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番外編29ひと夜咲く純白の花の願い
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願いは…
一つだけ…
思いを寄せるその人の
すべてで…
愛されたい……………………
百目鬼「は?……………………」
唖然とする百目鬼に、ジュピター色の瞳を真っ直ぐ向けて、マキは静かに微笑む。その表情は、今まで見た事もない淡く儚い微笑み。
マキ「百目鬼さんのことが、好きだよ」
言葉は真っ直ぐに。
驚く百目鬼の瞳を見つめて…
見つめられた百目鬼は、溢れ出したマグマが一瞬で逆流するような衝撃と混乱にみるみる険しい顔に歪んでいく。
百目鬼「……嘘だ…」
マキは静かに瞳を瞬いた。
何もかも、想定内。
否定も罵倒も覚悟の上。
マキは静かに答える。
マキ「嘘じゃないよ、僕は、百目鬼さんのことが好きだよ」
百目鬼が睨んでも、マキの静かで悲しげで儚ない微笑みは変わらない。
百目鬼は、困惑し険しい表情は益々濃くなる。
百目鬼「俺がそれを信じると思ってるのか?」
マキ「ふふ、信じるとは思ってないよ。ずっど、百目鬼さんが好きだった。ただそれだけ…」
ジュピター色の瞳が、揺れもせず、真っ直ぐ百目鬼を見つめる。今までに見たことない悲しい色をして…
百目鬼「お前の今までの態度のどこが俺を好きだって言うんだ!」
マキ「…好きだから、幸せになってもらいたかったんだ」
百目鬼「は?幸せって…、雪哉とくっつけようとしたことか?お前は好きな奴を他の奴とくっつけるのか?」
一瞬ジュピター色の瞳が揺れて、淡い微笑みを深めて答える。
マキ「…、そうだよ」
百目鬼「お前、おかしいんじゃないのか?好きなら、普通頑張るだろ、頑張って振り向かせようとして、他の奴とくっつけようなんて考える訳ない」
マキ「…叶うなら…、そうするよ。でも、叶わないから…。せめて、好きな人が幸せになった姿が見たいんだ」
何もかも諦めた瞳。
幼い子が強がってるように、頼りない微笑みに胸が痛む。
百目鬼「そんなのおかしいだろうが、普通は他の奴に渡したくなくて嫉妬したりするだろ、そんなの好きじゃないんじゃないか?お前のそれは、好きとかじゃないだろ」
マキの考え方を理解できない百目鬼が、マキの考えを否定する。
だが、マキからしたら、百目鬼の言動にもおかしな矛盾を感じていた。
マキ「…百目鬼さん、世の中〝普通〟が全てじゃないんだよ。それにさっき自分で言ったじゃない。〝俺の心は俺のものだ〟って、僕が百目鬼さんを好きな気持ちは、僕の心の中にある。それは、僕のもので、僕にとっての全てで、事実だ」
百目鬼「…それは本当に恋愛の好きなのか?そんな簡単に諦めて、それで好きだと言えるのか?」
百目鬼さん、おかしな事を言ってるって自分で気づいてるのかな?…。
マキ「…好きだよ。諦められないからまだ引きずってる。でも…、百目鬼さんは、僕のこと嫌いでしょ?」
百目鬼「…」
マキ「…僕といるといつもイライラしてる。百目鬼さんは僕みたいなタイプは嫌いだ、汚いと思ってる。百目鬼さんは、修二や雪哉さんみたいな癒し系で凛としてる人が好きでしょ?…それに…」
僕が百目鬼さんの片思いにトドメを刺した。
マキ「修二とむつと華南をくっつけたのは僕だ」
百目鬼「…」
マキ「残念ながら、嫌われる要素しか持ち合わせてない…。好かれようとしても、流石に無理じゃない?」
百目鬼「…」
百目鬼は顔を歪ませ、答えない。
マキ「…それとも、頑張ったら可能性ある?」
百目鬼「………」
百目鬼さんの眉間にシワが寄り苦虫を噛み潰したような顔をする。
百目鬼さんが今何を考えているのか分からない。なぜ、『ありえない』と引導を渡さないのか…
ジッと瞳を見つめると、まるで視線を逸らしたら負けだとように睨んでくる。
それなのに…なぜか苦しそう…で…。
なんて言おうか迷ってるの?僕のことを気にしてくれてるの?
普段口が悪くても、こういう時は言葉を選んでる。
こんなに優しい…
でも、ここはズバッと斬ってくれないと、せっかく本音を言った甲斐がない…
百目鬼さんも本音できてくれないと…
マキ「…僕は、百目鬼さんのことが好きだから、駄目だって分かってたけど、少しだけそばに居たくて、ここに居座ったんだよ」
ジュピター色の瞳で真っ直ぐ見つめ、百目鬼にそっと近ずく…
百目鬼「………チッ!」
百目鬼は苦々しく舌打ちしてベッドから飛び出し突然寝室から出て行った。
え?
マキは慌てて百目鬼を追いかける。
なんと百目鬼は、フラつきながらパジャマのまま玄関から出て行こうとしていた。
マキ「待って百目鬼さん!!」
百目鬼が玄関のドアノブに手をかけたところでマキがドアと百目鬼の間に無理やり割って入る。
マキ「どこ行くの!?百目鬼さんは病気なんだよ!」
ドアの前に立ちはだかり、百目鬼の進路を塞いだ。
百目鬼「どけ!」
マキ「駄目、どかない!寝室へ戻って!一緒に居たくないなら僕が出て行く!」
百目鬼「駄目だ!お前はここに居ろ!」
マキ「は?何言ってんの?インフルエンザの人間が外出ていいわけないでしょ!」
百目鬼「ぐっ…」
マキ「寝室へ戻って横になって、ココは百目鬼さんの家なんだから、僕が消えるから」
百目鬼「ッ簡単に言いやがって!やっぱり、好きなんて嘘なんじゃないか!」
激情に渦巻く感情が、百目鬼の中でぐちゃぐちゃになっていて、まるで駄々っ子の子供のようだ、言ってる事が支離滅裂で、埒があかない。百目鬼さんこそ本音を言ってくれないと百目鬼さんがどうしたいかわからない、百目鬼さんの言う事ならなんだって聞くのに…
マキは、静かに息を吐いた。
マキ「…ハァ〜、百目鬼さん。百目鬼さんが先にが出て行こうとしたんじゃない、僕と一緒に居たくないんでしょう?」
百目鬼「…」
マキ「…どうしてそこで黙るの?百目鬼さんが全部見せろっていうから、ずっと隠しておくつもりだったけど告白したんだよ。僕は嘘なんかついてないし、さっき言った通り、僕は身の程をわきまえてるつもりだよ。僕は百目鬼さんが好きだけど、百目鬼さんは僕が嫌いでしょ?」
百目鬼「…」
マキ「…ねぇ、そこは〝嫌いだ、どっか行け〟って言うところだよ?どうして黙るの?」
百目鬼「…」
マキ「…ねぇ、百目鬼さん。僕は百目鬼さんが好きだよ、百目鬼さんが望む事は何でも聞くよ。今は、誤魔化しも嘘も何もしない、だから、百目鬼さんも本音をぶつけてくれていいんだよ。僕はどんな言葉も受け入れる。百目鬼さんの事、好きだから…」
小さい子をあやすように、そっと頬に触れて、覗き込むように逸らされた百目鬼の瞳を伺う。
触れた頬が熱い…、熱がぶり返してるのかも…、早く布団に戻さなきゃ。
労わるように愛しい猛獣の瞳を見つめた。
そのジュピター色の瞳が百目鬼を苦しめる。
百目鬼「ッ!やめろ!その目で俺を見るな!その目を見てるとおかしくなる!何度も何度も夢にまで現れて俺を引っ掻き回しやがって、いつも嘘ばかりだ!お前が悪い、お前が惚れ薬なんて得体の知れない物飲ませるから、俺はおかしくなったんだ!お前を見てると全部めちゃくちゃにしたくなるんだよ!壊したくなるんだよ!ぐっゴホゴホ!ゲホッ!」
咳き込んで、その場でうずくまってしまった。
マキ「大丈夫?百目鬼さん!」
夢?
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