑って推奨の散歩コースマップを取り出して見せてくれた。
「ジャンッ!小夜ならそう言うかなーと思って、観光協会のサイトから印刷してありまーす。」
「すご〜い!」
「だろ?俺たちはショッピングって感じでもないしね。どうせなら散策しながら、ゆっくり街を堪能しよう。」
「うんっ!」
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