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番外編19ひと夜咲く純白の花の願い
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賢史の言葉に、矢田は驚いて目を見開いた。
矢田「いやいや、賢史さんマキちゃんは女の子っす!百目鬼さんの彼女なんすよ」
賢史は、険しい表情に変わる。
マキのことが男にしか見えない。
賢史は刑事だ。
百目鬼神とは昔からの知り合いで朱雀で馬鹿やってた事も知っていた。
賢史は百目鬼の事ならほとんど全部知っている。
朱雀の頃、修二に手を出し、奏一を怒らせたこと。朱雀から除名された理由。未だにそこら辺からは恨まれてること。
そして、1年半前依頼した事件に修二が絡み、またやらかした事。
自業自得だが、百目鬼には敵が多いい。
そして今、目の前に得体の知れない女装した男が、百目鬼に近づいてる。
見た目はほぼ女だ、でも男には喉仏があるし、刑事の勘が、アレは男だとつげていた。
しかし、矢田という馬鹿は、この事に全く気付いてない。
賢史「へー、あの神の〝彼女〟ね…ふーん」
当然百目鬼がゲイであることも知っている。
賢史は不審な物を見るような鋭い瞳で、マキを睨みつけた。
賢史「矢田、マキちゃんとやらは、どうしてここにいるんだ?」
矢田「えっと…、4日位前の夜中に、駅前でうずくまってたのを俺が助けたっす!」
賢史「ほう、あんな美人が都合よく落ちてたのか。何故居ついた」
矢田「それは…、最初は終電逃したからって言ってて、俺のうちに泊めようとしたんすけど、百目鬼さんがマキちゃんを気に入っちゃって、その日の内に2人は結ばれたっす!」
賢史「神が一目惚れ?(ハニートラップか?)あり得ない。矢田お前、マキちゃんとやらの身元は確認したのか?」
矢田「え?してないっす」
賢史「じゃあ、名字は?どっから来た、それぐらい分かるだろ、俺が調べてきてやる」
矢田「…」
賢史「どうした」
矢田「し、知らないっす」
賢史「…。お前どうしようもねぇーな、いつか百目鬼はお前のせいで刺されるんじゃないのか?」
矢田「ええ!?じゃあ、百目鬼さんはマキちゃんに刺されるんすか?」
賢史「…まぁ、そうだな」
矢田「百目鬼さんは騙されてるんすか!?」
賢史「可能性があるな、(まっ、神は気付いてると思うけど…)お前も探偵の端くれだろ?自分で調べろ」
矢田「は、はい!グッ、ゴホッゴホッ」
賢史「どうでもいいが矢田、お前病院行ってこいよ」
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いつの間にか居た賢史に説得され。矢田は、フラフラしながら病院に行った。
一般客の依頼を2件受け、手があいたので、賢史の依頼の出来の最終確認をし手渡した。
賢史「神、随分綺麗で可愛い子捕まえたなぁ」
事務所の奥で、檸檬と話しをしているマキを顎で示し、ニヤリと笑う賢史を、百目鬼は怪訝に見る。
百目鬼「なんだ、気に入ったのか?あいつは綺麗だけど薔薇みたいなもんだぞ、刺されないように気をつけろよ」
賢史「なんだよ〝彼女〟じゃないのか?」
百目鬼は非常に嫉妬深いため、冗談でも、賢史に近づかせない。修二の時はそうだった。
百目鬼「矢田だな…。付き合うわけ無いだろ、矢田に対するカモフラージュだ」
賢史「ふーん、じゃあ俺が狙ってもいい?」
百目鬼「は?………」
賢史が、百目鬼の反応を見るようにニヤリと笑う。
賢史「なんだよ、ダメなのか?」
百目鬼「……お前、あんなのが趣味か?」
賢史「俺は、美味しそうなら見た目も性別も問わないぜ。今暇だろ?ほらほら、紹介しろよ」
賢史はバイだ。あまりこだわりがなく、どっちとも付き合ってたが、仕事柄会う時間が少なくて長続きしない。しかし、賢史がこだわりないって言っても、こんな年下に興味を示したのは初めてな気がする。
百目鬼「あいつに軽い気持ちで近づくな」
賢史「おろ?神、あの子のこと好きなのか?なら手は出せねぇな残念」
百目鬼「……違う…」
複雑な顔をした百目鬼が、賢史の腕を掴み、誰もいない廊下に出た。
賢史「じゃ、いいじゃん。俺がパートナーをそれなりに大切にしてるの知ってるだろ?最近出会いがなくてよ」
百目鬼は、誰も聞いてないのを確認してから、賢史の耳元で慎重に小声で言った。
百目鬼「賢史、あいつは…ッ、マキは…、〝修二〟の友達だ」
賢史「…」
まったく予想してなかったところの名前に、一瞬頭が真っ白になった賢史。百目鬼は、複雑に顔をゆがめていて、事態が複雑で百目鬼が苦しんでいるのが分かった。
賢史「………は?修二って、小日向修二?」
百目鬼「そうだ」
賢史「おいおい、なんで、そんなのがここに居るんだ(冗談じゃなく、マジに寝首狙われてるじゃんよ)」
百目鬼は、過去修二にひどい仕打ちをした。奏一を含む朱雀の四人が真実を知っており、残りの朱雀メンバーには、〝奏一の弟をリンチした〟と、いまだに恨まれている。
自業自得だし、百目鬼もそれを分かってる。
百目鬼「…酔って、手を出しちまった」
賢史「は!?お前が?酔った?お前、酒強いだろう」
百目鬼「……ちょっと複雑な理由がある、とにかく、歯型やらなんやら付けちまってて、家に帰せないから、跡が消えるまで置いてる」
賢史「お前、馬鹿だろ。どんだけ修二に嫌われたいんだよ」
百目鬼「………」
賢史「とにかく、詳しいのは後で聞くとして、とりあえず紹介しろよ。そんなのに居着かれてもお前困るだろ、俺が〝仲良く〟するからよ」
百目鬼「分かった…」
百目鬼は、少し心配だったが、賢史をマキの元に連れて行った。
百目鬼「おい、マキ」
マキ「え?」
名前を呼んだら、マキがビックリした顔で振り返った。
そして、ニコリと柔らかく微笑む。
マキ「何?百目鬼さん♪」
百目鬼「こいつ、俺の友達で刑事の賢史。お前のことが気に入ったんだと」
マキ「…」
マキは突然のことに瞳をパチパチと瞬いた。
百目鬼の隣に立つ、百目鬼と同じくらいの大柄な男が陽気に笑う。
賢史「はじめまして。マキちゃん。俺のことは賢史さんって呼んでな」
賢史が軽く挨拶すると、マキはへらっと笑って丁寧におじぎする。
マキ「初めまして、マキです」
賢史「ねぇ、仲良くなりたいからさ、お兄さんとデートしてよ」
マキ「…あは♪デートですか?」
賢史「そうそう2人っきりで、ゆっくりお話ししようよ」
百目鬼「…お前、いきなり連れ込むなよ」
賢史「ハハッ、いきなりなんて人を獣みたいに、ちゃんとマキちゃんからお許しが出てからじゃないと行かないよ」
挨拶もソコソコに早速連れ出そうとする賢史に、マキが作り笑いでジッとこっちの様子を見てる。
百目鬼「…おい、人のいるところでご飯だけにしとけよ」
賢史「ハハッ、はいはい。マキちゃん僕と喫茶店でお昼食べようよ。今暇だろ?神にも許可貰ったし、美味しいデザートもあるし」
百目鬼「たまには好きなの食ってこい」
マキ「…うん」
マキはニコっとキレイに愛想よく笑う。
百目鬼と賢史の見えてない背中側で、組んでる手を、爪が食い込むほど力一杯握り締めて…
マキの心は置き去りで、話しはトントン進んでいく。
目を細めてキレイに笑うマキの心の中は、百目鬼には見えないし、予想もつかない。
嘘くさい笑顔は、百目鬼を苛立たせる。
賢史はそんな2人に割って入った。
賢史「じゃあ、マキちゃん早速お昼しに行こうよ」
マキ「はい」
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