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番外編59ひと夜咲く純白の花の願い
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矢田「やっぱり、あんたのことは信用できないっす!百目鬼さんがどんなに心配して探し回ってたか。百目鬼さんのこと、す、好きとか言っといて、あんたはやっぱり人の気持ちをゲームみたいに遊んでホ…、…ホ、…ホ、ホテル行くような…、…お、男同士とか意味わかんないっす!」
当然の言葉だ。
事実を知らない人間なら、そう感じるのが正常な反応だ。
むしろ僕は、矢田さんの百目鬼に対する絶対的忠誠心と、主人を思う強さに尊敬の念すら感じる。
矢田「ど、百目鬼さんはお嫁さん貰うんす!お、男同士とか、変な道に引きずり込むのはやめて下さい!!」
なんておバカで真っ直ぐで、お利口なんだ。
マキ「…矢田さん、ごめんね♪もう消えるから、荷物を取ってきていい?」
矢田「また、逃げるつもりっすか!」
マキ「ハハッ♪逃げないよ、カバンと財布と携帯♪今持ってくるだけ、心配ならついて来れば?」
へらっと笑って言うと、矢田さんは眉間にシワを寄せて、階段で待ってると言った。
僕は逃げるつもりはない。
矢田さんは僕を送るのが仕事だと思ってるんだから仕方ない。
3階の部屋に置いてあったカバンと服の入った袋を取って下に降りようとしたら、矢田さんが誰かと喋っていた。
矢田「…はい、…はい。わかりやした百目鬼さん」
百目鬼さんが帰ってきたのかと思ってドキッと冷や汗かいたけど、パタンと小さいものを閉じる音がして携帯だと気付いた。
あっ、なんだ電話か…。
ん?矢田さん事務所の中に戻ってく…。
事務所の前まで戻ってきた僕がドアを開けると、中から猫のミケが出てきて足元にすり寄ってきた。
マキ「おはようミケ」
ミケは人懐っこくニャーと鳴く、これはご飯の催促かな、ゴロゴロ媚びるように足の周りを回りながら体を擦り付けてきた。
ミケは食いしん坊で、百目鬼さんが餌やおやつの量に気を使ってた。だから無闇に餌は与えられない。
マキ「ごめんねミケ、お前にご飯やったら百目鬼さんに怒られちゃうんだ」
ミケはまた頭を擦り付けてニャーと鳴く。
分かってないんだと苦笑いして頭を撫でてやる、すると矢田がマキの前に戻ってきた。
矢田「百目鬼さんもう少しかかるみたいだから、忘れないうちにコレを渡してほしいって」
矢田さんが少し厚めの茶封筒を僕の前に差し出した。
マキ「百目鬼さんが?」
何だろうと思い、茶封筒を受け取ると、手紙にしては少し重いし量があるように感じた。
マキ「何かな…」
封はして無くて、折った場所にクリップが止まっていただけなので、その場で取って中身を見ようとした。
ーカサッ…
織り込んであるところを持ち上げると、隙間から中身がチラリと見える。
見えた瞬間…目を疑った。
マキ「……ど…めき…さんが…僕に?」
嘘だ…
矢田「はい」
矢田のハッキリした口調がやけに耳に響いた。
目の前の現実に
嫌な痺れが全身に走って…
世界が凍った。
マキ「…………………………これは…何?」
目の前に見えてるものを信じたくない。
コレを肯定したら、自分が自分でなくなってしまうような恐怖すら感じる。
封筒の中身を取り出す気にはなれず、むしろ触っていたくもない。
矢田に質問すると、彼はムスッとした様子の低い声で答えた。
矢田「百目鬼さんがマキさんに〝お支払い〟する分だと言ってたっす」
(パキンッ……………)
…どんなことを言われても、されても。
守ってきたもの…。何事も高望みせず、最悪の事態を常に考えることで、守ってきたもの。
そこに…、大きなヒビが入った。
どうして?
ただ…
好きだっただけなのに…
そばにいたいと思ったことが…
いけなかったの?
こんなことするなら
どうして昨日嫌いだと言ってくれなかったの?
かわいい?
嘘つき…
だったら嫌いの方が良かった…
否定した考えが肯定されて、すべての熱が奪われた。
今までのものすべて……
瞳が真っ黒に染まって、ヘラヘラする笑顔すら消えた。
マキ「…………………………そう…」
直前まで電話していたのだから、矢田の言ってることはそのままの意味なのだろう。
だけど信じたくないと言う感情が目の前の事実を否定する。
だけど…
〝マキ〟と書いてある字は、百目鬼の字。
その茶封筒の中身は…
お金だった…………。
〝支払い〟…、これは僕を一晩買った料金ってこと?
百目鬼さん…
ねぇ…、僕は…、
あなたにとってそうゆう価値しか無いってこと?
ううん、価値が無いってこと?
〝迷惑〟の本当の意味は…
僕みたいな体売ってるやつにってこと?
答えて百目鬼さん…
僕は…あなたにとって…、
売り専のままってこと?
酔って〝かわいい〟と言ってしまった
あなたの出した答えは…
嫌いに戻るってこと?
何もかも消して…
最初に…戻るって…
僕らの今までの時間
全部消してしまうことが…、
ボクのソンザイをケスことが…
百目鬼さんの出した答えなんだね………
……………………。
……………………。
…ワカッタ…。
でも…
これが本当なら…
ヒドスギル…………………な…
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