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夏祭りの夜くらい。【Jside】
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じ「夏祭りとか、いつぶりだろ…」
ガザゴソとクローゼットを漁りつつ、そんなことを呟く。
数年開けてなかったせいか、ホコリを被っている衣服に咳込みながら、浴衣を探す。
5日前。一週間後に近くで花火大会の、夏祭りをやるとかで、テオくんに誘われた
人混みはあまり好きではないので断ろうとしたが。テオくんのあのキラキラした目……、
断ろうにも断れなかった。
じ「ケホ…あ。あった…。」
淡い水色の浴衣。
・・・いつ買ったんだ?これ。
別に嫌いな色ではないけど…
じ「てか、着れるよな…?」
そっと羽織ってみる。
うん。着れるわ…
ん…?着れ、る?
これ買ったの、去年とか一昨年じゃないよな?
てことは俺、全く成長してないの!?
う、ううぅん…っなんか嬉しくないなぁ…
ま、まぁいいや。明後日の夏祭り、どうせこれしか着れないし。
2日後_____。
シャッシャッと布の擦れる音……。夏らしさを感じさせられる。
なれない手付きで、浴衣を身に纏う
じ「んまぁ、着てなかったとは言え、俺、意外にも自分で浴衣着れるんだな」
鏡の前で浴衣と髪を整えてから、崩れないようにテオくんを待つ。
5時くらいに来るって言ってたから…もう少しかなぁ
ピーンポーン
チャイムが鳴った。
いつもと違い、動きにくい衣服に少しだけ戸惑いながら、玄関に向かう
テ「お、じんたんっ!」
じ「んー、おひさ〜」
テ「え。なんか、反応薄くね?w」
じ「動きにくいのよ。これ」
テ「え、着てくれたの!?」
じ「ま、まぁ」
テ「へぇー……ほぉ…はぁ〜」
なんでこんなにジロジロ見てくるの…?
き、キモいんだけど。
テ「思ってたより、物凄い似合ってるなぁ…」
じ「なに?褒めてんの?」
テ「褒めてる褒めてる」
じ「ふーん」
テ「あ。ねぇ、どう?俺の!」
じ「ん?あー浴衣?」
テ「そうっ!似合ってる?」
………いつもと違う感じで、まぁカッコいいんじゃないかな?うん。
じ「似合ってる似合ってる」
テ「棒読み感が半端ないのだが」
じ「カッコいいと思うよ」
テ「…まじ?まじで?」
あ。なーんか、うざくなりそう…
テ「うわぁ…どうしよ。じんたんにカッコいいって言われちゃったぁ〜」
じ「なに。俺だって別にそれくらい言うよ」
テ「俺、一生浴衣で居ようかな……」
じ「それは辞めといて?ガチめに」
テ「冗談冗談!w」
テオくんはたまに本気か冗談か分からないときがあるからな…怖いわぁ
テ「んじゃ、そろそろ行くか」
じ「ん。うん」
5時と言っても、まだ夏だ。
周りは明るく、テオくんの表情も確認できる
テ「じんたん?どした?」
じ「ひょわっ!!」
テ「何その悲鳴www」
じ「いや…っごめん。なんでも…」
テ「ほーん?あ。着いたよ」
じ「おぉ…ホントだ。まだ5時なのに結構人いるね」
テ「確かにねぇ〜ま、今は大丈夫かもだけど。じんたん離れないでね」
じ「多分ね〜」
テ「多分かぁ〜w」
じ「人混み嫌いだし…?」
テ「あ~そかそか。じゃあ、手、繋いどく?」
じ「・・・なんで!?」
テ「離れないため…?」
じ「さ、流石にキモくない?」
テ「ディズニーで繋いだじゃん。動画撮ったじゃん。」
じ「いやまぁあれは〜………、んん"っ、分かったよ…はい」
テ「ん。じゃ行こか」
じ「…うん」
思っていたより大きいお祭りに少し驚きつつ、テオくんに手を取られながら進む。
ドンットンッと誰かにぶつかりつつ、進んでく。
まだ少ないが、道が狭いため、仕方がない
てか、それ尚止まらずズイズイ進んでくテオくんが信じられんのだが。
テ「あ。じんたんちょっと待ってて」
じ「え?ちょ、テオくんどこ行く…っあぁ…なんか言っちゃったよぉ」
置いてくなよぉ…お祭りでの一人怖いのに…
何しに行ったわけ?なんか買ってくるとかなら俺も一緒に行ったのになぁ〜
テ「じんたんお待たせ〜」
じ「遅い……何しに行ってたの」
テ「ごめんごめんwこれこれ。じんたん好きっしょ?買ってきた」
じ「んおっ!りんご飴…っ!」
テ「一言言ってから買ってくればよかったな。ごめんw」
じ「んん"…っまぁ、このりんご飴に免じて許そうじゃないか」
テ「うわぁおやった」
俺がりんご飴好きなの覚えててくれたのか。
数年前にも、こんなことあった気がする…
テオくんに誘われたお祭りで俺がりんご飴好きって言ったら何も言わず買ってきてくれた
じ「ふふっ」
テ「ん?じんたんどした?」
じ「ぇあ。なんでもない」
テ「そー?あ!」
じ「なにっ!?」
テ「イカ焼き!見つけた!」
じ「な、なんだ…そんなことかぁびっくりさせんなよ……」
テ「ごめんごめん!wちょっと買ってくるわ!」
じ「分かった〜」
テ「買ってきた!」
じ「はやっ!」
テ「めちゃんこ空いてた」
じ「へ、へぇ」
美味しそうにイカ焼きを頬張るテオくんを横に、俺もりんご飴を口にしながら歩く。
まだ30分くらいしか経ってないのだが、人混みが出来てきた
辺りは明るいまま。さっきよりは薄暗くなったかも
テ「何しよっかー、食べてばっかじゃつまらんし…かと言って花火までまだ時間あるし」
じ「…じゃあ、あれやろ」
テ「んー?あ、射的?」
じ「そう。」
テ「おぉ〜いいねぇ!やろ!」
俺、結構射的上手いもんね〜
テオくんの技術は知らんけど、俺だってテオくんより秀でてるとこくらいあるもん
テ「2人分っ!」
『おお!んじゃあ千円ねぇ〜』
テ「ほいっ!」
『1人5発ね〜』
テ「だって!じんたん!」
じ「んー」
テ「俺、こう見えても射的上手いかんね〜」
じ「俺の方がテオくんより上手いし〜」
テ「えぇ〜?じんたん出来んのぉ〜?w」
じ「張り倒すぞ」
テ「ごめんてw」
じ「ふん、そんなに言うならテオくんからやって見せてよ」
テ「いーよぉ?」
カチャッと小さく音を立てて真剣な顔つきになる。
こんな、射的ごときにそんな真剣にならんくてもいいのに
パンッ
音を立てて発泡されたコルクの形をした球。
呆気なくテオくんの5発は終わった
結果、1個だけ取れてたけど…。
テ「どうっ!?上手いっしょ!」
じ「1個だけでしょ?俺、テオくん超えるわ」
テ「まじぃ?」
半信半疑、みたいな表情のテオくんを後目に、カチャッと構える
こんだけ言ってしまった以上、2個は取らないと後で辱めを受けることになる。
共感性羞恥の人だったら多分逃げ出すぞ?((
パンッ
気分のいい音を立てて発泡される。
5発終了。
じ「ね?」
テ「う、うわぁ…まじだぁ〜3つ取るとか…負けたわこりゃ」
じ「ふふっ案外、簡単だったね」
テ「うはぁ…負けたわぁ」
テオくんは俺に負けたことが心底悔しいのか、肩をガックシと落とした
イカ焼きを食べながら。
じ「喉乾いたぁ」
テ「んむ…なんか、買ってくるよ」
じ「俺も一緒に行く」
りんご飴を食べていたせいか、喉が猛烈に乾いている
少し汗ばんだテオくんの手をまた握り、テオくんに着いていく
テ「んぉ、ゼリーinジュースあるじゃん!」
じ「ほへぇ〜飲みたい」
テ「オレンジとグレープどっちがいい?」
じ「オレンジ」
テ「おけ。ちょっと待っててね」
じ「…うん」
タッタッタッと走り出した
ていうか、普通にうんって言っちゃったけど…俺、奢られてばっかだなぁ
ま、いっか!←
テ「買ってきたぞぉ!」
じ「相変わらず早いなぁw」
テ「結構早く回ってきたからさ!ほいっ」
じ「ありゃと」
テオくんからペットボトルのコップを貰い、ストロー部分に口をつける
チゥと吸うと、甘酸っぱいオレンジジュースと共に、ゴロゴロとしたゼリーが口いっぱいに広がった
テ「うっま…」
じ「美味し…」
2人でそう呟きながら、ぶらぶらと歩く
いつの間にか暗くなった夜空を見上げ、屋台の明かりを頼りに奥へ奥へと進んでく
途中で面白そうな屋台を見つけては寄り、見つけては寄り、なんてことを繰り返していると…。
パンッバンッバッーーンッ
という破裂音と共に、夜空に花が咲いた。
眩しいくらいの花火を見上げる
草木に囲まれた石段の上に座りながら、りんご飴を一口。
また買ったのだ。美味しいんだもん
パリッシャクッ
ほんのり甘いりんご飴。
バンッバッーーンッ
赤、青、黄色。色とりどりの花火が打ち上げられる。
何処からか、『最後の一発です!』という声が聞こえてきた
りんご飴を咀嚼し、クイッと上に首を上げる
テ「…じんたん」
じ「ん?」
ッパーーーン
最後の大きな花火が打ち上げられたと同時に、唇に柔らかいものが触れた
テ「好きだよ」
パラパラパラと堕ちる花火の花びらを背景に、少し紅く染まった頬のまま言ってくる
じ「……遅いなぁ…もう」
多分、俺も相当顔赤いと思う
じ「告白って、花火が上がるのと同時に言って、俺が『もう一回言って?』って聞き返すものじゃないの?」
テ「なんだよぉロマンチストめ」
じ「うっさい。やってみたかったのっ」
ばか、と小さく呟いたあとフンッとそっぽを向く
テ「えー俺初の告白だったんだけどぉ…失敗?」
後ろから腕で抱きしめられ、耳元で言われる
擽ったい…
じ「告白の仕方は失敗でしょ。てか、最初にキスするってばかじゃん」
テ「いや〜その方がいいかなって…」
じ「そういうのは、ちゃんとお付き合いしてから、でしょ」
テ「…俺、失恋?」
じ「断るとは…言ってないじゃん……、」
テ「え…まじ?まじで!?いいの!?」
じ「…まぁ、」
テ「うはぁ…まじか……泣いていい?」
じ「やめて?ガチで。大の大人がそんなことくらいで泣くか?普通w」
いつまでも馬鹿だなぁなんて、思いながらギュッと抱きついてやる
じ「大切にしてよね」
テ「っ!……約束する」
じ「んっ!それじゃあ帰ろ!」
花火が終わり帰宅する人たちの、カランコロンという下駄の音を耳にしながら。
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