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ぼくの初恋(ふじいゆきはる・10歳)
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4、勇気
四年生になって独りぼっちで過ごす事が増えても、ぼくは友達を作らなかった。
一人だって全然平気。もちろんあっくんと話せないのは淋しい。だけど、あっくん以外の友達なんていらない。そんな友達が何人増えたって、ぼくの淋しさは消えない。
それに……他の人と仲良くするところをあっくんに見られたくないんだ。だって、ぼくはあっくんが好きだから。あっくんにはそれをちゃんと知っててほしいから。誤解されたくない。
ほら、今だってあっくんがこっちを見てる。
あっくんもぼくを好き。知ってる。ぼくたちは、まだ、ちゃんと気持ちが通じ合ってる。だから……一人だって我慢できる。
「おーい!あきひろー!サッカーしねぇ?」
お昼休みに、隣のクラスの高井くんが教室に入ってきた。高井くんはあっくんの野球チームのメンバーで、今、あっくんと一番仲が良いのは彼だ。そんな彼を羨ましく思いながら、二人を横目でチラリと見た。
昼休みまであっくんと一緒に遊びたいのかなぁ。あ、高井くんと目が合っちゃった!
ぼくは慌てて目を逸らしたけど遅かった。
高井くんがこっちに向かって歩いてくる。二人を盗み見てるのがバレたぼくは、悪い事してたのが見つかったような気持ちになって下を向いた。ぼくの机の前まで来た高井くんは、しゃがみこんでぼくの顔を覗きこむ。
どうしよう……変なこと言われたら……あっくん、助けて。
「お前も来る?」
「へ?」
「サッカー、一緒にしねぇ?」
「ぼ、ぼく?!」
「お、ま、え!」
人懐っこい笑顔で高井くんが笑う。
ど、どうしよう……ぼくなんかが一緒にいいのかな。
今まで、あっくん以外にぼくを遊びに誘う人なんていなかったからびっくりしてしまった。それにこんな時、どう返事をしていいかわからない。
大勢の中で遊ぶの苦手だし、サッカーだって下手だからきっとみんなに迷惑かける……
でも。
もし、今、勇気を出して一緒に遊べたら、また前みたいに、普通にあっくんと話せるかもしれない。ぼくが勇気を出せたなら。
がんばれ。
いつもあっくんが声をかけてくれていたから。
今度はぼくから声をかけるよ。
『一緒に遊ぼう』
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