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育む俺たち〜華南〜
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新年を迎え、まもなく入試が開始する。
修二は、平気そうにヘラヘラしているが、重圧を感じているのだろう、少し痩せた。
俺もむつも、修二に目を光らせて無理のないように気を配っていたら、なぜかマキがゲリラ豪雨のようにやってきて、修二をからかって去って行く、ってことが何度かあった。
あいつも顔には全然出ないが修二が心配なんだろう。
マキ『煮詰まりすぎても良いことないから、適度にガス抜きしなきゃね♪、そこで、テッテレ〜♪♪受験のお守りに!〝絶頂のその先へ!極太バイブマイケル君3号!!〟これでアナニーのお相手は安泰!スッキリ勉強できるよ♪♪』
修二『…』
むつ『帰れ!!』
心配してる…と思う。
でも、大丈夫。俺とむつでお参りして本物のお守り渡したし、修二の成績は合格ライン。
俺はというと。冬休みは、就職の決まった内装の仕事に勉強のためアルバイトして。
むつは、バイト先でそのまま正社員になるため、日々接客を学んでる。
高校生になったばかりの時、毎日をだらだら過ごしてたのが嘘みたいに、同居を目標にそれぞれが頑張る。
冬の寒さは増すけど、俺たちの絆は深くなる。
それでもやっぱり喧嘩はする。
だいたい発端はむつだけど、喧嘩の原因なんて可愛いものばかり。
修二が構ってくれないとか、修二のメールが短いとか、修二のラブラブが足りないとか…。
修二は、少しづつ、ほんの少しづつ変わっている。俺にはそれが可愛くて可愛くて仕方ないけど、むつにとってはまだまだ足りないらしい。これ以上可愛くなったら、俺とむつが困る事になると思うが…
修二の変化に比べたら、確かにむつは、驚くほど色々と頑張って変わっている。
1番は、忍耐強なってきたことだろう。
他の人から見たらそう変わらないかもしれないが、毎日一緒にいた俺たちからしたら、むつの変化がすごいことが分かる。
修二を守って頼られる優しい人間になろうとする気持ちが強く作用してむつを変えてる。
百目鬼に、修二の過去を聞かされ、崩れる修二を見たことが、きっと大きく影響しているんだ。
俺もそうだ。
毎日毎日気を引き締めて、いつ何が起こっても対処できるように、早く大人になりたい。
むつと修二の隣に並んでも、困難を一緒に乗り越えて行けるように…。
何かをちゃんとやろうとすると、やる事は色々あることが分かった。今まで暇だと思っていた自分がどれほど子供だったか分かる。
頑張る毎日は大変だ。俺は疲れると、箱に入れたプリクラを見て癒される。
12月の俺の誕生日に撮ったプリクラ。俺を真ん中にして、むつが金髪のロングにふわふわのスカートを履いたロリ系スタイル。
左側の修二は、髪を解いた地毛で、黒の大人っぽいデザインに少し胸元にレースで可愛らしさを演出したワンピース。
化粧はマキがやってくれた。今思い出しても鼻血が出そうです。
この日は、外でデートして。
その後は、むつが前日から作って味を染み込ませたカレーを夕飯に食べた。
むつの手に絆創膏が付いていた理由にそこで初めて気づいて、俺は感動した。
プリクラをしまってた箱は、クリスマスに修二からもらったブレスレットの箱。
初めて恋人としてのイベント、クリスマス。
それぞれやらなければならないことの山積みで忙しく、当日ではないが、集まった。
むつが、吉良さんの紹介でケーキ売りのバイトをして、バイト代わりにホールケーキを貰ってきた。
俺は、北斗にそそのかされて、トナカイとサンタのコスプレをウキウキ持ち込む。
修二は俺とむつに、お揃いの天然石の入ったアクセサリーをくれたが、俺とむつで激怒した。だって、俺とむつでお揃いだけど、修二の分は無いとか言いやがる。
修二の誘いでマキもやってきて、俺たちのやりとりにゲラゲラ笑い。プレゼントだと大人のオモチャを配った。マキは相変わらずだ。
そうして賑やかに年末を迎え。
あっという間に新年が訪れた。
そして…
訪れた春…
修二は、大学に無事合格。
俺たちは無事、卒業となった。
卒業式が終わると、俺たちの元に、谷崎がやってきた。
谷崎「お前ら良く頑張ったなぁ!!」
体育会系の男は暑苦しい。
卒業式に筋肉でパツパツのスーツで男泣きする谷崎。
運悪く、むつはそれに捕まって、筋肉にぎゅうぎゅう抱きしめられてる。
むつ「谷崎!キショイ!」
谷崎「お前は1年の時と比べ物にならないほど見違えてぇー!」
むつ「グェッ…」
さすが、元朱雀の一員。むつもひとたまりもない。
俺と修二が、次は我が身かと思っていたら、修二の携帯が鳴った。
修二「マキからメール。卒業おめでとうだって、マキのところも今日卒業式だって」
華南「…あいつが高校生活してるって未だに信じらんないんだけど…」
修二「フフッ、そうだね。あっ、マキはもう帰るって、マンションで待ってるって」
今日は、マキが俺ら3人の卒業を祝ってくれるそうで、昼飯を食べて騒ぐ予定。
ーピリリリリン♪ピリリリリン♪
華南「おっ、マキから催促の電話か?」
修二「…」
突然、修二の顔が真顔になった。
鳴り続ける携帯には、非通知の文字が…。
修二は、その電話を慎重にとった。
修二「はい…もしもし…」
喋り出した修二は、何か言われたのだろう、驚いて校門の方を見た。
校門の向こう側の道に、黒い車が停まっている。
相手が誰だかすぐに分かった。
修二「…ありがとうございます。…え?………………僕たちは、一緒に住みます」
修二は、にこやかにそう言った。
そして、相手の質問に嬉しそうに微笑む。
修二「…ええ、2人が好きですよ…。……僕は、前に進みます。…あなたも…前に進んで下さい」
修二が電話を切ると、黒い車は、静かに走り出し、見えなくなった。
あいつは、見届けに来たのだろうか?
それとも、奪いたかったのだろうか?
修二「…大丈夫だよ華南」
俺がいつまでも車の去った方を眺めているから、修二に気を使わせてしまった。
修二「さよならをしただけだから」
修二は、俺の手を握り、微笑んだ。
その、どこかスッキリとしたような顔に、俺は安心した。
華南「それだけ?」
修二「泣かされても知らないぞって言ってたけど、僕ちゃんは泣かされないから大丈夫」
むつ「大丈夫じゃない!」
修二「うわっ、むつ!」
修二の後ろから、谷崎が首に巻きついたままのむつがご立腹で仁王立ちしていた。
むつ「俺は、あいつに次会ったら殴ってやるって言ったんだ」
修二「会ってないでしょ、見えなかったろ?」
むつ「見えたんだよ!存在が!」
修二「まぁまぁ、兄貴が門の所で見張ってるからさ」
むつ「え?奏一さん!?」
むつがキョロキョロ奏一さんを探すと、奏一さんは門の所で、車の去った方角を眺めていた。
あの人が、修二に過去にした事を許すことは出来ない。
でも、修二をチンピラから救った後、ホテルで修二を取り返しに行った俺が最後に見たあの人は、なんとも複雑に悲しそうで、諦めたように目を細めた。修二の事を凄く好きだったんじゃないかと思った…好きがゆえ…。
修二が恨まないと言ったのは、それなりの何かがあったのだろう。
俺には、計り知るとこは出来ない。
だから、過去は許せないけど…恨まない…
ただ、あの人が現れなかったら、修二の抱えてた闇を知るのは、もっと後…、もしくは、知ることはできなかったんじゃないかと思う。
修二の頑固さは、ダイヤモンドにも勝るんじゃないだろうか…。
今、確かなのは。
修二の右手が、しっかり俺の手を握っていて、左手がむつの手を握って、柔らかい笑顔で俺たちと一緒にいるってこと…
桜舞うこの春、俺たちは高校を旅たち、これからこの手を握りしめて共に3人で歩いて行くってこと…
むつ「なぁなぁ、早くマキのマンション行こうぜ、あいつ待たせるとろくなことねぇし」
修二「…僕ちゃんもそう思う。マキも早く来てねってメール寄越してるし」
華南「…そういえば、マキのやつ、こないだ新しいの入荷したとかはしゃいでやがったなぁ…、まさかなぁ…、ハハッ…」
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