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何のためって・・・?
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少しずつだが、瑠衣の雑用のペースも上がってきている。
「ダヴィッドは今日明日と休みだ。あいつの趣味は、美術館巡り・世界遺産巡り。趣味はよいが、少し堅物だな。今日は、アンヌ嬢とヴェルサイユでデートだろう」
リュカはショコラの傍ら、サブレを手掛けていた。
瑠衣は技術を盗みながら、雑用をこなす。
しかし、ロベールの怒声は容赦ないが。
「Ah bon」
(ふーん)
今日は、夕方前まで仕事だった。
「さて、早く部屋に戻ろうっと」
瑠衣が自分の部屋に向かおうとしたとき。
「ルイ」
「ダヴィッド?」
後ろから、ダヴィッドに声をかけられた。
アンヌと一緒じゃないのか?それとも、早くに別れていたのかな?
「ルイ?これから、どうする予定だ?」
「このまま、部屋に戻るけど?アンヌと一緒じゃなかったの?」
「・・・Hein・・・?」
ダヴィッドは間入れず、瑠衣の腕をつかむ。
「ちょっと!?」
「明日、休みだろう?なら、付き合え」
瑠衣はダヴィッドを振り払おうと、抗おうとした。
しかし、腕力一つで瑠衣をねじ伏せた。
振りほどこうとしても、逆に力は強くなる一方。
腕相撲したって、勝てっこない。
ダヴィッドは、瑠衣を裏通りまで引きずっていった。
ダヴィッドの部屋は、店の裏通りにある。
コンコルド広場周辺の物件は基本的に高いが、ダヴィッドの住んでいる部屋はとりわけ家賃が高い。
「同じ7階でも、僕の部屋とは月とスッポンだ」
驚くほど、ダヴィッドの部屋は広い。
と言っても、生活必需品程度。必要以上に物は置かない。
机には、職業系リセ時代のノート、クロッキー帳(ルセットのイラストを書き留めている)、アントン・カレームに関する本・・・。
サイドテーブルには、鍵をモチーフにしたネックレス。そして、ルイ16世の手掛けた錠のレプリカなど・・・とても高級感あふれる最高級の宝飾だ。創業者のジャン=ローラン・アングラード、フランソワ・ヴァルテールの肖像画も飾ってある。
「ルイ、何のために菓子を作っている?父親に言われて、フランスに来たんだろう?」
ダヴィッドは開口早々、瑠衣に投げかける。
「・・・何のためって・・・?」
「何となくでは、パティシエは務まるわけがない。目標意識がなければ駄目だ」
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