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でっデート3
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気づけば頬の温度が変わっていた。こんな人混みが多いところで泣くなんて恥ずかしい。
一度溢れ出した想いは、溢れて溢れて受け止めきれなかった。
雅弘「佳那くん、座ろうか」
佳那はソファに座ると、顔を手で覆った。本当に本当に気持ちがバレてしまった。
気持ち悪いって思われた。
捨てられる。
ここから逃げたい。
雅弘「佳那くん……俺は」
佳那「嫌です……聞きたくないです」
聞きたくない聞きたくない。
雅弘にとってのお出かけは佳那にとってはデートだった。雅弘にとって佳那は特別な存在だと。そう思い込んでた。
────僕だけ。僕だけだと思ってた。
唇が震える。
雅弘「佳那くん、俺の話しを…佳那くん」
佳那は立ち上がると、雅弘の顔を見ずに背を向けた。足が動く。雅弘との距離が遠く離れていく。
気づけば自分は逃げていて、迷子となった。
高校三年生。来年には大学生になるというのに。
涙を流しながら歩く。すれ違う人からの視線が刺さって。痛い。胸が痛い。
暗く誰も通らない場所にしゃがみ込んで、顔を膝に付けて腕で隠した。
泣いていると、だんだん孤独が心を侵食していく。
捨てないで。
姉が帰ってこなかったあの日を思い出す。
いつも通り姉が帰ってくる時間に合わせて米を炊飯器にセットし家を出た。
友人と笑い走りながら通学路を通る。
毎日が同じように繰り返されると思った。その日常が当たり前だと思って。
当たり前がどれほど大切で。
当たり前を失った時に大切だと気づくのにはもう遅かった。
病院に行けば姉は目を瞑っていて、呼んでも起きなかった。
─────独りになった僕。
そんな僕を顔も知らない人が育ててくれた。
心にできた冷たい氷があの人の優しさという体温でゆっくりと溶けていく。
ぽかぽかした温かいが心地よくて。雅弘さんの笑顔を見るともっとぽかぽかした。
涙はその幸せを流して。
足を動かす気持ちも無くて。
いつまでここにいるんだろう。いっそのこと死んで姉の所へ行ってしまおうか。
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