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番外編44ひと夜咲く純白の花の願い
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扉が開いた…。
部屋に足早に駆け込んだ足音がベッドの前で止まり、マキの姿に息を呑む。
すぐに拘束と目隠しを外して、全裸のマキにうすい布団を被せて肌を隠し、マキの肩を揺らした。
「マキ……マキ!」
心配する声が響いて、マキの意識が呼び戻される。
そして…重く熱い瞼を…開けた。
熱に潤む瞳が、目の前のスーツ姿の人物を写す。その瞬間ビビッと電流が走った。
何もかもが上書きされる。
心は囚われ。惚れ薬という強力な薬に脳を支配された……
マキ「……会いたかった…、桜木さん」
潤む瞳は、目の前の桜木を写して焦がれて揺れる。
マキの様子のおかしさに、桜木は携帯を取り出した。
桜木「今、先生に…、マキ一体何が…わっ!」
桜木の言葉を遮り、マキは桜木のネクタイを引っ張ってベッドに引き倒した。
携帯が床にこぼれおち、マキは桜木にのし掛かる。
桜木「ちょっ!マキ!」
マキ「お願い、拒まないで」
桜木に馬乗りになったマキは、飢えた瞳で見下ろし、ペロリとした舐めずりする。
マキ「大丈夫、ちょっと失敗しちゃっただけ。終わったことは気にしないで。僕は今は媚薬が効いて火照ってるの♪ふふッ♪僕に桜木を食べさせて♪」
その強力な色香と妖艶な微笑みは、すでに理性の無い美しい獣。
獲物に最高の快楽を与え、満たされるまで相手を魅了する。
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………………………………。
熱が引いて、時間がだいぶたったことが分かった。
白い天井…。
そこを唖然と眺めた…。
ことが終わり、汚れたシーツ上に放心状態で天井を見つめる。
頭の中は、さっきまでの淫らな自分の残像でいっぱいで、ゆっくりと体が沈み込みような感覚に襲われていた。
これが…百目鬼さんが惚れ薬を僕に飲まされて味わった感情……。
桜木「マキ、お風呂お湯溜まったよ」
裸の桜木か、お風呂場から顔を出し、ベッドで放心しているマキに近づく。
マキ「…」
桜木「…マキ」
桜木が優しく声をかけると、マキは何かを呑み込みように瞼を閉じて、桜木を見た。
マキ「…桜木さん、襲っちゃってごめんね」
桜木「役得だよ、薬は抜けた?体は平気?」
頷くと。優しく微笑む桜木に救われた気がして、マキは甘えるような声を出す。
マキ「お風呂、僕が先でもいい?」
桜木「いいよ、ゆっくり入っといで」
桜木に見送られて、お風呂場に移動する。
暖かいシャワーを頭から浴びて、流れ落ちるお湯の雫を眺める。
ザーッと流れるシャワーに混じり、頬を伝って流れ落ちる雫に、唇を噛み締めた。
やっぱり…、消えなかったよ…
もう、会うこともないとつぶやいて、つぶやいたところで何が変わるわけでもないけど、ただ、心の中で、つぶやく。
惚れ薬で桜木さんを好きになったけど、今は消えて無くなった…
同時に、百目鬼さんの温もりと感触も無くなってしまったけど…。
残ったものがある。
百目鬼神というライオンの着ぐるみを着たティーカッププードルを可愛いと思う気持ち…、焦がれる気持ち…。
この軋む心の中に切ない痛みと共に残った…
けれど…
この恋は消える…
消さなくてはならない…
最後に…この恋が偽物じゃないと分かって良かった…。
嬉しい……
冷え切った体を湯船でゆっくり温めて出ると、桜木がバスローブ姿で洗面にいて、マキの濡れた服を乾かしていてくれた。
桜木「もうすぐだいたい乾くから。マキ、ゆっくり温まった?」
マキ「うん」
マキは、裸にバスタオルを首にかけただけで、髪からはポタポタと雫が垂れている。
桜木「マキ、先生に連絡しなくて平気?」
その質問にニコリと無言の笑顔で返して、シャワーを勧めた。
マキ「桜木さんも、入ってきて」
桜木「……うん。ご飯まだだろ?車で美味しいお店に案内するよ」
マキ「ありがとう桜木さん」
桜木「…マキ、頭ちゃんと乾かすんだよ」
マキ「はーい♪」
桜木さんは心配そうに困った顔をしたけど、何も聞かないでいてくれてる。
桜木さんは、先生に秘密にしていてもらうように頼むのは、初めてのことじゃない。桜木さんは、優しくて察しのいい大人の男だから、僕を尊重してくれる。だからここまで続いた。今日のことも、今まで同様に秘密にしてくれる。
洋服は湿ってはいるけど、なんとか着れるようになるまで乾かした。
荷物をカバンに仕舞っていたら、携帯が点滅していることに気がついた。
節電で真っ黒な画面を立ち上げると、お知らせの画面を見て驚いた。
マキ「……わお……不在着信23件…」
着信履歴を見て相手を確認すると、相手は、メイちゃん。そして、泉。
ズラリと縦に名前が並び、画面に収まらずまだまだ続いている。
…あれれ?なんでこの2人から掛かってきてるの?なんだか説教の匂いがプンプンする…。うぅ…気まずい。23回とかかけ過ぎじゃない?
さらに下に続いく名前を確認するためにスクロールすると、そこには、どこまでも同じ名前が並んでいた。
え??
………百目鬼さん…。
百目鬼さん…百目鬼さん…百目鬼さん…。
百目鬼さん…百目鬼さ……まだまだ続いてる。
なんで?
なんで百目鬼さんから?
気がつけば、百目鬼さんの事務所を飛び出してから、3時間以上経っていて、夜の7時を回っていた。
もしかして…、僕を探してる?
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