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番外編85ひと夜咲く純白の花の願い
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百目鬼「…い、…おい、おいマキ!」
マキ「にゃ!?」
百目鬼「何がニャだ、起きろ」
寝ぼけた僕の目の前に百目鬼さんがいる。
パジャマをきっちり着てる百目鬼さん。
彼は僕のおでこに掌を当て、体温を計った。
百目鬼「熱はないな」
マキ「な、何?」
百目鬼「何じゃない、昨日裸で寝てたろ」
マキ「やだなぁ…、そんなやわじゃないよ、僕は普段裸で寝てるんだよ」
百目鬼「…。着替えろ、出掛ける」
マキ「ふえ?何処へ?」
僕は外出禁止の筈なのに、「黙って着替えろ」と百目鬼さんは偉そうに命令してくる。
よくわからないけどいつもの服に着替えたら、百目鬼さんに怒られた。
「真冬に短パンは止めろ!見てるこっちが寒い!あと肩も出すな!」
って。ちゃんとタートルネックで百目鬼さんの噛み跡はとかは隠してあるよって言ったら。
百目鬼「ッ、そういう問題じゃねぇ!」
ってさらに怒られた。
クローゼットを漁って百目鬼さんからOKが出たのは、普通の長袖長ズボン。
黒のタートルネックに白のフワフワセーターにジーパンを着てやっと出発。
玄関には矢田さんがいて、パリッとした黒いスーツを着ていた。
矢田「あけましておめでとうございます!!」
デカイ声で挨拶して、すぐに車に乗り込む。僕は目をパチクリさせて車窓を眺め、向かってる道順で百目鬼さんの事務所の方に向かってるって分かった。
そして車が真っ直ぐ向かったのは、菫ママの店だった。
菫「マキちゃぁん☆会いたかったわぁ。あけましておめでとう☆」
マキ「あけましておめでとうございます」
店内は正月仕様になってて、野太い菫ママの声とともに屈強なお姉さま方が派手な着物で一斉にご挨拶。僕は迫力に押されながら、挨拶を交わすと、ソファーに座らせられた。
テーブルには、立派なお節料理が並んでた。
マキ「…」
立派すぎるお節料理。今年は食べられないかと思っていたからついつい眺めていたら、僕の隣にどっかりと座った人物がいた。
賢史「よぉ、来やがったな。今日は色っぽい格好してねぇんだな」
マキ「あは♪あけましておめでとうございます賢史さん♪」
来やがったなって、それ僕の台詞だし。
賢史さんは咥えタバコで煙を僕に向かって吹きながらニヤリといやらしく笑う。
賢史「露骨に首元隠して、神の奴噛みグセすごいからなぁ。お前も一杯やるか?新年の挨拶によ」
と、お屠蘇を勧めて来た。
僕はニッコリそれを受け取って飲もうとしたら、お屠蘇が忽然と消えた。
不思議に見上げると、そこには鬼の形相の百目鬼さんが降臨してた。
百目鬼「賢史!何どさくさに紛れて飲ませようとしてんだ!マキ、貴様も何堂々と飲もうとしてる!」
マキ「やん♪一口くらい良いじゃん♪」
賢史「そうだぞ、お屠蘇だぞ?」
百目鬼「賢史てめぇーは刑事だろ!マキ!貴様はジュースだ!逆らうなら先生様に報告すんぞ!!」
ガツンと吠えて、オレンジジュースを僕の前に置く。
おせちにオレンジジュースって…。
その後賢史さんを追いやって、百目鬼さんは僕の隣を陣取った。
百目鬼「ほら、食いたいもん食え、届かないのは取ってやるから」
そんな百目鬼さんを菫ママがニヤニヤ眺めてる。
百目鬼「おい!気色悪いから見るな!」
菫「やだぁ♪照れないでよ」
百目鬼「照れてねぇよ!俺は先生様からこいつの面倒任されてるんだ!ゴリラに囲まれて飯が満足に食えなきゃ、こいつをここに連れて来た意味がねぇだろ」
菫「ちょっ!誰がゴリラよ誰が!」
矢田「ひ、酷いっす百目鬼さん!菫ママは確かに立派な体つきで大柄だし声も野太いっすけど!素敵なレディーっす!」
菫「あぁ…矢田ちゃんの素直なとこは好きよ好きだけど…シクシク」
檸檬「マキちゃんあけおめ!このおせちは煮物と栗金団が上手いよ」
騒ぎを無視して、檸檬はおせちを頬張りながら、僕のお皿に次々お勧めを入れていく。
杏子「マキちゃん、百目鬼さん、あけましておめでとうございます。百目鬼さん、お酌させていただきます」
丁寧な挨拶の杏子さんは普段着なのにカッチリスタイル。百目鬼さんにビールをお酌して、僕にもオレンジジュースを継ぎ足してくれた。
賑やかな新年は皆んなで騒いで過ごした。
一時間ほどして、百目鬼さんと賢史さんの2人は結構お酒が入ってきていた。
賢史「おい神、今日ペース遅いなぁ」
百目鬼「うるせーよ」
杏子「賢史さんペース早いですよ」
マキ「お水貰ってくるよ」
檸檬「流石マキちゃん!気が効く!」
賑やかさに一息つきたくて、マキは水を口実に席を立つ。先生のところの正月はもっと静かで厳かだ。
マキが席を立ったのを見て、賢史が百目鬼の耳元に寄ってニヤリと笑って言った。
賢史「今通ってるらしいなぁ。女王様の所に。お前いったい何やってんだ」
百目鬼「先生様に監視を頼まれたんだよ。いちいち詮索してくんな、何も出ないぞ」
賢史「ふーん。すっかり虜になったのかと思ったよ」
百目鬼「なってねぇよ」
賢史「なぁ、マジな話しなんかあったろ?」
百目鬼「何も。なんかってなんだ」
賢史(嘘つけよ…顔付き変わってるぞ…)
マキが戻って水を賢史に手渡し、席に座るとそこへ遅れて雪哉さんが現れた。
彼はマキを見つけると表情がパァアアっと明るく輝く。
雪哉「マキ様ぁぁー♡」
雪哉さんは、僕のところに飛んできて、ソファーの後ろから抱きついて来た。「良かった良かった」とギュウギュウ抱きしめる。どうやらとても心配してくれてたみたい。
百目鬼「食事中だ!離れろ雪哉!」
雪哉「俺、マキ様の隣ぃー♡」
そう言って、僕と檸檬さんの間に割り込んできた雪哉さんはお菓子の甘い良い匂いがした。僕が雪哉さんの服の匂いを嗅いでると、雪哉さんのカバンから焼き菓子が出てきた。
雪哉「食べる?」
マキ「食べるぅ♪」
雪哉「それでは、あーんして」
マキ「あーん♪」
百目鬼「…………」
口の中に入れた瞬間サクっと香ばしくて、真ん中にトロッとキャラメルソースが蕩け出た。んぅ〜〜〜美味しいィ♪♪
キラキラと瞳を瞬かせて落ちそうなほっぺを両手で押さえて幸せな味に浸る。
雪哉「もう一ついかが?」
マキ「食べたぁい♪」
雪哉「はい、あーん」
マキ「あーん」
百目鬼「……………………………………」
雪哉「まだあるよ」
百目鬼「雪哉、いい加減にしろ。菫のおせちを食え。それは俺が預かる」
雪哉さんの焼き菓子を取り上げて、取り皿と箸を雪哉さんに押し付けた。
マキ「えー、もっと食べたーい」
百目鬼「おやつはご飯の後だ」
マキ「…ブー、そんなこと言って食べちゃうつもりでしょ」
百目鬼「食わねぇよ」
マキ「あと一個、あと一個だけ、ねぇ?百目鬼さん、ちゃんとおせち食べるからぁ、ねぇ?」
百目鬼「ッ…」
マキ「一口食べさせてぇ♪」
あーんと口を開けて、上目遣いで瞳を潤ませお願いしたら、百目鬼さんにペチンと額を小突かれた。
マキ「痛ぁい」
百目鬼「さっさと食え、…初詣連れてってやるから」
…………初詣?
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