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廊下に出る。
出てからすぐ、保健室が程近い所に水道がある事を思い出した。
タオルもハンカチも持ち合わせてはいないが、兎に角早く顔を洗いたかった。自分のものとはいえ、さっきまで胃の中にあった内臓液が、顔中に塗れていては堪らない……
「……臭ぇ」
つい、口をついて出てしまう。考えてみれば、前原のザーメンも混じってたんだっけ……
「クソ……」
授業中の廊下はしんと静まり返り、僕の足音だけがひたひたと静かに響く。
蛇口を捻り、じょぼじょぼとしか出ない水で両手を洗う。……冷てぇ。冷たすぎて指が千切れそうだ。
備え付けのシャボネットで泡立て洗い流せば、掌の悪臭は幾らかマシにはなる。が……今度はシャボネットの化学的な臭いがかなりキツく、吐きそうになる。
「………」
その両手のひらで零れないよう、水を受け止める。そして汚物塗れの顔を洗えば、ぬちゃり…とした感触。それと共にシャボネットの悪臭に塗れ鼻が曲がりそうになる。
「よ、姫!」
声と共にお尻を軽く叩かれる。
僕を『姫』と呼ぶ奴は、記憶を辿っても一人しか思い浮かばない……同じクラスの、三浦湊。
……つーか、痛ぇって。マジで。
「使えよ」
簡単に手で拭い顔を上げると、眼前に四つ折りにされたハンドタオルが差し出される。
……どういうつもりだ……
顎先からぽたぽたと雫が垂れる。それをお構いなしに、正面から湊をじっと見据えた。
……湊は、慶太の親友だ。だけどこいつは……
「いいから、これで拭けよ」
「……」
湊は、柔やかな笑顔をして見せる。
「ほら」
胸の前に突き付けられた、ハンドタオル。それを受け取らずに湊を見据え続ければ、そっと頬に当てられる。そして顎先に向かって撫でるように、滴る雫を拭われた。
「さっき、腰宮が出てきた所を見掛けたんだけどさ……」
ハンドタオルから顔を離し拒否の意思を示す僕に、湊がニヤつきながらハンドタオルを引っ込めた。
「俺にもさせてよ」
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