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───────…
どこにもいない。
あの時、佳那の手を掴んでいればよかった。
スマホから電話をかけるが反応が無く。不安で押しつぶされそうになる。
「すみません、このくらいの少し髪の長い男の子見かけませんでしたか?」通行人に聞いて回れば、首を横に振られる。
迷子センターへ行って佳那を呼ぶこともできるが、佳那は来てくれないだろう。
独りになるのを怖がるあの子。独りは寒いから。
そう寝言で涙を流していた。
佳那の隣にいると。あの子の隣に大切な誰かができるまで。そう決めたではないか。
薄暗い場所を見つけると足元を確認しながら奥へと進む。
雅弘「………佳那くん」
佳那は床に膝をかかえて座っていた。顔は暗くてよく見えない。雅弘は佳那の前にしゃがみこんだ。
雅弘「心配したんだよ?」
そう冷たく言いたかったんじゃない。
佳那「……ごめんなさい」
謝らせたいのではない。
雅弘「無事でよかった……」
佳那を見つけられたことに安心する。その一方でどう話せばいいか不安な部分がある。
佳那「迷惑…でしたよね………気持ち悪いですよね…僕、ずっと……………でも、もう大丈夫です………ここまで育ててくれて……ありがとうございました………ぼく……お姉ちゃんに会いに行きます…」
雅弘「えっ?」
立ち上がろうとする佳那の肩を雅弘は掴みそれを阻止した。
佳那が自殺をするような言い方をして、雅弘は焦る。また自分は人を殺すのか?
この子だけはこの子だけは…
口では言えない言葉。
降り注ぐ刃(罪)が体中に突き刺さり、重くて重くて逃げることができない。息をするだけで大変で、手を伸ばして助けを求めたい。助けてほしいなんて、そんな楽をしたい自分が汚れている。
一人で抱え込むには大きすぎた現実。
暗いから、佳那には自分の顔は見えないだろう。だから、今だけは泣いていいだろうか。
傍にいて欲しい。そう思った時にはすでに佳那を抱きしめていた。
強く強く。いかないでほしいと。
好きなんだ。
愛しているんだ。
佳那「……あいしてる?」
────心の声が漏れていたらしい。
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