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ぼくの初恋(ふじいゆきはる・10歳)
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3、違和感
三年の三学期、ぼくたちは保健の時間に『いのちの話』を聞いた。男子と女子、教室は別で。
前半はDVD鑑賞で「精子」が「卵子」に出会う映像とか、その一つに辿り着くことはとても奇跡的なことなんだ、といった内容。後半はこれからぼくらに起こる身体の変化について。
そこでぼくは初めて、赤ちゃんが生まれるには男の人と女の人が必要な事を知ったんだ。ぼくもそうやって生まれて来て、男の人はパパに、女の人はママになって家族ができる。今からぼくに起こるであろう身体の変化は、命を繋ぐために必要な、とっても大切なコトなんだ。
男の子は筋肉が増えて、声が変わって、いろんなところに毛が生えてくる、そう先生が言っていた。
みんないつか結婚して、自分の赤ちゃんが生まれるのかな。
あっくんも、大人になったら女の人と結婚しちゃうのかな。
ぼくは……
ぼくは、どこかおかしいのかな。
あっくんを好きな事……やっぱり間違っているのかな。
いつのまにか保健の時間は終わっていて、別教室にいた女子がぞろぞろと帰ってきた。男子も女子も、みんないつもより静かで、どことなくぎこちない空気が流れている。
ぼくはあっくんを見ない。
あっくんもぼくを見ない。
その日、ぼくらはどちらが言い出した訳でもなく一緒に帰らなかった。病気で休んだ日以外で初めての事で、ひとりの帰り道はすごく寂しかった。
それからすぐに春休みを迎え、ぼくとあっくんは一緒に過ごさないまま四年生になっていた。
四年生になるとあっくんは野球の少年チームに入り帰りが遅くなったため、ぼくたちが一緒に帰らなくなったことをおかしく言う人はいなかった。
野球を始めたあっくんは、先輩にも可愛がられて、目立つグループの友達が増えた。あっくんの周りにはいつも誰かしら集まっていて、ぼくは声をかけることすらできない。
あっくんと話せない一日は、とても長くてたいくつで、それでもぼくはあっくんのことが大好きで、毎日毎日あっくんを見つめて過ごす。
帰り道、ちらっと見えたあっくんのユニフォーム姿、すごくカッコよくて、誰よりも似合ってた。
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