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めんどくさい俺たち〜修二〜
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ータタタタタ
階段を、慌てた足音が駆け下りる。
ーズダダッ!!
足を滑らせて2・3段落ちたが、細めの手が手すりを掴み難を逃れた。
残りの階段を注意して足早に上履きで踏みながら下りる。
ータッタッ…キュッ
その足音は一つ下の階で曲り、走るのをやめたのか、わずかに、床と上履きの当たる音がするが、それも直ぐに止んだ。
ーガラガラ
無人の理科室の扉が開いて、足音は中に入りこむ。
ーガラガラ、パタン。
ーカチャン
閉めた扉に、細めのスラッと綺麗な指が、震えながら鍵を掛けた。
足音は扉から離れて真っ直ぐ進み。理科室の窓の前で止まると、スラッとした指がパチンと弾いて窓の鍵を外して全開にした。
フワリと、少し湿った空気が頬を撫で、その空気を深く吸い込み、空を眺めたまま震える息を吐いた。
遠くに黒い雲が立ちこめている。
方角からして、間もなくこちらに流れてくるだろう、幸い、今日は風は緩やか、直ぐに到達しないだろう。
廊下から、別の慌てた足音がして理科室の前を通り過ぎ、屋上に繋がる隣の階段を登って行く。
その音で廊下のある方を振り返り。視線はその足音を置いながら、綺麗な指は、少しぶかっとしたイエローカーディガンの胸元を強く握り締め、ギリギリと爪を立てて震えた。
ーくしゃっ
紙の潰れる音に気がついて、ワイシャツの胸ポケットに指を伸ばす。
そこには、今朝、人から没収した煙草が入っていた。
中を見ると3本入った煙草の内、2本が潰れていた。
ふっと顔を上げ、教卓が目に留まる。
足音はその教卓に向かい、前まで来て止まった。スラッした指を引き出しに掛けて引く。
ーカラカラ
引き出しを開けると、整理されてない物の中にお目当てのものを見つけ、手に握りしめ、ゆっくり引き出しを閉めた。
手の中のそれを持って、開け放たれた窓に戻り、窓を背にしてペタンと座る、体育座りの足を左右に開いた状態にして、腕を膝に乗せ、無事だった煙草に拝借したマッチで火をつけようとした。
ーシュッ
ーシュッ
いつから教卓にあったのかわからないマッチは、擦れる音がするだけで着かない。
ーシュッ
ーパキッ
使い慣れないせいか、それとも指が震えてるせいか、力の加減に失敗して折れてしまい、それを床へ投げ捨てた。
次の一本を出してすってみる。
落ち着いて、角度をしっかりして、勢い良く。
ーシュパッ
ついた火が消えないように手で囲み、煙草に近づけてふかすと、すぐに火が燃え移り、手を振ってマッチを消した。
右手を、咥えた煙草に添えて、煙を深く吸い込むと、1度も吸ったことのないメンソールで、うまく吸いきれずに咳き込んだ。
「グッ!、ゴホッ!、ゴホッ」
ーピリリリリ♪ピリリリリ♪
カーディガンのポケットの携帯が鳴って、表示も見ずに直ぐに取って耳に当てる。
胸を締め付ける愛しい声と。
大好きな低音ボイス。
2人の声が聞こえてきた。
むつ『あー、修二ゴメン。今から教室に行くから』
華南『修二、もう大丈夫だぜ』
修二「ああ、分かった」
華南『教室で待ってろよ』
ーピッ
切った携帯を握りしめて、吸いなれないメンソールを口に咥えて天を仰ぐ。
スッ…、フゥーーー。
上手く吸い込んだ煙を、天井に向かって吹き出し、灰色の煙が天にのぼってふわっと浮遊して広がり。
ゆっくり消えていく。
それを見ていた揺れる瞳の瞼が2度瞬いて
硬く閉じた。
…
瞼をゆっくりと開き、決意した指先が、握りしめていた携帯を操作して、メールを一通送信した。
ゆっくり体を起こしふらりと立ち上がる。
数歩歩いて、近くの蛇口を捻って一度しかまともに吸わなかった煙草の火を消して、ゴミ箱へ捨てた。
足音は窓辺に戻り、スラッとした指が窓にしっかり鍵をかけて、踵を返し、廊下に戻る時に、床に放ったマッチを拾い上げて、それもゴミ箱へ捨てる。
足音は再び廊下に面した扉へ向かい扉の前で一度止まる。
心の中でお決まりの言葉を繰り返し、指先で口角を押し上げる。
そして指が扉に触れ、鍵を開けた。
ーカシャン
ーガラガラ
足音は静かに出て行き
ーガラガラ、
ーパタン………
そっと、閉ざされた。
ータタタタタタタタ
足音は、来た時と違う音を響かせ、足早に階段に向かってそのまま駆け上がって行った。
シーンと静まり返った理科室に
苦い…香りだけ残して…
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