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その手が僕の首筋をそっと撫でる
榊様の大きく潤んだ瞳を間近に見れば、ドキンと胸が高鳴った
そして引き寄せられると共に、榊様の瞳が薄く閉じる
……榊様
唇に熱が当てられる
そして割開いた唇の間から榊様の舌が差し込まれ、咥内を愛撫される
「……ぁ、んっ!」
舌が絡まり、吸い上げられ
再び体に熱が灯る
「結螺……愛してる」
「……お前、浮かれるのはいいが本気になるなよ」
遣り手である龍次が、釜戸近くで朝食をとる僕の背後からそう言い放つ
「……」
龍次は直ぐ意地悪な事を言う
これでも一応、年季明け前までは人気の花魁だったらしい……
振り返ってチラリと睨み上げるが何の効果もない
片方の口角をクッと上げ、僕に冷笑する龍次は、嫌味な位端整な顔立ちをしている
「……龍次に言われたくない」
不味い米に具のない薄い汁物をぶっかけると、さらさらと口の中に流し込む
そんな僕の頭を、ぽんと叩く
「可愛くねぇな……遣り手の小言くれぇ、素直に『はい』って言っとけ」
そう言い放つと、龍次は直ぐに去って行った
その姿を見届けながら、昨夜の出来事を思い返す
……あんな風に榊様に愛されたら
本気になるに、決まってるじゃないか……
口一杯の飯をもぐもぐしながら、頬が赤くなる
つい一ヶ月前
僕は人攫いに遭いこの遊郭に連れて来られた
太夫を抱える大見世の楼主達には、禿の年を過ぎてるからと見向きもされず、中見世の玉川屋の楼主に僕は引き取られた
この玉川屋で下っ端の僕には部屋など無く、遣り手の龍次による身体検査が終わると、直ぐに昼見世、夜見世と売りに出された
『経験もねぇ上に、感度の良すぎるお前の馴染みになるなんて物好きはいねぇ…
いいか、客を喜ばせての遊男に求めるものは、一時の夢だ』
身体検査の時に、龍次からそんな酷い事を言われたけど、夜見世に出て直ぐ、僕は榊様の目に止まった
榊様は床入り前にも関わらず、楼主に直接掛け合って僕を部屋付きに格上げしてくれた
そして僕が処女である事を一層喜び
他の男に触らせたくないからと、常に三日分の揚げの前払いと、他に囲い代と称した吹っ掛け金まで嫌がらずに払ってくれている
『お前だけでは寂しかろう…
私に似た金魚を連れて来て、お前の隣に泳がせよう』
背後から抱き締められて囁かれた言葉を思い出す
「………」
茶碗を片付けながら僕は
遊男が憧れるという『身請け』が、直ぐ傍まであると信じて疑わなかった
……しかし、その夜からぱたりと
榊様は来なくなった
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