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靄
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雅弘side
ここ何ヶ月か帰宅すれば暗かったはずの部屋は明るく、可愛らしい愛しい人が迎えてくれる。佳那は雅弘に「おかえりなさい」と言うと、スーツのジャケットをハンガーにかけた。
夕飯のいい匂いがして、雅弘は空腹感に襲われた。
佳那「もうすぐ、夕飯ができます。」
涼平「おじゃましてます!!」
佳那の後ろから顔を出したのは、佳那のクラスメイトである涼平である。雅弘は挨拶をすると、荷物を自分の部屋へと片付けに行く。
薄い壁のためか、佳那と涼平の楽しそうな会話が聞こえる。リビングへ行けば、キッチンで2人が並んで料理をしている。
涼平「佳那〜、これどうすればいい?」
佳那「塩を適当に」
涼平「適当が分からない…」
佳那「ほら、こうして…ぱらぱらーって」
なんだろうか。このもやもやした感覚は。雅弘はこの気持ちを消すように、頭を振った。見てるだけでは駄目だ。雅弘は布巾を濡らし、テーブルを拭き、箸やコップを並べる。
佳那「ありがとうございます」
雅弘「いや、こちらこそありがとう。明日は俺も手伝うから」
テーブルに料理が並ぶと、3人は席につく。佳那の隣に涼平は座り、美味しそうに料理を食べる。
───────…
涼平「佳那、頬に付いてる」
佳那「どこ?」
アップルパイのソースが佳那の左頬についている。佳那は「ん……どこ?」と頬に付いたソースを取ろうとするが取れないため、涼平が指先でソースを取ると佳那の口にチュプンと指を入れた。思わず佳那は涼平の指を舐めてしまう。
佳那「いっ…いつも言ってるけど、普通に取ってよ!!」
涼平「ごめん、癖で…」
佳那は赤面して、頬を膨らませた。この流れを見ていた雅弘は、目を逸らした。
2人の距離が近い。そこにいるはずだった自分の場所。それがいつしか無くなっている。
佳那の無邪気な笑顔を見たのはいつだろうか。佳那の可愛い笑顔を向けるのは自分ではなく隣に座っている涼平であった。
──────────────
栗山 雅弘(くりやま まさひろ) 24歳。男。佳那を引き取った。佳那の姉の自殺の原因が雅弘らのいじめによるものだった。
佐武 佳那(さたけ かな) 親はいなく、唯一育ててくれた姉を中学2年で失う。お姉ちゃん大好き。
竹内 涼平(たけうち りょうへい) 佳那の同級生
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