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変化する俺たち〜修二〜
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金色のキラキラした蜂蜜は、大体が多くの同じ花の蜜を集めたもの、色の薄いのは食べやすく甘く、色の濃いのは特徴的で栄養がある。
長い間置かれた蜜は白く結晶化して固まってしまうが、温めればまた美味しく食べることができ、その現象が起こるなら、純粋な蜂蜜の証。
たしか…そんなことを言ったテレビを見た気がした。
「おはよー」「おっす!」
挨拶の声がそこかしこで聞こえる朝の登校時間、僕ちゃんは1人ふらつきながら下駄箱にたどり着く。昨日は2人に、特に華南に腰が抜けるまでヤられてもうボロボロ。まだなんか入ってるみたい…
甘く痺れる腰にため息をつきながら下駄箱から上履きを取り出し、靴をしまう。
2.3歩足を出して思い出したのでむつの下駄箱を開けた、矢張り、今日もピンクのラブレターが入っていた。僕ちゃんはその手紙を鞄にしまい、教室に向かって歩き出すと、後ろで殺気立った気配を感じて振り返る。
するとそこには一人の男子生徒が恨みがましく眉を寄せて立っていた。
修二「僕ちゃんに何か用?」
すると男子生徒は右手を出して広げ、不快感丸出しで言った。
男子「返してください」
茶色いフワフワの髪の毛に、幼さのある顔立ち、身長は修二より低い。でもそこそこ体格のいい彼は、多分運動部だろう、スポーツ少年っぽく肌が焼け小麦色をしている。
修二は鞄からラブレターを半分見せ。
修二「コレ、君の?」
男子「そうです、貴方に出したものではないので返してください」
初対面なのに嫌悪感丸出し。迷った修二はこちらを睨み気味の彼の伸びきった手の届かないところで手紙を見せる
意地悪をされたと思った彼は、ギロっと力いっぱい修二を睨みつけた。
修二「今日、むつ休みなんだ、だから帰りに届けようと思って僕ちゃんが預かった。それとさ、悪いんだけどー、君がこの手紙を書いた証拠はある?」
表にも裏にも差出人の名は無い。
男子生徒は僕ちゃんの言葉に眉間にシワを寄せた。
男子「なんなんですかそれ?不愉快です返してください」
修二「コレが君の書いた物で、悪用しない証拠がないと返せないな」
意味が分からないと言った様子の彼に修二は続けた。
修二「これラブレターだからさ、君が書いた人じゃなきゃ渡せないってこと、なので僕ちゃんが預かりまーす」
男子「え?あっ!待って!待ってください!」
意味を理解したらしい彼から嫌悪感が消え、慌て鞄を漁り、一冊のノートを取り出して広げた。そこには、ラブレターの宛名の字と同じ、達筆で綺麗で特徴的な字がノートいっぱいに広がっていた。
雷太「雷太(らいた)です。一年の雷太って言います、俺が書きました、返してください」
修二「…うん、分かった。どうぞ」
実は僕ちゃん、手紙の主の名前を知っている。むつにラブレターが来た時、むつに見せられた、初回のラブレターにだけ名前が書いてあり、それが雷太だ。
雷太「…すいません、嫌な言い方しました」
修二「いいよ、じゃあね」
雷太「…あの」
修二「何?」
雷太「柴田先輩は?」
修二「ああ、風邪引いた、だから休みだよ」
雷太「…あの」
修二「ん?」
雷太「俺、負けませんから」
強い眼差しで見つめられて、少し驚いた。その瞳は少し複雑に、でも強い意志で僕を見据えている。
むつの事が本気で好きだ、と言ってる。
彼の真剣さが、どんな風にむつに焦がれているか想像がつく。
僕らが、見合っていると、不意に後ろから肩を叩かれた。
吉良「おい、目立ってるぞ」
振り返ると「なにやってんだ」と呆れ顔の吉良さんが居て、遠巻きに他の生徒がこちらを見ているのが目に入った。
それもそのはずだ、学校じゃ有名な悪い先輩に、フワフワ可愛い顔の一年が険悪ムードだったりしたら、周りはハラハラものだろう。
吉良の登場に驚いた雷太は真っ赤になって、サッと手紙を隠し、ペコリとお辞儀してスッゴイスピードで去って行った。
修二「おはようございます吉良さん」
吉良「何々、あいつがむつにつきまとってる奴?」
修二「関係ないですよ、彼のこと軽く睨んだでしょ?可哀想に」
吉良「おいおい、関係ないとはご挨拶だな、俺と昨日話したの忘れた?」
昨日の2時間目直前。
移動教室に向かおうと廊下を歩き出したら、むつが吉良さんと教室に帰ってきた時のことだ。
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朝一緒に登校した時不機嫌だったのにすっかり上機嫌のむつを不思議に思った。むつが教科書を取りに教室に入ると、吉良さんが意味深に笑った。
吉良「ふふ、ねぇ、何があったか知らないけど、本気になれないなら俺に譲って」
細い目がさらに細められて作り物みたいに綺麗に笑う。
ああ、やっぱ吉良さんにはバレたのか、そりゃそうか、この人は1年の時からむつに気があった。
吉良「お前にむつは勿体無いな」
修二「僕ちゃんもそう思います」
吉良「ふふ、俺さ、お前のそういう所が好きじゃない」
修二「知ってます」
吉良「…むつ、可哀想に…」
2人して笑ってのやり取り。
吉良さんはこう言ってるが、嫌われてると思ったことは一度もない、吉良さんはむつと違った風に正直な人だ。だから僕は吉良さんのことは普通に好きだし、尊敬する部分もある
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アレは僕ちゃんと“付き合うことになって可哀想”って言ったのかと思ってたけど、そうじゃなくて、僕ちゃんの“覚悟の無さ”が、むつにとって可哀想って意味だったんだ。
むつは吉良さんに最近何かを相談してて、ホテルのタダ券を貰った。僕ちゃんと…話すために。吉良さんは僕の後ろ暗いのを気づいてたんだ。
むつ『修二が好き』
ズクンと体が疼いて昨日の甘い記憶が蘇る、修二は無意識に自身の体を握りしめた。
吉良「その顔、昨日はヤリまくり?」
修二「ッ…吉良さんここ廊下」
吉良「ああ、その反応なら少しは好きになれそう」
ついつい甘い記憶に気を取られてチャラけてかわし損なった。近くに他の生徒が寄り付かないからと言って、堂々とそんなことを口にされ修二は青くなった。
吉良「流石むつ、渡したその日に使ったんだ、まぁ、これで少しはご機嫌になるかな?」
むつを譲れと宣戦布告した人間が、僕らの中を取り持つなんて真逆の行動、吉良さんの考えは本当に分からない…
吉良「おーおー、混乱中か?言っとくけど、俺はお前らが別れればいいと思ってるよ。でも、今のむつ最高に可愛いからなぁ、でぇ、裏工作しないで正面から株上げ中」
修二「…本気…ですか?」
吉良「お前よりはね」
吉良さんの黒い瞳が僕を真剣に見据えていて、パッといつもみたいに目を細めて笑った。
吉良「なんてね」
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