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理想と現実のギャップ,3
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パリに来て、二週間の月日が過ぎた。
ようやく、パリの生活に慣れてきた瑠衣。
なんとか、洗い物、果物の処理もそこそこ順調に進んでいる。
「パリに来た以上、製菓に携わりたいものだ」
瑠衣は駄目もとで、ディミトリに就業時間後、練習の許可を貰おうと切り出すことを決意。
しかし、運が悪いことに、ディミトリのご機嫌が斜め。
「教えてくれそうにないな。当分は、雑用をしっかりとこなすほかなさそうだ。なら、自分で材料を買って、自己練習するしかないだろう」
瑠衣は溜息を吐いた。
その日、ダヴィッドがサブレを任されていた。
オランデ(市松模様のクッキー。ココア生地と白い生地を組み合わせたもの)などを焼いている。
混ぜ具合、綿棒で伸ばす生地の厚さ、段取りなどを盗み見。
流石はダヴィッドと言わんばかりで、鋭利で冷徹な目つきで作業をこなしている。
当然のことなら、ロベールの容赦ない怒声が背後から飛んでくる。
「ルイ、手が留守のようだが?」
勉強の一環なんて、反論できやしない。
言葉も全然だ。学校で習いつつ、玲央からのフランス語の手ほどきを受けていたが。
ダヴィッドはサブレの後、タルト・ブルダルー(洋梨のタルト)を任されている。
逞しく陽に焼けた腕。肩幅はとても広い。
「ルイ、これ、大急ぎで洗ってくれ!」
油断している隙に、フランソワやリュカが使い終わった器具をシンクに放り込んできた。
これは、流石に瑠衣は焦る焦る。
さらに追い打ちかけるかのように、フランソワは
「ルル、シノワ(フランス語で中国を意味する。裏漉しの器具)とバッシンヌ(ボール)を取ってくれ!」
もう、何が何だか、解らない。
本当に、自分の置かれた状況を改めて理解しなければいけない。
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