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奏一と弟
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俺は、自他ともに認めるブラコンだ。
弟の修二は凄く控えめで健気で可愛い。
修二「兄貴、今日、むつと華南のバイト先に行ってもいい?友達と」
奏一「いいよ」
修二は、〝アレをしたい、コレが欲しい〟と言うことがほとんどない。
小さい頃に両親が離婚し、母さんが女手一つで俺たちを育てたが、俺は、思春期に入っていて、やり場の無い気持ちを喧嘩することで晴らしていた。
修二は、変わっていく俺に、変わらず懐いていた。幼稚園からつるむむつも、俺を「かっこいい」とか言ってて、なんだか小さな弟が2人みたいで、喧嘩はしても悪いことに手を染めようとは思わなかった。
グレるとはちょっと違う、俺は派手に喧嘩はしたけど、小遣い稼ぐのにバイトはしてたし、弟のことは可愛がり小遣いもやってた。
俺的には頑張ってるつもりだったけど、世の中からしたら、タダのグレた不良。
お金を稼いで生活する苦労が見えてなかった。
ある日、母さんが、夜に昼間に働いてたために体調を崩し。俺は、本格的にバイトをすることにした。
日々はめまぐるしくて。
そんな俺と母さんの背中を見て育った修二は、ワガママを言わない、やりたいことも口にしない子になった。
修二のことが心配だったが、いつも好き勝手に生きるむつのそばにいる時だけは、いつも楽しそうで、生き生きしていた。
バイトに学業に、仲間に喧嘩に…
だから…
気付かなかった…
修二の悩みも。
百目鬼が弟に何をしてたかも…。
百目鬼の元から助け出した後、修二は酷いもんだった。
誰にも心を開かず、「たいしたことないよ」と繰り返し、仮面のような微笑む。
身体中の跡と傷、それはどれも時間とともに薄くなった。でも!問題だったのは心だ!。
俺は手を尽くしたが、全く良くならず。
修二は、毎日お見舞いに来るむつに怯えていた。
だから驚いた。
ある日帰ったら修二が布団から消えていて、百目鬼は病院送りにしたから、奴じゃない。修二に電話したら。
『今、むつと散歩してるんだ』
って穏やかな声を聞いた時は、驚いて、安堵でその場に座り込んだ。
だって、布団から出ることすらしなかった修二が、外に出たのも驚きだが、電話の声は穏やかで、『心配かけてごめんね、僕もう、大丈夫だから』と言ったからだ。
帰ってきた修二は、むつと手をつなぎ、幸せそうに笑ってた。
あの日から、時々言う修二の〝○○に行ってきていい?〟には、必ずむつの名前が出て来た。
時々女とも会ってるようだったが、遠くに出掛けることはなく、事件からしばらくして、華南の名前が加わった。
そして、2ヶ月前くらいから、感情の浮き沈みが激しくなり、落ち込んだり、浮かれたり、修二は忙しく表情が変わり、時々携帯を握りしめて幸せそうに笑う。
こないだなんか携帯を握りしめて寝てしまっていた。
そして昨日…。
修二「♪〜♪〜」
奏一「修二、ご機嫌だね」
修二「えっ!?そ、そう?」
奏一「そんなに海へのお泊まりは楽しみなの?」
修二「ぅ…、普通だよ」
奏一「ふーん」
修二は明日の準備のために、荷物をカバンに詰めながら、しばらくするとまた…鼻歌を歌っていた。
修二「♪〜♪〜」
本人気づいてないみたいだから、黙っててやったが。修二は、アレで隠せてるつもりらしい。まぁ、家の中で油断してるんだろうけど。
修二は、海に行く当日。2時までのシフトに入っていた。時間が経つに連れ、鼻歌こそ歌わなかったが、時計を見るたび幸せオーラが漏れている。
昨晩はウキウキといつまでも眠れなかったみたいで、隠れてあくびを何度かしている。
奏一「あいつ、大丈夫かな…」
アルバイト「オーナー何か心配事ですか?」
奏一「今日の修二、フワフワしちゃってさ、心配なんだよ」
アルバイト「修二君?フワフワしてます?いつもと変わらずイケメンできっちり仕事してますよ」
俺の弟は、どうも感情が上手く表情に出ないようだ…。
あんなに健気で可愛いのに…
奏一「修二、もう時間だよ」
修二「お疲れ様です」
奏一「タナが外の車で待ってるから、気をつけて行くんだよ」
修二「兄貴ありがとう、お見上げに貝殻拾ってこようか?」
奏一「いらないよ、向こう着いたら電話して」
修二「はーい、行ってくるね」
奏一「行ってらっしゃい」
そう言って笑った修二は、久々にいい笑顔をしていた。
この笑顔を、守ってやりたかった。
ーピリリリ♪、ピリリリ♪
奏一「はい」
キラリ『奏一!ごめん!。
タナが襲われて、
…修二が、攫われた』
8月10日日曜日、16時1分。
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