アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
狭い世界の外側と俺たち〜華南〜
-
奏一さんへのカミングアウトは、いいアイディアが浮かばない。
俺が奏一さんに話すからむつが修二をフォローしろ、とも言ってみたが、むつは自分が言うと言い、それじゃあ修二が可哀想だと俺が反論してお互い譲らず平行線。
いっそ2人でって手もあるが、それでは万が一に修二を支える人間がいなくなる。
海の家アルバイト2日目。
仕事内容は変わらず、まずは店に慣れることだと言われ、目の前の仕事に専念した。
接客に慣れないむつも、水着ギャルに絡まれながら、なんとか一生懸命やっていた。
昨日のむつの爆弾発言も、部屋に吉良さんがいるから保留のまま…
奈々「むつく〜ん、そこ私やっとくから」
むつ「はい」
奈々「今から賄い頼んで休憩してって店長が言ってるよ」
奈々は、むつに積極的に話しかけ、あれこれ気を利かせてくれていた。流石に俺も、始めたばかりの仕事をしながらむつを気にかけるのは難しい。
奈々は、明るく仕事が出来るいい子だった。
奈々「華南君、疲れてる?次の休憩私でもいい?」
華南「えっ、大丈夫ですよ」
奈々「やった、ありがとう♪」
若干構いすぎてるが…。
吉良「華南!コレ3番」
華南「はい!」
厨房から声が飛んできて料理を取りに行く。すると、料理の皿を出しながら、吉良は奈々の方をチラリと見た。
吉良「余計な虫が増えたな」
華南「…それって、俺も入ってます?」
吉良「当然だ。ほら、3番のランチセット」
奈々には昨日釘を刺しといたつもりだったが…。やっぱむつ君の可愛さは、全国共通なんだなぁ…。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
バイト3日目になると、むつの動きはまだまだ固いけどなかなかスムーズになってきた。
奈々「2人って、本当に彼女とラブラブなんだね。水着の女の子をエロい目で見ないし、毎晩電話してるみたいだし」
可愛いとか、きわどい水着はエロいとは思うけど、最後は必ず〝でも、可愛さはむつに、エロさは修二には負ける〟と思ってしまう。
華南「…俺たち一途なんで」
奈々「一途だって、可愛い」
ケラケラ笑った奈々が、お客にオーダを取りに行くと、吉良さんが呼んだので、俺が料理を取りに行くと、厨房内で派手な音がして慌てて中を覗く。
そこには店長がフライパンと一緒にひっくり返っていた。
華南「店長大丈夫ですか!?」
店長「あはは、大丈夫…」
明るい笑顔で照れながら答えていたが、吉良さんがすぐさま店長の手を取って水道の水に手を突っ込ませる。どうやら店長は火傷したみたいで、吉良さんは普段の倍の速さで動いて、店長の手を水に浸した後、氷をとってきてボール入れ店長の手を冷やした。
吉良「華南、こっちは大丈夫だから、いつもの事だし、その料理全部8番に持ってって」
華南「了解」
ここで働くようになって、吉良さんの印象が少しだけ変わった。
実は、かなりかっこいい。
飄々と何でもない風に涼しい顔してメッチャ働ける人だった。副店長と奈々ちゃんとも仲が良く、女の子扱いしているし。
クラッシャーな店長のフォローもサラッとこなして何もなかったようにしている。
まさかとは思うが、むつの中のポイント稼ぎにむつをここに呼んだんじゃ〜…
むつ「うわ〜、吉良さんかっこいい…」
吉良「むつも、練習すればこれくらいできるよ」
吉良さんはにっこり微笑みながら、両手で2種類のカクテルを同時に作る。
むつ「いや、10年たっても出来る気がしねぇよ」
吉良「睦美なら絶対できるよ。手取り足取り腰取り教えてあげるよ」
むつ「マジ?俺できっかなぁ」
足も腰も取らんでいい!!むつ君逃げて!!
ここは危険がいっぱいだ。
そうして時間はあっという間に過ぎて行く。
副店長「皆さん今日もお疲れ様!橘君お疲れ様ぁ〜、柴田君良く頑張ってるねェ〜」
副店長が豊満なボディーでむつを抱きしめると、むつの顔が巨乳に埋れてしまった。
店長「ちょっとキラリさん!柴田君の息が止まっちゃうよ!」
副店長「あっ、ごめんごめん」
むつ「ぶはっ!なんすかソレ!軽い凶器じゃないっすか!」
解放されると、軽く息が止まってたのか、真っ赤な顔したむつが鼻を押さえてセェエハァ肩で息をしていた。
副店長「やだ〜照れてんの?可愛い」
むつ「はぁあ!?」
華南「はいストップ!」
禁句に目が鋭くなったむつを取り押さえる。むつはジタバタしたが、「何のためにバイトしてるんだっけ?」って俺が言ったら、大人しくなった。
全く気が気じゃない、お客に「可愛い」って言われてるたびに、客を睨みつけて…、だから湧き上がる怒りを抑えるために、俺がむつに教えた呪文。
『何のためにバイトしてるの?』
『修二と恋人らしく旅行するため』
こうして一生懸命のむつも3日目ともなると、流石に疲れが出たのだろう。夕飯を食べながら、むつがウトウトし出した。
可愛い!!
今すぐ押し倒してアンアン言わせたい!!
吉良「こらこら睦美、箸が鼻に刺さるよ」
華南「俺、部屋に連れて行きます」
奈々「華南君やっさしぃー!」
副店長「きゃー、お姫様抱っこ?!」
店長「キラリ…静かに」
賑やかな人達を置いて、部屋にむつを運び入れる。布団がまだだったので、いったんむつを下ろし、布団を1枚引いてむつを寝かそうとして抱き上げたら、むつが首に巻きついてきた。
華南「ちょっ、むつ?」
むつ「…充電」
ギュッと抱きつかれ、むにゅっとくっついた唇に、一瞬にして体温が上がり、早まる心臓がドキドキと響いて息子さんが起き上がる。
はぁーあーむつきゅん!
堪らずむつの柔らかい唇に舌を這わせ、深いキスをしようとしたら、むつの体から力が抜けて、首に回していた手がパタリと落ちた。キスした大勢からズルズルとずり下がってむつは、寝息を立てていた。
えー!!シクシク、むつくーん!!可愛い!凄く可愛いんだけどぉ、おっきした俺の息子ちゃんはどうすればいいのー!?
俺たちは、バイトに、普段と違う環境に、修二の事にと頭がいっぱいで、すっかり夏の海に来ているのを忘れていた。
俺もむつも、その日は、修二には電話しないまま眠ってしまった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
307 / 1004