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好きって言って
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* * *
机の上には教科書とノートそしてペンケース。暖房が温かすぎて、眠くなりそうだ。
こくこくと船を漕ぐと、前の席に座っている友達が後ろを向く。
「ガムいる?」
その声に佳那は目を覚ました。頷くとペーパーのようなガムを引き抜こうとする。すると、パチンと音をたてて鉄のようなモノが佳那の指を叩いた。どうやらこのガムは引き抜いた人の指を挟む仕掛けがあるらしい。
佳那「ひっひどい…」
「寝てるヤツが悪い」
佳那「くそぉ…」
意地悪く笑う男に、仕返しをしてやると思う佳那。ぷくーっと頬を膨らませると、前の席の友人を視界に入れたくなくてフンと窓の方を見た。
雲ひとつ無い青空。引き込まれそうだ。
雅弘と幸せに暮らす夢を見た。その夢では雅弘が佳那にずっと好きだと言ってくれる。
きっと願望だったのだと思う。
雅弘から「愛してる」と言われたあの日から、「好き」だと言われない。好きと言ってくれてもいいのに。と、思う自分も恥ずかしくて「好き」と言えない。
佳那「はぁ…」
先生「佐武!!ため息するほど、俺の授業はつまらないか?」
佳那「いっ、いえ…」
先生「では、次の文を読め」
次の文ってどこだよ…
どこを読めばいいか分からないのを知っていて、わざと言う先生。
少しざわざわとしている教室にページを捲る音が混ざる。
困っている佳那を助ける「P56の3行目」と言う小さな声が聞こえた。隣の席に座る女の子が親切にも教えてくれたのだ。
佳那「ありがとう」
小さい声でそう伝える。
椅子が床を擦る音が響いた。佳那は立ち上がり、先生に言われた通り文を読んだ。
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