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番外編58ひと夜咲く純白の花の願い
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マキ「ん…」
カーテンから漏れる光の眩しさに、眉を顰めたマキは、目を覚ました。
ぼんやりする頭で目を開けると、そこには誰もいない…
ベッドの左側の空いたスペース。
温もりの無い冷えたシーツ。
そっと確かめるように手を伸ばす。
肌触りの良いシーツはヒンヤリとしていて、思わずフッと笑いが漏れる。
複雑な感情は内側でぐるぐるしているが、頭で言葉になったのはたった一言。
やっぱりね……
マキ「ふふ…」
思い出したように笑って、ベッド中で背伸びした。
マキ「んーーッ」
自分の中のスイッチをカチッとONにして、ベッドの中で感じた気持ちに蓋をした。
ベッドから立ち上がると、ズキっと鈍い痛みを感じた。
一体、何度シたか覚えてない。
太ももにドロッとした感触がして下半身に目をやりると、昨日の痕跡があちこちに残っていた。
マキは、小さくため息ついてシャワーに入る。
体を洗いながら、あちこちに今までの跡と、昨日の跡が刻まれている、指先でそっとなぞり、一週間くらいしたら消えるんだろうと何となく考える。
頭を洗いながら、ふと考えとしまうのは慣れない豪快な指の感触。泡立つシャンプーとその感触をシャワーで流す。
全部綺麗にしてお風呂から上がり、ふわふわのタオルで体を拭く、拭きながら、ふと脳裏をよぎるのは、眉間にシワを寄せた強面の顔が馬鹿みたいに面倒を見てくれたこと…
ポタポタと髪から垂れる水滴。
〝ちゃんと乾かせ〟と怒鳴り声が聞こえる。
柔らかいタオルで髪を拭いて、全裸のまま寝室に戻った。
部屋の隅に置いてある自分の荷物から、洋服を手に取る。ニットのワンピースやらミニスカーとやら、摘んでは床に置く。
手に取ったのは、短パンと長袖の洋服。
服の山の中で唯一のメンズ服だった。
着替えを済ませて、荷物を持ってリビングに出ると、良い匂いがする事に気がついた。
リビングのテーブルに、スープとサラダとオムライスにラップを被せて置いてあった。
それを見た瞬間マキは吹き出した。
マキ「ブハッ、ふふっ…ウケる…」
オムライスにはケチャップで『チンしろ』と書いてあった。
ほんと…百目鬼さんて飽きさせない人なぁ…、こんな面白い人今まで出会った事がない。
マキは、オムライスとスープをレンジで温め、椅子に座って手を合わせる。
マキ「いただきます」
家主の居ないところで一人での食事は、ここに来て初めてで、シンと静まり返った部屋は、何だか寒く感じた。
百目鬼さんのご飯、おいしい……
豪華なご飯を全て平らげ、食器をシンクにおいて全部綺麗に洗う。
台所にあった空の買い物袋を一つ取り、レディースの服を詰め込む。
マキ「あっ…」
大事な事を思い出し、慌てて寝室に戻り、汚れたシーツを剥ぎ取って洗濯機に放り込んで洗い、新しいシーツをセットした。
時計を見ると、12時になるところで、ハッとする。
あっ、そろそろ百目鬼さんに昼ご飯食べさせなきゃ。
今までの習慣で思いつき、足早に事務所に下りていく、扉をノックして中を覗くと、そこには、矢田しか居なかった。
マキ「こんにちは、矢田さん一人?百目鬼さんは?」
僕の姿を見た途端、矢田の表情が曇った。
おー怖っ。
矢田「百目鬼さんは仕事に出てるっす。なんの用っすか?」
不機嫌な低い声。
どうやら矢田さんには完全に嫌われてるようだ。
マキ「あは♪そろそろお昼だなぁーって思って」
百目鬼さん、声かけないとお昼食べないから…。
矢田「あんた、いつまで居るつもりなんすか?」
マキ「…もう帰るよ♪」
矢田「…帰るなら、百目鬼さんに送るように言われてるんで」
マキ「あはは。まだ昼だよ?僕、電車で帰れるよ」
ヘラヘラ笑うと矢田は不機嫌さが増した。
矢田「あんたは、真っ直ぐ帰るとは思えないっす。それに俺は百目鬼さんにあんたを送るように言われたんす、俺の仕事だ」
マキ「…、じゃあ、送ってもらおうかな♪」
僕は荷物を取りに行こうとして、出入り口に向かうと、矢田さんに引き止められた。
振り向くと、矢田さんは数枚の写真を手に握る締め、今までで一番嫌悪感の強い睨みを向けてきた。
矢田「マキさん。もう百目鬼さんには近づかないでください」
マキ「…」
矢田「あんたがどんな人間か、よく分かったっす、言い逃れはできないっすよ」
そう言って握りしめていた写真を僕に投げつけてきた。
バラッと散らばった数枚の写真。
足元に散らばったのを一枚拾う。
そこには…
車に乗った僕と、
桜木さんが、
ラブホテルから出てくる写真だった。
…。
目の前で起こってる状況を冷めた目で見る。
こんな事、意味ない…
百目鬼さんはもう知ってる…
矢田「あんたはやっぱり汚い人間だ!二度と百目鬼さんに近ずくな!」
ぶるぶる震えながら虚勢を張る矢田は、立派な忠犬だ。
なんてお利口なんだ…。
でも…、こんな事意味はない
こんなもの見ても、百目鬼さんには何の意味もないものだ。
ふふ…ウケる…
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