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「当然だろう?コレからも長いつき合いになるんだ」
慣れて貰わないと困るという発言をする雪白に今後もあるのかと、オレは溜め息をつく。確かに、雪白には相当憎まれているから、コレも立派な復讐だと思った。
だが、お前のすべてを奪ってやると鬼の形相で啖呵を切られたら、普通は殺されるんだと思うだろう。まさかこういう意味だったと誰も思わない。もう悲しさ余って、溜め息しかでてこない。大きく肩口を落として呆れるのは、腑に落ちない点がいくつもあるからだろう。
「あのな、オレの初めては奪ったんだ。もうイイだろう?」
他のを奪ってくれと背中を向けたまま一向に振り返りもしないオレの姿をみ、雪白はなにかいいたそうだったが、息をつくと大きくベッドを軋ませベッドから降りた。昔からなにを考えているのかまったく解らない。オレが3年前に引き起こした障害事件で亡くなった雪白の実兄こと、高解明(コウ ヒロアキ)の方がまだ心が読めて解りやすかったからだ。
ベッドから降りた雪白は床に撒き散ったシャツやズボンを拾って、シャワーを浴びに浴室に入っていった。オレの部屋に備えられたソレは大きくも小さくもないが、その他にも冷蔵庫や個室トイレがあり、TVにオーディオもある。刑期を終え、少年院から釈放されたオレの身としてはまったく贅沢な部屋だ。
そう、オレは障害事件を起こし、少年院に送られた前科と前歴がある人間だ。オレはある理由で施設に預けられ、ちゃんとした親権者がおらず、オレの保護観察官であるエドこと、エドウィン・ハイレッツ・オルティマの屋敷で厄介になっている。そして、今はエドがオレの身元引受人で後見人でもあった。
そんなエドは前科モノのオレを引き取るお人好しと思われるが、いま我がモノ顔でシャワーを浴びている雪白よりも酷い。肉体的というよりも精神的にだ。あんなに立派に成人したオッサン外人がショタだとは思わないだろう。
エドの祖国が同性婚を掲げているからといっても、オレにソレを共有して欲しくないし、そんなオレに求愛して欲しくもない。エドの秘書であるジンこと、雪原ジン(ユキハラ ジン)がいなければいま頃はオレはエドに処女とファーストキスを奪われ、彼の花嫁になっていたかもしれないのだ。
ジン、ありがとうと感謝しつつ、汚れたシーツを手繰り寄せ、オレは床に転がっているだろう上掛け代わりにする。長風呂である雪白が浴室からでてくるまでまだまだ時間がある。風邪を引いても雪白が喜ぶだけだから、冷えた身体を少しでも温めたい。だが、ココまで動くのが億劫になると、明日は学校をサボろうという選択肢が浮上する。
前科のあるオレをなんの抵抗もなく入学させてくれた寛大な学校に悪いとは思うが、こう酷く抱かれた次の日はどうしても休みたくなるモノだ。椅子には長時間座れないだろうし、セックスをした後遺症で身体に微熱をもたらすだろうから。そして、腹の中にブチ込まれたモノをこのまま放置するなら、腹を下すことは間違いないだろう。
よし、コレはもう休もう。そうと決めたら、体内の精液のこともいまだ浴室からでてこようとしない雪白のこともどうでもよくなり、オレは颯爽と眠ってしまった。
朝、目を覚まして不思議に思ったことは、裸だった身体に綺麗なシャツとパンツが纏っていたことだった。もっというなら、後処理をきちんとされ、身体が綺麗になっていたことや汚れたシーツが新しくなっていたこと。上掛けが肩までかけられ、切れて腫れ上がっていたところには軟膏がソレはもう丁寧に塗り込められていたことだろう。
寝起きのぼーっとした頭だがあの雪白がするハズがないことは解っている。だったら、誰?と首を傾げていたら、ドアのノックされる。そして、1週間振りにみるジンが朝食を持って入ってきた。オレはなんで?と一気に目が覚め、目蓋を瞬かせる。
何故なら、エドは保護観察官という職務の前に資産家である。そう、資産運用でたまにジンを連れて屋敷を空けることがあるのだ。
「おはようございます、真弥さま」
片手でドアを閉め、呆けているオレに挨拶を促すジンは、黒い髪と黒い瞳で日系人を思わすのだが、高い鼻やしゃくれた顎は西洋人を思わす造りで、鋭い双眸と褐色の裸は東南アジア人を思わす造りをしている。そんな美男子の顔がまったく笑ってなかったら、ソレはもう怖い。
キリッとした眉に薄い唇は、秘書というよりもボディーガードである。カジュアルなスーツを着ていなかったら、間違いなくそう思う。
「お・は・よ・うございます、真弥さ・ま」
いつまで経ってもなにも返してこないオレにもう1度挨拶をするジンは、相当怒っているようだった。棒読みに近い敬語を使い、オレのことを『さま』づけするのだから。オレはソレでハッと我に返り、ベッドの上で座すと額を擦るくらい深く土下座する。
「ゴメン、ジン」
許してと、あの惨状を綺麗に片づけてくれたことに深く感謝し、同時に罪の意識で深く謝罪する。そしたら、ジンは溜め息を漏らすと「貸しだ」と短く応じた。もう少しねちねちと叱られるだろうと思っていたオレは、ソレだけ?と拍子抜けをした顔でそっと頭を上げた。
「なんだ?もっと怒られたかったのか?」
いまからでも叱ってやろうか?というニタつくジンの顔をみ、いやいやと首を振るオレはジンが持ってきた朝食が乗ったトレーを素早く受け取る。食欲はない。ないが、あの最悪な状態から目覚めるのと、いまの状態を考えても天と地くらい差があるのだ。コレで、わざわざ朝食を運んできたジンに要らないとはいえない。ソレに、オレの体調を考え、消化にいい粥を持ってこられたら尚更、拒否権はゼロだ。
オレは木製の匙で掬って、1口食べて驚く。口の中に広がった磯の香りで、コレがアワビ粥だと解ったから。紅い瞳を大きく広げ、ジンをみると大きな手で髪をかき廻された。
「寂しいのは解るが、もっと節度を考えろ」
ジンのいっている意味は解らないが、心配してくれたことに感謝して頷く。オレの好物のアワビをチョイスしたことにも感謝し、残りはニコニコ笑顔で食した。
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