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番外編④泡になって消える狂愛に口づけを
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レストランの中で先に待っていた
メイちゃん、こと〝椎名楓・しいなかえで〟と3人でテーブルに着く。
百目鬼もメイも朝食は終わっていたので、コーヒーだけ頼み、マキは和風御前を頼んだ。
マキ「メイちゃん♪この人、百目鬼神さん♪失恋しちゃって新しい恋人募集中のS男さん」
メイは、マキが朝食に自分を呼んだ目的を知り、動揺して顔を赤くし下を向いてしまう。
百目鬼はマキの話に耳を傾けないようにそっぽを向き、ポケットから煙草を取り出した。
不機嫌な百目鬼は、ヤクザ並みに恐ろしい。
メイ「す、すいません、マキが…。あの、マキは凄くいい子なんですよ。思いやりのある子なんです、色恋には首突っ込まずにはいられなくて…、あの!、冷やかしとかはしません!お節介焼きなだけでけして悪気があるわけじゃないんです」
百目鬼「…煙草…すっていいですか?」
メイ「あっ、はい」
百目鬼は、メイの返事を聞いてテーブルの灰皿を引き寄せ、ジッポで煙草に火をつける。
百目鬼さん、落ち着かない様子。絶対メイちゃんを意識してるよね?
マキ「百目鬼さん、こちら椎名楓さん23才♪。炊事洗濯こなせるスッゴイ気の利く優しい人だよ♪。只今修行中のM子さん♪」
メイ「マ、マキ!(小声)」
真っ赤なメイちゃんカワユス♪
マキ「メイちゃんは、百目鬼さん好みのタイプでしょ?見つめ合ってたし♪…それとも好みじゃなかった?」
メイ「百目鬼様は素敵ですよ…」
百目鬼「様はよしてくれ」
メイ「あっ、すいません。…百目鬼さん」
マキ「固いなぁ。神さん♪って呼んだら?」
メイ「マキ!(小声)」
マキ「えー、恋人候補なんだから、親しくしなきゃ♪メイちゃんの趣味は映画と読書だよね。百目鬼さんは?」
百目鬼「…」
マキ「……。♪」
マキの話しを無視した百目鬼に、マキは不敵にニッコリ微笑み、携帯を取り出した。
メイ「…何してるの?」
マキ「ふふ、僕の〝友達〟に百目鬼さんと〝共通の友達〟がいるから、今から電話…」
百目鬼「!」
瞬間、マキの携帯が大きな手に握りこまれた。百目鬼の怖い顔は、更に怖くなる
百目鬼「友達だと?」
マキ「と♪も♪だ♪ち♪。5月に知り合ったの」
百目鬼と修二が再会する前だ。
百目鬼がマキに3度程偵察を頼む前から、マキと修二が知り合いなのだという事実を、百目鬼は、今知った。
マキの手にした携帯の画面には、確かに修二の番号が記載されている。
百目鬼「…、チッ。クラシックだ」
マキ「へー」
百目鬼「仕事が忙しくてそれぐらいしかないだけだ」
マキ「メイちゃんもクラシック好きだよね♪」
メイ「あ、はい、僕も好きです」
百目鬼さんはぶっきらぼうだが、会話は何とか続いた。頃合いをみて、マキはトイレだと言って席を立ち、遠くから2人の様子を見守った。2人はぽつぽつ話し、百目鬼さんは、少しだけ柔らかい表情を見せた。
…上手くいった?いい感じ?
そうして眺めていると、メイの携帯が鳴り、今度はメイが席を離れる。
マキはすかさず席に戻った。
百目鬼「よぉ、随分遅かったな」
マキ「どお?メイちゃん気に入った?」
百目鬼「…いらない世話だって言ったろ」
マキ「ダメだよ、今から3人で出掛けるんだから、2人には仲良くなってもらわないと…」
マキの計画では、このまま椎名を連れて3人で出かけて仲良くさせようと思った。
メイ「残念でした。私は忙しいんですよ」
マキ「えー!」
後ろから現れたメイは、仕事の途中で、さっきの電話は『マキの我儘に付き合わなくてもいい』と先生からだったそうだ。
メイはこれ以上は一緒にいられないと言う。
マキは最後の手段で連絡先を交換させ、メイとレストランで別れた。
百目鬼は、ホテルの支払いを済ませ、マキと一緒に地下の駐車場に向かう。
残念…、ここからデートさせて更に親密になってもらおうと思ったのに…。まぁ、いっか…メイちゃんの感じだと百目鬼さんを気に入ったぽいし…、問題は百目鬼さんだな…。
修二に未練タラタラで、失恋の深いダメージ。自分を癒す方法を知らないこの猛獣に、どうやって新しい恋をさせるか…。
考えながら歩いていたら、百目鬼が急に立ち止まって振り返って、マキの腕を掴んだ。
マキ「え?」
百目鬼「気をつけろ、段差だ」
足元を見ると、目の前に段差があった。
マキ「………ありがとう」
マキは、不思議な気持ちがした。
そのまま手を引かれた。百目鬼の車に案内され、女の子扱いみたいに、百目鬼が車のドアを開けてくれる。マキは不思議に思った。
マキ「いつもこうなの?」
百目鬼は何のことか一瞬考えたようだが、質問の意味に気がつき、苦笑いする。
百目鬼「修二にはしていた…。夜、最後まで付き合わせると歩けなくしちまうから…。その、昨日はヤりすぎた…。すまん」
マキはキョトンとする。
百目鬼といると、キョトンとなって不思議な気持ちばかりする。
マキ「…僕は…、まだ腹八分目だよ」
百目鬼「…淫乱」
マキ「淫乱な子、好きでしょ?」
下世話な話に百目鬼はため息して車を発進させた。
黒で統一された車内。百目鬼がさっき趣味だと言ったクラシックが流れている。車の中には、車の雰囲気にも百目鬼のイメージに合わない、手を広げたくらいのサイズの可愛いイルカのぬいぐるみが一つ置いてあった。
マキはふと、それが修二との思い出の品な気がした。
この獰猛な男の片思いは、根深く、きっと痛々しいものだ…、愛し方を間違ったがために。相手も自分も苦しめる狂愛になってしまった。それは今も彼を苦しめる。
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百目鬼は心の中で叫んだ。
どうして俺がこんなことに付き合わなきゃならないんだ!と。
少年『ポチ!ポチー!会いたかったポチ!』
ポチ『ワンワン!』
ナレーション『こうしてポチは、大冒険の末に、ご主人の元にも戻る事ができました。』
マキ「うっ、ううっ、よかったねポチ」
百目鬼は、マキと映画に居た。
マキは、『ポチの大冒険』という、映画を見て、涙をポロポロこぼしている。
百目鬼は、引きつった頬でため息交じりに、マキにティッシュを渡す。マキはそれを受け取って鼻をチーンとかんだ。
映画はエンドロールで、演者の名前が流れる中、バックにポチと少年のその後の幸せなスナップ写真が移り変わっている。マキの目からさらにポロポロと涙があふれ止まらない。
会場内は、夏休みだってことと、動物感動作品ってこともあり、ほとんど家族連れで子供ばかり。マキの号泣に、子供たちがチラチラこちらを見て指差している。
百目鬼はさっさと立ち去りたかったが、マキは百目鬼の腕をガッチリ掴んでいるため立ち上がれない。
いったいこいつはいくつなんだ!?
修二はこんな風に泣かない、涙を溜めてふるふる手を握り込むが、涙を流すことはしないやつだった。
しかし、マキは、人目も気にせず、子供達に『あのお兄ちゃん泣いてる』とか暗がりでわかるほどの号泣ぶり…。
百目鬼「いつまで泣いてる!」
小声で言って。グシャッとティッシュを顔に押し付けると、マキは顔にティッシュをおしつけられたまま目をつぶって顔をこちらに向けた。
〝拭いて〟とばかりに黙ってるマキに、百目鬼はイラっとしながらも、子供の目に晒されてるため、仕方なくマキの顔を拭いてやる。
マキ「えへ♪ありがとう♪」
にぱっと笑うマキに心の中で、てめぇーはいったいいくつだ!!と突っ込む。
百目鬼の心の声が強烈に寄った眉間のシワに現れるが、マキはニコニコとして腕を引く。
マキ「はい、次行こう、次♪」
何故、映画に来たのかというと。
昨日マキと寝た代価に、マキのお願いを聞くことにした。煽られたとはいえ、タガが外れた、コントロールが効かなかったのは久々で。マキは平気そうにしてるが、ホテルで何もないところで転んだ。思い出せば、修二とはヤった後、修二は全く動けなくなる。そう考えると、自分の性的衝動に責任を感じる。
マキは、ニコニコ作りものみたいに綺麗に笑い言った。「修二との思い出のある場所に行こう」。…企みを感じる。
修二とよく出掛けたのは水族館。しかし、まだ営業時間前だった。そしたらマキは、水族館の他は?って聞いてきた。
そして今に至る…。
修二とは、よく出かけた。
デートって雰囲気じゃなくて、2人っきりだと体を求めてしまうから、人目のあるちょっと薄暗い所に出掛ける。
修二は割と映画が好きだ、感動ものが好きで、よく涙を堪えて手を握りしめている。
マキとはえらい違いだ。
水族館では、修二とデッカい水槽の前で静かに話をする。だいたいむつの話し。俺が聞いてやると、ポツポツ嬉しそうに申し訳なさそうに話した。
修二とは、静かな思い出と、酷く傷つけた記憶しかない。それでも…付けた鎖を解いてはやれなかった。散々傷つけて、何とか振り向かせよう、心に残ろうとしたが…、結局、恨んですらくれなかった。
マキ「うわー♪すっごーい、きれー♪」
マキは、でかい水槽の前でガラスに張り付いて魚達を眺め、子供のようにはしゃいでいた。修二とはあまりにも違う反応。騒がしさは、感情に浸る暇も与えない。
百目鬼は、ふと、改めてまともにマキの顔を見た。
昨日の妖艶さのカケラもない。ただの子供に見える。よく分からない不敵な笑顔も水族館に入ってからは見ない。
ただただ魚を見つめ、俺の腕を引いて話しかけてくる。瞳はキラキラ輝いて…
これが、素か?…それとも…
百目鬼「…騒がしい…」
マキ「ぁ…ごめんね百目鬼さん、水族館って初めてで…」
マキは恥ずかしそうにペロッと舌を出した。
は?…初めて?
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