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番外編72ひと夜咲く純白の花の願い
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ロビーに戻って、修二、むつ、華南と、奏一さんに怪我の状態を説明した。
僕が、〝ちょこっと〟切っただけで全然たいしたことないと言ったら3人に睨まれた。
修二が百目鬼さんに「どうなんですか?」と尋ねると、むつがキレ気味に「百目鬼!横に付いてたんだろ!」とあたりは強い。
百目鬼さんはむつの挑発に顔色ひとつ変えずに、ご丁寧に医者の言った通り説明するもんだから、むつが青くなって。おまけに修二は冷ややかな目で見てくるし。華南は呆れたように怖い顔をして僕を見る。
「僕マゾっ気あるから全然平気♪」とか言おうと思ったけど、それを聞いた三人がなんて返してくるか想像ついたのでやめておいた。
百目鬼「少し待っててくれ、痛み止め飲ませるから自販機に飲み物買ってくる」
マキ「いいよ、帰ってから飲むし」
百目鬼「黙れ」
僕をひと睨みした百目鬼さんは、直ぐに裏口の横の階段に設置された自販機へ向かう。すると何故か修二も立ち上がった。
修二「僕ちゃんも飲み物買ってこよっと」
明らかに意図的に百目鬼さんの後について行く。
すぐ様むつがついて行こうとしたが、華南がそれを引き止める。むつは華南を睨んだけど、奏一さんもむつを冷めた目で見ていて、むつは渋々着席した。
修二……何を言いに行ったのかな?
余計なことは言って欲しくないなぁ…
ふっ。…百目鬼さんは修二に何か言われたら、絶対それに影響される。
せっかく僕にキスしてくれたのに…、これはまた拒絶モードになっちゃうかな?
ははっ、そもそも、百目鬼さんの矛盾だらけの内面は、僕への哀れみが積み重なって、今、僕を構いたいモードになってる…。
明日になれば、改めて自分のやったことに対して後悔して賢者タイムが訪れるんだ。
分かるよ、男って生き物は、去る者は追いたくなるんだよ…、僕も昔は散々追いかけた。
残念だな…
キス…
もっとしたかったなぁ…
無意識に人差し指の第二関節の背で唇をなぞる。
その様子を、むつと華南が覗き込むように見ていた。
むつ「マキ…、お前大丈夫か?」
ハッとして、むつと華南にへらっと笑うと、むつが難しい顔をした。
むつ「お前酔ってんの?さっきは気づかなかったけどほっぺとか目元が赤いし…、め…めちゃくちゃなんか出てるぞ…」
マキ「なんかって?」
泣きはらした目を指摘され、長い前髪で隠すように首をかしげると、その仕草にむつが気まずそうに視線をそらす。
言葉に詰まったむつに変わり華南がまずいものを目撃したといった風に困り眉で言った。
華南「かなり艶かしくて切なげで…エロい」
マキ「ふはっ♪そそられる?」
ニコッと妖艶に微笑むとむつはたじろぎ。
華南は頭を抱えた。
華南「あー…マキ…。言いたくないが…まさかお前………」
勘のいい華南が察したようで、額に拳を擦りつけながら気まずそうに困った顔をした。
むつは気づかず首をかしげる。
マキ「ふふ、一方通行だよ♪」
華南「…あー…」
華南は諦めにも似た長い息を吐く。
むつは益々意味がわからず「なんだよ!」と苛立ち。
むつ「お前、やっぱ百目鬼になんかされたのか?大丈夫か?」
マキ「むつ、逆だよ」
むつ「は?」
マキ「百目鬼さんが僕にじゃなく、僕が百目鬼さんに…」
むつ「は!?おま…」
華南「シー!、病院だよむつ」
信じられないと目をパチクリさせたむつは一気に不機嫌になった。
むつ「お得意の調教かよ」
マキ「ふふ、僕が勝手に可愛いなぁって思っただけ」
むつ「は?かわ…」
華南「おいマキ、その発言いらない誤解を生むぞ」
むつがゾッとした顔をしていた。おそらく僕が百目鬼さんを掘ってるのを想像したんだろう、むつ君マジウケる♪
マキ「むつ君、僕は、超淫乱ネコだから♪その想像は間違い♪」
むつ「じゃあやっぱ百目鬼が…」
マキ「百目鬼さんは僕なんか相手にしてないよ♪♪」
そう、悪いのは百目鬼さんじゃない。
最初に諦められなかった僕の責任だ。
マキ「心配してくれるのは嬉しいけど、むつが彼を威嚇すると益々僕は相手にしてもらえないんだけどな♪」
むつ「…お前、あいつがどんなやつか知ってんだろう?」
マキ「うん」
むつ「あんな歪んでる奴のどこがいいんだよ」
マキ「歪んでるから、だよ♪」
歪んでそれをなんとかしようと戦ってる姿。
歪んでるからこそ、その歪みをなんとかしてあげたいと思ってしまう。
僕も歪んでるから…
むつ「…、お前趣味悪いな…自分をもっと大事にしろよ」
大事にするとかしないとか、仕方ないよ、好きな人の側にいると幸せなのは、みんな同じでしょ?相思相愛なんて、そう簡単に転がってないんだよ。そんなことむつ君に言っても無駄だろうけど、むつは白黒ハッキリさせたいタイプだからな。
そうしてむつが益々不機嫌になったところで、修二と百目鬼さんが人数分の飲み物を持って帰ってきた。
百目鬼さんはいたって穏やかで、目をそらすようなこともなかった。修二は一体百目鬼さんに何を話したんだろう?
気になるけど、僕と関係ない話かもしれない…。
百目鬼「マキ、ほら、痛み止めと水」
薬1回分と蓋を開けたペットボトルを手渡され、薬を水で飲み込む。
苦いのが苦手な僕はうえっと舌を出した。
すると百目鬼さんは、もう一本ペットボトルを僕に渡してきた。
マキ「う?」
百目鬼「口直しに飲んどけ」
ぶっきらぼうに渡されたけど、甘いジュースを手渡され、僕は内心めちゃくちゃ恥ずかしかった。
修二の前なのに…。百目鬼さん、ツンデレ具合がホスト並みです。
マジなんとかしてくれないかな?
さっきのキス思い出しちゃったじゃんか!
修二「さあ、帰ろう。マキ、今晩僕ちゃん君ん家泊まるから、色々手伝うよ」
マキ「え!?いらないよ、僕自分のことは自分でできるし!」
修二「誰もいないんだろ?」
マキ「いないけど、普段からいつも居て居ないようなもんだし」
修二「利き手が使えないのは不便だろ?」
マキ「あは♪不便だなんて、別にスプーンとかならモテるし、お風呂だって片手で洗えるし♪不便なんてないよ♪。…ああ、あるとすればオナニーくらいかな♪ふふふ♪」
修二「ふふふ、それは不便だね、手伝ってあげるよ♪」
引き下がると思ったら、まるっきり予想してなかったカウンター。
僕が鳩が豆鉄砲食らったみたいに目をパチクリさせてたら、修二はニヤっと笑った。
むつが「俺も行く」って言ったけど、華南が、「俺とお前は仕事があるだろ」とむつを落ち着かせた。
そして静かに成り行きを鋭い目で見守る奏一さんはずっと無言だった。
帰りは、百目鬼さんの車に僕と華南が乗って、奏一さんの車に修二とむつが乗り込み、先生の家に送ってくれた。
車が先生の家に着くと、僕と修二だけが降りた。
百目鬼「マキ、薬は忘れずに飲むんだぞ」
マキ「うん」
帰っちゃうんだ…。
さっきあんなキスしたのに…
僕との連絡手段も聞かないで…
これってどうゆう意味かな?
修二達がいるから、連絡先聞いたりしてこないのかな?
まぁ、聞かれた所で、まだ携帯買ってないから、結局連絡手段はないんだけど…
百目鬼「またな」
マキ「うん、また…」
こちらを見ていた百目鬼さんが正面を向いてウインドーを締めて車を発進させた。
またっていつのことかな?
それとも…やっぱコウカイしたのかな?
考えても仕方ない。
百目鬼さんの行動を決して良くは捉えたりしない…。百目鬼さんは僕を受け入れる気はない。
ただ、猫みたいに側には置いてもらえそうだ、本当なら猫が気まぐれなんだけど、僕らの場合は主人である百目鬼さんの気まぐれで構ってもらう。
毒だと分かってても、断ち切ることが出来なかっんだ。もう、何をされても、何を言われても、僕は文句の言えない立場だ…。
側に居ても許されるなら、僕はもう好きだとは言えなくてもいい…。僕の気持ちはきっと彼を困らせる。
困ってる百目鬼さんは可愛いんだけどね…
しかし、僕のこの想いは、意外なかたちで壊される。
それは、後日知ることになる…。
今の僕には想像もできない…
百目鬼さんの居なくなった方角を眺めていたら、修二に声を掛けられた。
修二「マキ、さっ、今日はもう寝よう」
マキ「説教しに来たんじゃないの?」
修二「今日はもう疲れたろ、明日にするよ」
マキ「……結局説教はするんだ」
修二「んふふ、今日は兄貴がむつを連れて帰ってくれたけど、直ぐにむつの説教も聞けるよ」
マキ「わお、修二君が僕をいじめるぅー」
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