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番外編100ひと夜咲く純白の花の願い
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……ぇ?……
大きく開かれた瞳を何度瞬いても、この現実は消えない。
指先が痺れて…訳も分からず胸が締め付けられた…。あまりの苦しさに息もできない…。
百目鬼さんの言葉を理解しようと何度もさっきの言葉をリピートする。
低い百目鬼さんの声が、ハッキリと告げた…
百目鬼「マキ、お前は人の感情を読み取るのが上手い、人の事ならよく見えてる。お前はきっと、紺と藍色の違いが分かるんだろう、だから嘘はつかない、嘘はお前を疑心暗鬼させる」
ソファに座ってた百目鬼さんが僕に近づく、触れようと伸ばされた手にビクッとしてしまった自分に驚き、百目鬼さんは困ったように眉を寄せて、手を引っ込めようとしたから慌ててその手に指先で触れて引き止めた。
百目鬼さんは僕の指が離れないのを見てから。そっと指を絡める。
百目鬼「今の俺がお前を好きだと言ってもお前は疑う。同情か?修二に何か言われたからじゃないか?と不安になるだろ。俺自身がよく分かってない、お前を好きかどうか俺の中でハッキリ言い切れない。なのに好きだと言ったらお前はそれを感じ取る。だから、俺は正直な話をする。
お前を好きとは言えない、でも、お前を他人に触らせたくない、だからお前が俺を離さないと言うならお前を捕まえて起きたい、好きだと言うならお前をもっと知りたい。
俺がお前を好きだと言うようになったら、俺はお前を独占する、逃げられないようにがんじ絡めにしちまう…。俺は嫉妬深いし独占欲も半端ない…きっとお前を食い殺す…だから、今なら逃げられるぞ、お前が逃げたいなら、今逃げればいい…。俺からいつでも逃げられるように準備をしてたんだろ?」
百目鬼さんの静かな告白に、今度は邪魔は入らない。獣は吠えられないように修二が口を塞いでる。
僕は瞳を瞬いた。何度瞬いてもこれは現実だ…
マキ「……違う…僕は…百目鬼さんから逃げようと準備してるんじゃない……ズルい……どうしてそんな…こと言うの?…。確かに振られたらいつでも消えようと思った…、だって僕ってやつは離れなきゃ諦められない…。大学は本当に元々京都も考えてた…。付き合ってもらってるなんて…そんな…夢みたいな事……、だって……あの時そんな事言ってない………」
百目鬼「ご主人様って彼氏の事じゃないのか?」
マキ「ッ!」
百目鬼さんがとんでもない事言うから、慌てて修二を見た。修二は静かにこっちを見てて、口を押さえられてるむつは怒り狂ってムグムグ暴れてる。
百目鬼「言ったろ?修二には全部話した」
マキ「…ぁ…ぅ…」
百目鬼「そんで怒られた。マキは絶対付き合ってると思ってないって…」
マキ「な、なんで言っちゃうの!だって内緒にしてるじゃん!誰にも言ってないじゃん!事務所のみんなにも悟られないようにしろって!」
百目鬼「お前が俺から逃げるかもしれないのにそんな事言えない。それに、矢田のことを考えろ、あいつに知れたら大ゴトにされるのくらい想像つくだろ?菫も同じだ」
確かにあの矢田さんのことだ、あっという間に周りを巻き込む。
マキ「………僕が百目鬼さんから逃げるなんてありえない」
百目鬼「二回逃げたろ」
マキ「あれは迷惑かけたら悪いと思って…」
百目鬼「携帯解約して、新しいの買ってたのに俺が聞くまで番号言わなかったろ」
マキ「そ…れ…は…」
百目鬼「メールも俺からばかりだ…」
マキ「え…」
百目鬼「跨るのは早いのに、会いに来る約束も俺が言い出さなきゃ言ってこない…」
マキ「だって…僕は…受験…」
百目鬼「受験生だから?また逃げる。
お前が修二に言ったんだろ?恋人とは毎日ヤりたい、毎日好きだって言いたいって、お前はこの2週間一度も言わなかった、それどころか一緒にいても接客モードだ」
修二のバカ!!何バラしてんだよ!!
マキ「っ……だって……」
修二「マキ、観念したら?」
修二の声に苛立ちを覚えて睨んだ。
だけど、修二は苛立つ僕の言葉を軽くかわす。
マキ「ッ!。修二だろ、余計なことしたの!百目鬼さんに何を吹き込んだ」
修二「吹き込んでないよ、僕ちゃんは聞かれたことに答えただけ、百目鬼さんが知りたがったことを教えてあげただけだよ」
マキ「それが余計なことだろ…」
今の僕がいくら睨んだところで、まるで威力はないのは分かってる。
今の僕はガタガタだ…睨んだ瞳も涙目に近い。見えかいけど自分でも分かる。
修二がむつを取り押さえて口を塞いだまま、ニコッと柔らかく微笑んだ。
修二「マキ、僕ちゃんの時に散々余計なことしたよね♪」
意地悪に微笑んだ修二に僕は言葉を失う。
修二は、くすくすと笑い、楽しそうだ。
修二「マキに、プレゼントがあるんだ、百目鬼さんと2人で味見してみて、それから、話し合ってみたら?」
修二がそう言うと、泉がペットボトル位の大きさで胴回りのもう少し太い、青い包装紙に包まれたものを持ってきて、目の前のテーブルに置いた。ゴトリと重たい音から、それがガラスか陶器だと分かる。
マキ「何?」
泉「マキは、舐める程度にして下さいよ。百目鬼さん、どうぞ開けて下さい」
舐める?
って、何?食べ物?
そうして修二はむつを連れ、泉と部屋を出て行く。
マキ「えっ?ちょっと…」
この状態で放置!?
むつ「ムガッ。おい!マキを置いてくのか!!」
修二「むつ君ご苦労様、下に華南が居るから落ち着いて」
泉「ええ、今回はとてもいい働きをして下さいました。感謝します」
むつ「ぁア!マキをあんな奴に…」
修二「ハイハイ、むつはマキが大好きなんだねぇ」
むつ「はぁあ!?そんなんじゃねぇー!!」
ーバタン。
玄関の扉が閉まるまでギャンギャン騒がしいむつ。
まさに嵐だ。
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