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番外編5ひと夜咲く純白の花の願い
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矢田さんの案内で近くの病院に行った。
骨に異常はなく、一安心。
帰り道、矢田さんにお願いしてキーホルダーを探しさせてもらった。
昼間の駅前は人だらけで、植え込みに首突っ込んで中を探すのはかなり目立って、通行人に見られた。
植え込みは雑草が多くて、昨日の雨で地面がまだ濡れてる。ゆっくり丁寧に探したけど、見つから無かった。
自転車とぶつかった時、どこかに飛んでったのかも…。
矢田「…そ、そんなの悲しそうな顔しないでください!きっと見つかります!」
しまった、油断した。
マキ「ふふ、矢田さんはとても優しいんですね」
矢田「や、優しいなんて、俺は、一生懸命諦めずにやることしか出来ない男っす」
マキ「…とても素敵な事だと思いますよ」
一生懸命諦めず…。
それが一番難しい。
矢田さんはゴミ箱を探したりとかしてくれたけど見つからず。
百目鬼さんが帰ってくる時間になるので、一度諦めて事務所に帰ることにした。
あんな銀の禿げた、色あせたキーホルダーを交番に届ける人なんかいないだろうし…。
見つからなかったら、キーホルダーも、百目鬼さんも、全部忘れなくちゃいけないな……
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お昼過ぎ、事務所に帰ってきた百目鬼さんはドアを開け、僕の姿を見るなり叫んだ。
百目鬼「な、何て格好してんだ!」
唖然とした百目鬼が目にしたもの。
マキが、淡い桃色のケーブル編みニットのワンピースを着て、ソファーに座り、膝には猫を乗せてお茶を飲んでいた。
マキ「あ、おかえりなさい百目鬼さん♪」
百目鬼「おかえりじゃねー!それ女物じゃないか」
マキ「怒鳴らないで、猫が逃げちゃう」
レディースであることもそうだが、膝から生足、短いブーツにはファーが付いていて、百目鬼には凄く不本意だか、ドキりとした。
百目鬼「ってか怪我は!?病院行ったのか!?」
マキ「行った行った、ただの打撲♪
まぁまぁ、落ち着いて。しょうがないんだよ、矢田さん僕のこと女の子だと思ってるんだもん。下着もレディースだよ♪見る♪?」
チロっとめくると、からかい過ぎたみたいで百目鬼火山が噴火。
百目鬼「見るわけねぇだろ!ッ…」
怒鳴った瞬間、マキの膝にいた猫がビクッとしてどこかに行ってしまいう。
百目鬼は、疲労感に頭を抱えた。
その声に、事務所の奥にいた矢田が顔を出した。
矢田「おかえりなさい百目鬼さん!」
忠犬が主人を迎えるように、矢田は百目鬼の帰りをとても喜んでいた。
百目鬼「矢田!お前は馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、そこまで馬鹿だとは思わなかったぞ!」
矢田「俺、またなんかやらかしましたか!?す、すいやせん!」
百目鬼「眼科行って来いマジで!こいつはなぁ!男なんだぞ!」
百目鬼の言葉に矢田はキョトンとして、その後笑った。
矢田「まったまた〜、百目鬼さんまだ酔ってるんですか?マキちゃんは女の子っすよ」
百目鬼「はあ!?この平らなののどこに女の要素がある!」
百目鬼がマキの胸を掴むと、マキは悪ノリして「エッチ」とばかりに胸を隠す。
マキ「きゃぁ♪」
マキのふざけた声に百目鬼が睨むと、矢田が慌てて百目鬼の手をマキから払った。
矢田「百目鬼さん!セクハラはダメっす!いくらお二人が恋人でも人前はダメっす!」
百目鬼「はぁあー!!!?」
火山噴火みたいに爆発した百目鬼と。
海よりも偉大すぎる馬鹿ぶりの矢田。
マキは、堪えられなくて吹き出した。
マキ「アハハハハ、もうダメ…面白すぎる…ぷふふふふ…」
矢田「あれ?…違うんすか?」
マキ「違う違う…、くふふふふ」
百目鬼「ちげーよ!」
矢田「…あの…でも……、昨日…お二人…」
マキ「あっ、そうだった」
百目鬼「昨日!?」
記憶に無い百目鬼は知らないのだ、マキと百目鬼がシてる時、矢田が見てたことを。
マキがそのことを百目鬼に教えると、百目鬼は顎が外れるんじゃないかくらい驚いた。
そんな百目鬼が凄く可愛いけど、可哀想なので。
「矢田さんに説明するから落ち込まないで」って言ったら、百目鬼はマキの両肩を急に掴んで、小声で真剣に言った。
百目鬼「…頼む、ちょっと女の振りをしててくれ…」
マキ「え?…いいけど、なんで?」
驚きで瞳を瞬く。
百目鬼の話しでは、この事務所で、矢田にだけ、自分がゲイだとカミングアウトしてないらしい。
この宇宙一アホの矢田にゲイだと言ったら、後々面倒のオンパレードになるから…と。
一目見たマキにでも分かる。
矢田は限りなく純度の高いお馬鹿さんだ。
話しがついたところで、百目鬼は矢田に向き直る。
百目鬼「ゴホン。矢田聞け、あー、そのー、恋人とかじゃなくて…昨日は酔ってて…つい…………」
矢田「え?酔ってて?あっだから盛り上がっちゃったんすね」
察しの悪い矢田。
百目鬼「違うんだ…恋人とかじゃなくて」
矢田「違う?ああっ!そっか!恋人と間違えたんすね!」
マキ「…」
全く空気の読めない矢田。
百目鬼「俺に恋人はいない!」
矢田「え?でも、お食事してる方がいらっしゃるんですよね?」
百目鬼「は?食事?」
矢田「菫ママが、最近百目鬼さんはデートしてるって…」
なんでも報告する素直な矢田。
百目鬼は頭を抱え、ボソッと苦々しく吐き捨てる。
百目鬼「ッ…あのおしゃべり…」
デートの相手は、メイちゃんだ。
やっぱり…デートしてたんだ…。
……まだ、付き合ってなかったのか…。
それとも、矢田さんに隠してるだけ?
う〜ん、メイちゃんから百目鬼さんの話し聞かないようにしてたのが仇になったか…。
メイちゃんは食事して話しをしてるだけって言ってた…でもあの反応、恋する目だ…。
それに、食事には百目鬼さんから誘ってた、ってことは、百目鬼さんはメイちゃんに気がある。…。
もう一度メイちゃんにちゃんと話しを聞いてみよう。
マキが考え事をしていたら、頭を抱えていた百目鬼がフラフラ歩き出し、ソファーに横になった。
矢田「百目鬼さん!だ、大丈夫っすか!?」
百目鬼「…疲れた…」
矢田「事務所は見てるんで上で寝て来て下さい、午後のお仕事には起こしますから。やっぱり菫ママの忠告聞いて飲まずに寝れば良かったのに、夜もあんなに遅くまで激しく…」
百目鬼「黙れ矢田」
矢田「ッす、すいやせん」
こりゃ。百目鬼さん大変だ…。
矢田さんは僕の腕でも躾けられそうにないレベルだ。
マキ「百目鬼さん、寝て来なよ」
百目鬼「いや、お前と話しが終わってない」
マキ「終わった終わった♪怪我は打撲で百目鬼さんのせいじゃない、昨日のは酔った勢い♪ね♪」
百目鬼「…」
具合の悪そうな不機嫌な目がスッゴイ形相で睨んでくる。
え〜、なんで引き留めるの〜?
矢田「俺!マキちゃん逃さないように見張ってますから!少しでも寝て来て下さい!」
百目鬼「いい…、お前に任せるとロクなことがない」
シュンと項垂れた矢田。
とても素直で一生懸命な矢田さん…、僕の事をスッゴイ悲しそうな瞳で見つめてくる。
…凄い、聞こえないはずの心の声が聞こえてくる…。
仕方ないなぁ…。
マキ「百目鬼さん、僕との話しは仕事終わりでもいいよ」
百目鬼「だめだ」
マキ「僕、腕痛いし、〝他のところも痛いし〟、上で休ませてくれればおとなし〜く待ってる、だから仕事終わりでいいよ」
百目鬼「ッ」
矢田「え!マキちゃん腕以外怪我してたんすか!?どこっすか!?大丈夫っすか!?」
百目鬼「煩い矢田!」
矢田「す、すいやせん」
百目鬼「……分かった、上で待っててくれ」
マキ「うん」
百目鬼さんは、僕となんの話があるんだろう?
百目鬼「矢田、昼買ってこい、お前と、こいつの分」
矢田「はい!…百目鬼さんの分は?」
百目鬼「時間が勿体無い、いつもの食ってから寝る、それでいいだろ?」
矢田「あの…またカップ麺っすか…」
百目鬼「早く行け、お前が帰って来なきゃ電話番がいないから、寝れないだろ。今日は、杏子と檸檬は居ないんだからな」
百目鬼さんにとって、さっさと謝って終わりにしたい話しだと思ったのに、引き留めて、何の話しをするのかな?
…あっ、修二の近状を知りたいとか?
そっか、百目鬼さん修二に近づけないもんね…、でも探偵なら調べるのは簡単なんじゃないのかな?…。
う〜ん。
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