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まふそら〜あなたと過ごしたあの日々を。〜 3
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まふまふside
僕、何でここに居るんだろう。
そもそも、僕は誰なんだろう。
隣で眠っている人は誰なんだろう。
そして、あのとき、僕を呼んでくれたのは、この人なのだろうか。
分からないことが多すぎて、少し不安になる。
思い出そうとすると、頭に痛みが走り、顔をゆがめる。
「いっ…、た……」
寝ている人が居るので、極力声を抑える。
ふぅ、とため息をつき、することも無いので眠っている人を観察する。
ふわふわした髪。前髪は揃っていて、顔はかなり整っていると言っても過言ではないだろうか…。
肌は雪みたいに白くて、どこか儚げだ。
大切な何かが無くなってしまったら、消えてしまいそうなほど。
ふと、そんなこの人を、守りたい、と思った。この人の、大切な何かでありたいと、思った。
でも、考えている内に、少し笑えてしまった。
ここに居るということは、僕の知り合いであり、かなり親密な関係であったということ。
つまり、僕はこの人に既に守られ、助けられているということだ。
ふぅ、ともう一度ため息をつく。
「僕、あなたとどんな日々を過ごしてたのかな…」
ぼそり、とつぶやく。
この手で、彼に、触れられたなら。
この、儚げな彼を、この手で、守ることができたなら。
動かない手を見る。
自分が惨めに思えて、涙が出そうになった。
そのとき、音楽が小さく響いた。
何の音楽かは分からない。ただ、懐かしい響きだった。
彼の座るパイプ椅子の隣に置かれている、彼の物らしいかばんから、聞こえる。
「ん……」
小さく声を漏らし、ゆっくりと目を開ける。
「…!」
「…え、ま、ふ……??というか、俺、寝て……」
彼は自分の腕時計を見る。僕も目を凝らすと、時刻は午前5時過ぎだった。
「マジかぁ…後で謝らなきゃ……」
はぁ、とため息をつく彼。
「あ、の……」
「あっ、そうだ、まふ!!」
彼は叫んだ後で気付いたのか、ハッとして口を抑える。
まふ……?それが、僕の名前なんだろうか。
うーん、と考え込んでいると、彼はこてんと首を傾げ、僕に問う。
「どうしたの?」
少し可愛いと思ってしまったのは秘密にして、自分のことを話す。
「僕、記憶が無いんです……」
「……えっ!?」
彼は、またハッとして口を抑える。
「えーっと…どこから、分からない?」
「自分が、誰なのかすら、分からないです……」
「あーー……そっ、かぁ…」
彼は一瞬悲しそうな顔になったが、僕のことを色々教えてくれた。
『まふまふ』という名前で歌い手の活動をしていて、作詞作曲の活動もしているということ。
彼ーーー『そらる』さんも歌い手の活動をしていて、
僕と『After the Rain』という、ユニットを組んでいるということ。
そらるさんの家に行く途中で事故に合い、今に至るということ。
「そう、だったんですか…」
「そう。…ねぇ、まふ」
「はい?」
「俺が、まふの記憶、取り戻してみせるから。取り戻せたら…聞いてほしいことが、あるから。」
「…っはい!」
こうして、記憶を失った僕と、そらるさんの日々が始まった。
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