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ルピナス
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僕は独りになってしまった。
僕の家は父親が居ない。写真でしか見たことがない。母に父親について聞くのはどうかと思い聞いたことがないが、写真ではいつも笑っていて、優しそうな人だ。そんなこんなで母と2人で生きて来た。
だが、そんな母も今日天国に旅立った。
死因は乳がんだった。気付いた時にはもう遅く脳に転移していた。僕は日に日に衰える母を隣で見ていることしか出来なかった…母が最後に頼んだ事は
「お葬式のお華は菊の花じゃなくてルピナスの花がいいわ。」
気付けば母の棺桶が眼の前にあり、幸せそうに眠る母の顔横にルピナスの花を一輪添えた。母の葬式はせず、直ぐに母は小さな骨壷に収まってしまった。そんな小さな骨壷を見てると自分の母親はこんなにも儚く小さいものだったのかと気付いた。けれども、涙は出なかった。
本当ならば僕は親戚の家行ったりするのだろうが、母は父と結婚する為に親の反対を押し切って家を出たのだから、縁は切った様なものだった。だから、親戚もおらず母の残したお金で学生寮に入った。
こうして僕は独りになった。
ルピナスの花言葉
「いつも幸せ」
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