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番外編38ひと夜咲く純白の花の願い
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《そっちは順調?》
矢田の帰った公園で、ベンチに残り少し考え事をしていたら、修二からメールが来た。
僕はすぐに返信する。
(全然落ちない。手応えが無いわけじゃないんだけど…)
《修二:そっか、まぁ、じっくり行きなよ》
…修二にそう言われると困るなぁ、なんせ12年思い続けてた強者だ。12年後って、百目鬼さんだいぶ老けるなぁ…、想像して可笑しくなった。
…修二にこれ以上甘えられない。
(手強いのってなかなかないから萌える♪)
笑い飛ばして買い物袋を持って百目鬼事務所に帰ると、事務所のドアが開いていて、そこにマスクをした大柄の男性が立ってた。
事務所の中のマスクをした百目鬼さんと話しをしている。
あれは…賢史さん!
賢史さんは、すぐに階段下の僕に気がついて、目つきが鋭くなった。
こないだの探るような目じゃない、明らかな敵意を感じる。
賢史「あっ、マキちゃんじゃん」
白々しく、陽気な声を出す彼は、目が笑って無いどころか瞳の奥に怒りの炎すら見える。矢田さん、もしかして賢史さんに調べた事話したのかも…
賢史「こないだより艶っぽく綺麗になったんじゃない?、また俺とデートしてくれる?」
賢史さんの瞳は〝面貸せ!〟と言っている。
ついて行ったら、何されるか分からない。そんな危機感すら感じるほどだ。
マキ「あは♪綺麗だなんて、こないだと一緒ですよ。風邪でも引かれたんですか?あっ、もしかして矢田さんのインフルエンザ移っちゃいました?」
賢史「ただの予防だよ。なぁ、俺とデートしようぜ」
スルーしたのに、逃すつもりは無いらしい。
マキ「僕、夕飯の支度あるから」
へらっと笑って買い物袋を見せる。
すると百目鬼がすかさず突っ込んできた。
百目鬼「お前料理できないだろ」
マキ「…」
うふふ、百目鬼さんの正直者♪
酷いなぁ、折角熱烈に告白したのに、まだ賢史さんを勧めるつもりなのか、流石に傷ついちゃう♪
百目鬼さんの突っ込みで、勝ったなって顔した賢史さんが階段を降りてきて僕の肩を抱いた。
賢史「百目鬼の看病で疲れてるだろ?お兄さんがデザート奢ってやるよ」
賢史さんが〝うだうだ言ってねぇーで顔貸せ〟って眉を顰める。僕はニッコリと微笑んで笑顔で拒否する。
すると百目鬼さんが、大きく溜息ついて僕に言った。
百目鬼「おい、へらへら笑うんじゃねぇよ」
マキ「…」
百目鬼「…。賢史、お前断られてるの分かってんだから、中年オヤジみたいにまとわりつくなよ」
あれ?…助け舟出してくれた。
僕がキョトンと階段上の百目鬼さんを見上げる。百目鬼さんの表情はマスクで隠れて分からない。
賢史さんは、「はいはい」って言いながら手が離れる瞬間僕にしか聞こえない声で囁いた。
賢史『探し物が欲しいなら、こっそり公園に来い』
探し物?
キーホルダーのこと?
もしかして、矢田さんが賢史さんにさっきのメモの内容を伝えてた?
だとすると、賢史さん、百目鬼さんになんか言ってる?
一瞬不安が過ぎったけど、もし、賢史さんから良からぬ事を吹き込まれてたら、百目鬼さんは僕に助け舟を出さなかったんじゃないかな?
賢史さんの誘惑を振り切るように、百目鬼さんの元に駆け寄り、逃げた僕に殺気のこもった意味深な目を向けた賢史さんは、百目鬼事務所を後にした。
買い物袋の中身をしまい、僕は買ってきたフルーツの盛り合わせを皿に盛り付ける。
昨日ケーキを食べれなかった百目鬼さんに、甘いフルーツのおやつを食べさせてあげようと思って。
支度をしてたら、百目鬼さんが三階に上がってきた。
仕事はお終いにすると言って、リビングのソファーにどっかり座る。
僕は、フルーツの盛り合わせとインスタントコーヒーを出して百目鬼さんの隣に座った。百目鬼さんからは、久しぶりにタバコの匂いがした。
マキ「おやつにどうぞ」
百目鬼「…ああ、ありがとう」
マキ「食べさせてあげようか?」
百目鬼「いらん」
フルーツを見て緩んだ表情が一瞬で眉間にシワを寄せ、僕を睨む。
百目鬼さんは、サッサとフルーツを食べて、僕から離れてスーツの上着を脱ぎ始めた。
もう出かける予定もないから、ラフな部屋着に着替えた百目鬼さんは、僕から離れた場所に座り、首をコキコキ鳴らした。
ああ、寝てばっかだったし、肩凝ってるんだ。
マキ「…揉んであげるよ」
再び百目鬼さんに近より、背後から肩を掴む、百目鬼さんは「いや、いい!」って抵抗したけど、百目鬼さんの肩は凄く凝ってたので、ツボを押さえただけで「おふッ」と百目鬼さんから変な声が出た。
マキ「お客さ〜ん、凝ってます…よッ!」
ワザとツボをギュッとすると百目鬼さんは仰け反ってタップしてきた。
百目鬼「イテテッ!おい!」
マキ「あは♪僕はちょっと押してるだけ、これが痛いなら、懲りすぎてるの、大人しくしてなよ。僕、リンパマッサージの資格持ってるから♪」
百目鬼「いやっ、いいよ、お前俺の世話焼いてばっかで少し休めよ」
マキ「ハハッ、なら、揉まれててよ、百目鬼さんに尽くしてる方がよっぽど休憩になるよ♪」
百目鬼「ッ…」
あら、固まっちゃった。ウケる。
まぁいいや、抵抗ない方がマッサージしやすいし♪
百目鬼さんは、僕が好意を示すたびに、何らか反応する。これって、僕のこと気にしてるって事だよね?それとも、修二にたいする罪悪感かな?
しばらく黙り込んだ百目鬼さんの肩を丁寧にマッサージして、タバコの匂いのする大きな背中を眺めていたら、ドキドキしてきた。
僕にマッサージされて、気持ちよさそうな百目鬼さんを見てると、別の意味で気持ちよくしてあげたくなる。
僕は、思わず後ろから百目鬼さんを抱きしめた。
マキ「別のマッサージもする?」
耳元で、艶っぽく囁く。
しかし、それは、拒絶された。
百目鬼「ッやめろ!」
僕の腕を振りほどいて、立ち上がって離れた百目鬼さんは、苛立った目で僕を見た。
百目鬼「いい加減にしろ、迫ってくるな」
…。
マキ「ごめんごめん、百目鬼さんの背中って大きいからつい」
僕がへらっと笑うと、百目鬼さんの表情が一層厳しくなった。
今朝までのどこか甘い空気は、完全に消えてた。百目鬼さんからは、苛立ちの色が見えてチクリと嫌な予感がする。
百目鬼「やっぱり、仕返しの方法は変えろ」
マキ「…怒ったの?」
百目鬼「そうじゃなくて…、やっぱ、よくねぇだろ、お前諦めるどころか、迫ってくるし、勘違いしてるだろ」
…勘違いなんかしてない。
って言った所で、浮かれてたのは事実だ。
急速に冷えるこの心が、僕に現実を突きつける。
マキ「ごめんなさい迷惑だった?」
百目鬼「迷惑だ」
冷たい瞳は、僕が告白する前の苛立った瞳。まるで、告白から全部を否定するように、百目鬼さんは僕にはっきりと、言葉を投げつけてきた。
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