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小夜は、求人情報が載っている冊子を駅で貰ってきた。
ベッドにごろんと寝転がりながら、ページをめくっていく。
自分のことなのに、いまいちしっくりこないのは何故なんだろう。
と、部屋のチャイムが鳴った。
「さっちゃーん、あっくーん、あそぼー!」
元気な声が響いた。
慌てて扉を開けると、美湖ちゃんを笑顔で迎え入れた。
「杉さん、すみません。もしお手すきなら30分程見ていて頂けないでしょうか?」
山崎さんが申し訳なさそうに頭を下げた。
「構いませんよ!大歓迎です。」
「よかった、助かります!この子、お手伝いしたい病に取り憑かれてて、包丁を握り出すんです。危ないから子ども包丁を買ってきます。」
「いってらっしゃい!気をつけて。」
お母さんとお話している間は、美湖ちゃんは大人しくおれの足に掴まっていた。
「ねぇねぇ、さっちゃん。」
「なぁに?」
額に掛かった前髪を払ってあげた。
「あっくんはいないのー?」
「あっくんは、おしごとでまだ帰ってきてないんだよ。」
「ふぅん。さっちゃん、おるすばんなの?」
ふふ、お留守番。
「そうだね、いまはおるすばんだね。」
「みこといっしょー!さみしい?」
寂しいか・・・。
「いまは、美湖ちゃんといっしょだから、さみしくないよ。」
「さっちゃん、おりこうさん!なでなでしてあげるー!」
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「・・・っていうことがあったんだ。」
「へぇ。美湖ちゃんがねぇ。」
夜遅く帰ってきた風見さんにご飯をよそいながら、美湖ちゃんとの会話を話していく。
「実際、俺たちの時代は共働き夫婦が多くなってきてた世代だから、家に帰ると1人ってあったし、それが普通だと思ってたけど、寂しかったのかなぁ?もう、忘れたなぁ。」
「うーん、構っては欲しかったかも。テストで良い点をとっても褒めてくれる両親がいないから、つまんなかった気がする。」
「最近、こども食堂とかって聞くけど、あぁいうのどうなんだろう?」
こども食堂か・・・。
「小夜、子ども好きだろ?子どもに特化した仕事する?」
こども食堂、学童、塾・・・。
子どもは好きだけど、塾で教えたいのかって言われたら答えはノーだ。
「まだ悩んでみる。」
「おぅ、悩め。」
そう言って笑った風見さんは、太陽のような力強さを持っていて安心した。
「小夜、メシ食ったら散歩にでないか?」
「散歩?」
「そ。月を見に行こう。満月なんだ。」
「嬉しい!忘れてたよ。」
月曜が中秋の名月だったらしいけど、あいにくの曇り空だった。満月の今日は晴れているかもしれない。
「行こう、その辺ぶらぶらして帰ってこよう。」
「うん!」
風見さんと夜デート。
ひと気のないところでなら、手を繋いで歩けるかな?
小夜は嬉しくて、ニッコリと微笑んだ。
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