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番外編28ひと夜咲く純白の花の願い
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熱のせいもあるんだろう。
普段百目鬼さんの中で渦巻いていたものが、火山が噴火してマグマが流れ出るように後から後から溢れ出る。
これは、ずっと百目鬼さんの心の中に溜まっていたものだ。これが、イライラの正体。
百目鬼「俺が必死で整理したものを、お前が勝手に入ってきて荒らすんだよ!」
マキ「………」
百目鬼「お前は確かに人の気持ちを見る目がある。空気も読むし、相手を惹きつける。だがな、心が読めるわけじゃない、人の気持ちを全部知ることなんか出来ない、お前はなんでも見えてると思い込んでる」
修二『マキは全部見えてると思い込んでる』
百目鬼「お前が見てるものは、一部にすぎない。俺が何を考えて雪哉をどう思ってるかなんてわかりゃしない」
全部見えるなんて思ってない。
第三者だから、本人の見失ってるものや求めてるものが分かるだけ、冷静になれない本人には見落としがちなことや、目をそらしているものが見える。
マキ「……、確かに、心の中が読めるわけじゃない…。でも、間違ってるとも思わない。百目鬼さんは、修二のことを凄く後悔して、大切で、変わろうと頑張ってる。普段あんなに優しいんだから、絶対好きな人を大切にできる」
百目鬼「…てめぇは…まだ…」
凄い形相で睨んでくる百目鬼さんは、僕には傷を負ったライオンにしか見えないし、そのライオンは、好きな人を大切にしたい。そして何より、愛されたいと吠えているようにしか見えない。
マキ「暴走壁が治ってないなら治せばいい。僕が協力してあげるよ」
百目鬼「!!、てめぇの世話になってたまるかよ」
マキ「だったら、先生を紹介するよ。先生ならなんとかしてくれる」
百目鬼「紹介もいらねぇ。だから、お前とはもう関わりたくねぇんだよ」
マキと関わると、感情がグラつく。
修二のこともあれこれ思い出す。
そして、隅っこに追いやったはずの凶暴な自分がまた、檻を破ろうと暴れる。
ヘラヘラ笑うマキを泣かして本音を引きずり出したいと思ってしまう。
百目鬼「お前は汚いんだよ」
マキ「…」
マキには、静かに見守ることしかできない。
百目鬼にどんな風に言われても、それは全て予想通りで。胸は痛んでも驚くことはない。
むしろ、本音が聞けて、それが予想通りで、〝だろうね〟と冷めた自分が納得を繰り返す。
関わりたくないと言われても…
汚いと言われても…
百目鬼「自分のことは、なんもかんも隠してへらへらしやがって、勝手に入ってきて勝手に出て行く。薬使って人を引っ掻き回して絶望を与えて、自分はさっさと忘れる。人をおちょくるのもいい加減にしろよ!」
忘れたことなど一度もない…
マキ「おちょくってなんか無い、僕は百目鬼さんに知って欲しかったんだ、百目鬼さんが本当に相手に心を開いたら、優しく出来るって。百目鬼さんの暴走は心の問題だ。だから、知って欲しかった。百目鬼さんがどんなに愛情深い人か…、本当はどんなに優しい人か…、だから好きな人に素直になってその人を信じさえできれば、両思いになれば絶対相手を大切に出来るよ」
一度証明された。
惚れ薬で起こったあの日の出来事は、幻じゃない。
しかし、どんなに幸せが目の前だと教えてあげても、百目鬼は混乱の迷路から出てこれず、さらに激しく吠える。
百目鬼「お前がそれを言うんじゃねぇよ!」
マキ「!」
百目鬼「あんな人間いないんだよ!お前が見せた幻のように、なんもかんも相手に預けて晒して俺を好きだと言う、全部を預けて包むような奴なんかいないんだよ!」
マキ「いるよ!」
いる。
時間はかかっても絶対いる。
修二とむつと華南達は、日々変化して、どんどん理想に近づく。
愛情は育てるものだ。
百目鬼さんなら育てられる。それなのに一歩を踏み出そうとしてないだけだ。
絶対に何とかなる、僕なら、百目鬼さんに愛されてないってそんなこと思う暇ないほど毎日毎晩好きだと示す。僕だったら…
百目鬼「だからお前が言うんじょねぇよ!1番の嘘つきはお前だろうが!お前は心の中を人に晒したことなんかねぇだろ!」
マキ「…」
百目鬼「俺は、あんな事出来ねぇ、なんもかんも晒して、心の中見せて、拒否られたら終わりだろうが。お前も自分を守るために嘘で固めてるだろうが、自分が出来もしないことを人にやらせんじゃねぇよ!」
マキ「…」
僕には…できない…
百目鬼「お前はそうやって、いつも高いところから、からかって遊んでるんだ」
高いところにいるんじゃない…
僕は、いつも…
憧れて見上げてる…
マキ「…からかってない…」
百目鬼「はっ、どうだか!…どうした、お得意のニヤついた顔が崩れてるぜ」
マキ「…からかってなんかない…」
百目鬼「…だったら、人に言えないような事の一つでも言ってみろよ。隠してる恥ずかしい事でも、人に知られたくない秘密の一つでも…」
マキ「…」
黙り込んだマキは、取り乱す事もなく、少し視線を下げただけ…。
取り乱す事を期待した百目鬼は苛立ち、怒りに震える。
暴くだけ暴いて、理想の幻まで見せて、そしてマキはヘラヘラ嘘ばかり…
百目鬼「言えねぇだろうが!!」
マキ「………………………………」
言えないことも、
言いたくないことも…
呑み込んだ言葉は沢山ある…
僕は…
ジュピター色の瞳が、悲しく揺れて、長いまつ毛が瞬いた。
過去は、何一つ変えられない。
早過ぎた経験も、100人ぎりしていることも、毎日シたいくらい淫乱な体も…
今から言うことで、訪れる結末はもう変えられない、でも、言うことで、彼を迷路から出してあげたい、その一歩の踏み台になればいい…
ジュピター色の瞳は悲しく揺れて…。
マキはその瞳を百目鬼に向け、
淡く切なく…微笑んだ。
マキ「僕、百目鬼さんのことが、好き…」
夜の闇に花が咲き誇る…
花開いた瞬間から始まるカウントダウン
ひと夜咲くことしかできなくても…
花は、咲くことを選んだ……
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