アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
俺たちに射す斜陽〜修二ー
-
浮いた体に驚いて、華南の服に慌ててしがみついてる間に、公園内に連れ込まれた。木の影で降ろされたと思ったら、そのまま背中を木に押し付けられて唇を奪われた。
修二「ん!んふッ…んん…ンゥ…んはぁ」
早急なキスはどこか苛立っていて、汗と高い体温に混じって華南の匂いが一層濃く修二を包む。
恐怖を感じた後の幸福感に酔いそうで、ぐらつく意識を叱咤する。
笑わなきゃ、笑って、何でも無いって言わなきゃ…、
言わなきゃいけないのに、華南の唇が、体温と匂いが、それを阻んで麻痺させる。
強引な舌が離れて糸を引き、華南が唇を解放してくれた。
華南「何が用事だ!」
修二「あ…えっと…あの…」
華南「何された!」
修二「な…にも…」
華南の勢いに押されて答えたものの、修二は自分がうまく喋れて無いことにも気づかず、嘘をつむいだ瞬間。華南に軽くゴチンとおでこを当てられ、ぎゅうううっと、修二の両手を握って至近距離で睨んできた。
華南「何もなくて震える訳ないだろ」
修二「僕…、僕ちゃん男だから…、大丈夫…なんともない…」
言い聞かせるように吐いた言葉に説得力がある訳もない。
華南は苦しそうに表情が曇る。
華南「誰にも言わない、だから俺には話してくれ…」
修二「……華南…僕ちゃんは、なんともないから」
ニコリと微笑んだ。僕は、華南に包まれて、少しづつ冷静さを取り戻す。華南に手を握られて落ち着いてきたのに、華南に抗うという矛盾。
分かってはいたけど、これ以上彼に頼るわけにはいかない。お決まりの笑顔で笑って見せる。
修二「…僕ちゃんは大丈夫」
華南が傷ついた顔をした。
僕は華南を拒絶したことになるんだろうか?
華南はもう一度僕を抱きしめた。僕が大丈夫だからと告げて離れようとしたら、「もう聞いたりしないから…」と離してくれなかった。
でも正直、華南の腕の中にいたかった。
だから、心の中では、離さないで…と何度も念じた。
華南「俺は待つから…」
華南は優しい、だから僕のために聞かないでいてくれる…。
もう、待たなくていいよ。
終わりにしよう…
ーピリピリ♪ピリピリ♪
華南の携帯が鳴り響く。
華南は僕を逃がすまいと腕に力を込めたまま、携帯の通話ボタンを押す。
すると、スピーカー状態でもないのに、はっきりとしたむつの怒声が、受話器から漏れた。
むつ『どこ行ってんだ!!てめぇーは!!!』
あまりの声量に華南が弾かれたように耳から携帯を離す。
むつは変わらぬ音量で怒鳴り散らしていた。
むつ『ちょっとそこまでって、どこまでじゃ!!!』
華南「ごめんごめん…忘れた…」
むつ『なんだとコラー!!』
むつの声を聞いた瞬間。
体がガタガタ震え出した。百目鬼さんに組み敷かれ射精したことを激しく嫌悪する気持ちが腹の中で渦巻いて、震えを止めることができない。
修二のガタガタ震るえる体を、華南が電話でむつに怒鳴られながら強く抱いて、修二に微笑み、背中を撫でる。
大丈夫だよ…
と、言ってくれてるようで、修二は引きつる体から力を抜くよう、何度も深呼吸した。
華南に数分背中を撫でられて、何とか落ち着いた頃、電話でごちゃごちゃ言ってたむつが再び吠えて、受話器から声が漏れた。
むつ『聞いてるのか!!!』
華南「聞いてるよ。公園!修二の家の近くの公園だよ!」
むつ『そこで何してる!?』
華南「何もしてねぇ〜よ!」
むつ『「ナニもって、抱き合ってんじゃんかぁ!」』
怒ってる声が、ダブって聞こえた。
恐る恐る華南が振り返り、修二が華南の肩口から覗き見る。
公園の入り口に、携帯を耳に当てたむつが立っていた。
沈み出した夕日に照らされて、むつが公園の入り口に仁王立ちしている。
帰宅して着替えたようで、ラフなTシャツとハーフパンツにサンダルで、建物に反射した夕日の橙色の光を背負っていた。
逆光ではっきりとした表情がが見えないが、怒っていることだけは確かだ。
むつ!?
あ!しまった!!
自分が華南に抱きしめられてることを思い出し、慌てて華南から離れようと腕を突っ張った。
修二「痛ッ!…」
ズキン、と痛んだ左肩に思わず声を出してしまう。百目鬼に噛まれたのを忘れてた。
むつ「どうした!?」
むつが心配して駆け寄ってきた。
しまった!どうしよう!誤魔化さなきゃ、笑って誤魔化さなきゃ!!
修二「あはは、さっきさぁ、角にぶつけちゃって、たいしたことないから!唾付けときゃいいから」
むつ「ぁあ?!ぶつけただぁ?見せろ!」
ヤバイ!傷口絶対歯型だし、見られたら非常にマズイ、そう思って両手を前に出してブンブン振って後ずさった。
むつは肩じゃなくて、僕ちゃんの左手を掴む。
左手の甲が内出血していて色が赤黒く痣になっていた。
あっ…手か…。百目鬼さんの車のドアに打ち付けられたやつだ…。内心ホッとしたのもつかの間、むつに顔を覗き込まれ、ドキッと心臓が跳ねて焦る。ニコリと表情を取り繕った。
修二「ハハッ、痣になってらー、全然痛まないから気づかなかったぁ」
ニッコリ微笑んだのに、むつの眉間にはみるみるシワが寄って、完全に怒っていた。
そして、真横の華南からも痛い視線を注がれて、お腹のあたりがキュッと痛む。
あれれ?むつ様疑ってる?
僕ちゃんの笑顔を睨みつけ、むつが低い声で命令してきた。
むつ「何があった…。誰だ、…言え」
むつは何も知らない。
だから喧嘩と勘違いしたのかもしれない。
修二「だから、ぶつけただけだってぇ、何怖い顔してるんだよぉ」
情に訴えれば引いてくれる華南と違い、むつは知りたいと思ったら引いてくれない。
むつはお構い無しに詰め寄ってきた。
何かを悟ったみたいに、むつが眉間に一層シワを寄せて、超至近距離で睨みあげてきた。その睨みを一身に受け、キリキリと胃が痛む。
修二「僕ちゃんの不注意、大丈夫だから、ほらね」
左手をヒラヒラ振ってみせた。
むつは何故か拳を握りしめて奥歯を噛み締め。
噴火した。
むつ「あっったまキタ!もう無理!もう限界!」
その声音に、ビクッと肩が震える。
全身の血の気が引く。
視界が歪む。
耳が痛い。
死刑宣告される瞬間みたいに生きた心地がしない。
次の言葉で、きっと僕らはおしまいになる。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
237 / 1004