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「さーや、何考えてた?」
窓辺に椅子を設置した風見さんの膝の上に、座っている。
お腹に手を回されている状態で、おれは背中を彼に預けた。
目の前には、札幌の中心部の夜景がキラキラと輝いている。
綺麗な夜景と、ガラスに映る風見さんの目を見た。
「ん・・・。」
「言いにくいこと?」
ふー・・・。
息をひとつついて、告白した。
「おれが女の子ならなって。」
「小夜が?」
寂しい気持ちで頷いた。
「うん。そしたら・・・。」
「違うよ。」
抱きかかえ直された。
しっかりと回った風見さんの手に、力が入ったのが分かった。
「何に対して不安になっているのかわからないけど、俺は小夜が女の子ならって思ったことなんてない。男って分かってて、口説いた。」
ガラス越しの目は、まっすぐにおれを突き刺した。
「パスケース拾ってもらったとき、小夜の事が天使にみえたんだ。この子しか俺にはいないって、思って。実際、そうだった。」
「暁さん・・・。」
目頭が熱くなった。
「確かに世界は俺たちに厳しいと思う。だけど、おれの一生は小夜に捧げた。小夜も俺に一生をくれた。世間からは認めてもらえなくても、互いがその事実を分かっていればいいんじゃないかな?」
どうしよう。
嬉しい・・・。
「だったら論は、考えなくていいよ。俺が必ず幸せにするから。」
夜景が歪んでくる。
嬉しくて、堪らなかった。
「・・・実は、来月から忙しくなるんだ。子会社の立ち上げのチームに参加することになった。」
真剣な表情に、おれも居住まいを正した。
「たぶん・・・、帰れないこともあると思う。でも、生涯に渡って小夜を守れるだけの力が得られるチャンスなんだ。だから、頑張ろうと、思ってる。」
こめかみに啄むようなキスが落とされた。
おれはもう、ぽろぽろと涙が止まらなくなっていた。
「暁さん・・・。」
震える声で名前を呼ぶと、優しく体を揺らされた。
「力を得るまで、きっと寂しい思いをさせるかもしれない。」
「うん。」
「ごめんね。」
「ううん。」
優しく抱きしめられた体が、そっと斜めにされた。
「小夜。男とか女とか、考えないで?そんなの気にならないくらい、愛してる。」
もう、言葉なんて出なかった。
風見さんの首に両手を回して、口付けした。
ごめんね、弱くて。
ごめんね、泣き虫で。
風見さんは、とっくに覚悟を決めていた。
風見さんの深い愛に溺れてしまいそうだった。
「きっと、すぐに。すぐに力を付けるから。だから、色々考えなくて大丈夫だから。ね?」
優しくて、深い愛。
風見さんは、ブレない。
一身におれを愛してくれている。
応えなければ。
風見さんの深い愛に応えれるだけの力をください。
「おれ、風見さんを、ささえたい。そして、風見さんのとなりに立って、恥ずかしくない人でありたい。」
「うん。」
「おれも、頑張る。もう、女の子ならって考えない。」
そういうと、風見さんはキュッと抱きしめてくれた。
風見さんの吐息が、首筋に当たって消えていく。
「小夜・・・ふたりで歩いていこうな。」
「うん。」
涙に濡れた頬を、風見さんが拭ってくれた。
「ちょっと間、寂しい想いをさせたらゴメン。」
「大丈夫、頑張れる。」
しっかりと頷いた小夜の目は、強い光が差していた。
「そのかわり一緒にいれるときは、ずっと一緒にいるから。」
「うん。」
「いっぱい俺にワガママも、おねだりもして欲しい。」
そう言って、小夜の体を軽く揺すった。
「・・・小夜はすぐに我慢したり、考えすぎたりする。今までどおり、何でも話して?忙しそうだから、また今度とか、そんなの禁止だからね?」
揺すられた小夜は、くすくすと笑った。
「うん。」
「本当に分かった?」
「うん。」
小夜は、絶対遠慮する。
泣きながら笑う小夜の表情を観察した。
「我慢した事が分かったら、ペナルティセックスしよう。」
「・・・え?」
「ペナルティは俺が考える。我慢の内容によってランクが変わるから気をつけてね。」
小夜の顔が引きつった。
真剣に受け止めたようだった。
俺は、すまして更に付け加えた。
「どんなに恥ずかしいことをさせられるか分からないよ?痛いこともあるかもね?」
ずっと前立腺だけ責めらるとか。
オモチャも使われるかもね?
囁くように告げると、小夜は身震いした。
「やだ、怖い・・・。」
可愛い反応に、にやけそうになる頬に力を入れて、風見はシレッと付け加えた。
「我慢しなければいいだけのことだよ。寂しいときは寂しいと言って?話したいことがあれば、絶対に話して。」
こくこくと頷く、小夜。
今度は身にしみて理解したはずた。
「大丈夫?」
「うん、我慢はしない。絶対にお話しする。」
「よろしい。」
しっかりと頷く小夜に安心した。
「風呂、入ろうか?」
「うん。」
お風呂に入る前に、小夜はトイレに入った。
小夜なりの準備があるのだろう。
トイレに入ったおれは、風見さんとの未来に思いを馳せた。
そして、改めて今回の旅行を楽しいものにしたいと思った。
これから忙しくなるのであれば、この旅行は思い出すたびに元気をくれるような思い出にしたい。
風見さんがキツイときに、心の支えになるような、幸せな思い出だ。
風見さんに何をしてあげようかと思案しながら、準備を終えたおれは、扉を開けて浴室で待つ彼のもとへと向かった。
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