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番外編64ひと夜咲く純白の花の願い
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マキ『ねぇ、お金をしまって』
マキ『あれは僕になんでしょ?』
誤解だ!
あの茶封筒はマキが事務所を手伝ったり、依頼を取ってきた報酬だ、ちゃんと明細も入ってた!あいつ開けなかったんだ!
ショックを受けて開けなかったんだ。
もう一度マキの携帯に電話するが、やはり『この番号は使われていません』と電子的音声が繰り返す。
携帯を解約したのか…。俺との連絡を断つため?
百目鬼はすぐに車に乗り込み、マキの帰った先生宅へと車を走らせた。
車の中で、この10日間の出来ごとを思い返す。この短い期間で、マキに対するイメージがガラリと変わった。
俺を好きだと言ったマキ。
だけど態度や言動はその反対だったり、好きだと言ったのにあっさり帰ると言ったり、好きだと言うくせに、他の男を勧めたり…
ずっと疑問だった…
何故そんなチグハグなのか…
賢史『お前、言ってることとやってることがチグハグだぜ』
ああ、それは俺も同じか…
マキからしたら、俺は付き合わないだとか気持ちに応えないと言ってるくせに、引き止めるしやることはヤッてるし…乱暴だし…
この俺の何処に惚れる要素があるのか分からない…。修二とは半年関係を続けたが、全くなびかなかった。
むつに気持ちを伝えることも出来ず。友達として一緒にいながら、あんなにボロボロになっていたのに、どんなに優しくしても、修二の心はむつを向いたままだった。
マキは、俺の何処がいいんだ?
あいつは賢い。俺が人に優しいのは、自分の衝動に対する罪悪感からで本物じゃないってわかってるはずだ。俺は優しい人間じゃない、すぐキレるし、我を失う。
そんな、獰猛な俺のどこがいいっていうんだ。
マキ『修二の信じた優しい百目鬼さんが本物だって証明してあげてよ。修二はあんたが変われるって信じたから許したんだ』
何故、そんなことが言える?
マキの言ってることへの不信感。
マキがいくら人の心を見透かすみたいだと言っても、修二じゃ無いんだ、修二の本当の気持ちは修二にしか分からない。
修二が俺に会ってくれるか?
修二が最後に俺に言った言葉はたしかに…
『僕はあんたを恨まない』
だった…
だが…
車が先生宅に着いた時。
すぐに違和感に気が付いた。
電気が点いてない…。
人の気配のしない家。
マキは…いないのか?…
家の窓をぐるりと見ても、どこの電気もついていない。
玄関に目をやると、白い張り紙に気が付いた。そこには…
〝年末年始休診のお知らせ。12月25日かは1月5日まで、お休みします。〟
と書かれていた。
玄関のチャイムを鳴らしたが、誰も出てこないし、中から物音もしない。
さて、どうしたものか…。
百目鬼はメイちゃんこと椎名に電話した。
しかし、椎名の声は今までのものと違い少し硬かった。
メイ『こんばんは百目鬼さん。ご用件はなんですか?』
百目鬼「マキが今日帰ったんだが、マキに一つ勘違いさせたことがあって、その誤解を解いて謝りたい、マキと連絡が取りたいんだが、携帯が解約されていた」
メイ『…そうですか。でも、マキの個人情報は〝お客様〟には教えられない規則ですので、マキに伝言しておきます』
百目鬼「ッ!誤解だ!俺は給料を渡したんだ!マキはうちの事務所を手伝ってくれた、だから給料を出しただけだ!明細もある!」
〝お客様〟と言われた瞬間椎名さんがマキに何が起こったか知っていると思った。
シャットアウトされたらたまらない!
メイ『……百目鬼さん、私は何も知りません。百目鬼さん…私はマキに出会ってお世話になりっぱなしで、マキを傷つけるものからはマキを遠ざけたいと思っています。百目鬼さんとマキの間に何があったかは知りません。ただ、百目鬼さんと何度か仕事でお話しさせて貰ってて、貴方はとても良い方だと思っていたのですが…』
百目鬼「俺は、良い人じゃ無い…、マキを傷つける人間だ。だけど、今回の誤解は解きたい。だから、マキと連絡を取らせてくれ!頼む!」
メイ『…百目鬼さん、マキを傷つけないで下さい』
百目鬼「悪いが…それは約束できない…。でも、今回の傷は必ず塞ぐと約束する」
メイ『……分かりました。それでは、今から言う番号に電話して下さい。水森泉君が出ます。彼はマキと同級生で、マキの友達です。彼を説得できれば、連絡取れると思います』
泉…。あの眼鏡かけた澄ました奴か…。
マキの友達にしては、随分冷めた物言いの…。
俺は教わった番号にかけた。
すると、待ってましたとばかりに含み笑いの冷めた声が電話に出た。
泉『こんばんは百目鬼さん。ご忠告申し上げたのに、また猫を迷子にさせたんですね』
百目鬼「誤解なんだ。俺はマキに給料を渡したかったんだ。明細もある。マキに説明したい。マキは何処にいるか教えてくれ」
泉『猫が居なくなる理由をご存知ですか?』
百目鬼「…それは…具合が悪くなった時…」
泉『ええ、他には死期を悟った時とも言われています』
百目鬼「ッ、…本当に誤解なんだ。マキに直接説明したい…」
泉『…マキが今何処にいるか教えることは出来ません。百目鬼さんは〝お客様〟として登録されました。マキと会いたいなら予約を取って下さい。ちなみな予約は来年3月まで埋まってますが…』
百目鬼「…」
泉『誤解しないでくださいよ、私がそうしたんじゃありません、マキがそうしたんですよ』
百目鬼「なら、手紙を書くから、マキに渡してくれないか…」
泉『それは無理ですね、私と先生は帰省中ですので、手紙をお預かり出来ません』
百目鬼「帰省?」
泉『本来はマキも毎年一緒なのですが…、貴方の看病がしたいとそっちに残りました。なので、我々が帰る1月3日まで、マキはそっちで1人です』
百目鬼「1人!?」
泉『私から、貴方とマキを繋ぐことはしません。元々貴方とマキは相性か合いませんから。貴方もマキも〝愛されたい〟タイプだ。愛されて開花するタイプだからきっと、貴方たちは上手く育てることは出来ない。今、私や他の人が間に立って取り持っても、2人の力でどうにか出来ないなら、最初っからやめたほうがいい。今、マキを見捨てておけば全部片付きますよ百目鬼さん。マキの恋心も死にます』
百目鬼「…」
こいつは本当にマキの友達なのか?
なんて言葉を吐くんだ…。
でも、間違ったことは言ってない…。マキは〝愛されたい〟タイプだ…。
大事にされて愛情を注がれて綺麗に咲くだろう。俺にはそんなことは出来はしない…
俺は…マキに愛情を注ぐことは出来ない…
酷い誤解だけど…このまま…そっとしておけば、自分を金で買った酷い男として嫌われて、マキは次にいけるかもしれない…。
好きな人に振り向いてもらえない苦しさを。俺はずっと味わってきた…
自分のセクシャリティーを自覚してから、これは誰にも言ってはならないとひた隠し…、20歳になって仲間に出会っても…好きになるのはいつもノンケで…。
気持ちを伝えたことなどなかった。
修二に出会って、修二に酷いことをした罪滅ぼしで相談に乗ってる内に修二に惹かれ。
卑怯にも、好きな人の代わりと称して体の関係を持ちかけた。そのうち振り向かせられると思っていた。
だが、体を重ねて思うのは、俺だけがどんどん修二に惹かれているという現実。
修二は健気にむつを思い、俺のすることはむつのするのとだとどんなプレイも受け入れた。気がつけば、俺の気持ちはどうしようもなく膨らんでいて…。
ずっとずっと自分を誤魔化してきた俺は、ずっとずっと、誰かと両想いになりたかった。
誰かを愛したりしたい
誰かに愛されたりしたい
でも
本当は
想いを寄せるその人の
すべてで
ずっと愛されたい
…………俺はそう思ってた…。
存在を愛して欲しかった…
俺というどうしようもない奴を…
人を泣かせたいなんて思う俺を…
『神さん好き』
初めて俺にそう言ったのは…
惚れ薬を飲んだマキ…
夢は一瞬にして消え、絶望した…
2度目にそう言ったのは
シラフのマキ…
でも、俺は好きだと返すことは出来ない…
マキには、俺と関係ないところで、恋をすればいい…。
それが…マキのためだ…
…………………………………。
それが正論だ…。
この誤解を説かなければ、マキの俺に対する恋心は死ぬだろう…
マキと会わなければ…俺の中のこのどうしようもないモヤモヤも消えるだろう……
…俺は、このまま引き下がるべきだ…
だけど…
俺は…、ここから動くことができずにいる。
マキは今、1人で泣いているんじゃないかと思うと…
どうしても…、帰ることが出来ない…
俺は…帰るべきだ…
誤解を解かずに帰るべきだ…
それでも足が動かない…
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