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番外編ENDひと夜咲く純白の花の願い
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マキ「…」
百目鬼「…」
そして今はまさに、嵐の後の静けさ……
僕は頭の整理が追いつかず、嵐の去った玄関を眺めてた…。
というか、百目鬼さんとどう向き合っていいか分からない。
後ろではカサカサ音がして、百目鬼さんがさっき泉の置いていった修二のプレゼントを開けてる音がしてた。その間思考はフル回転。
その音がピタリと止んだ。
百目鬼「…これは…」
百目鬼さんの驚いたような声に振り返ると、僕は目を疑った。
そこには、綺麗な細工の施された透明の瓶の中に、透明の液体が並々入っていて、その中に白い大きな花が咲いていたからだ。
マキ「え?」
花が…咲いてる…。
瓶の液体の中で、真っ白な花が…、いつか、泉の温室で見た、月下美人が咲いてる…。
真っ白な大きな花は、美しい姿のまま、透明の液体の中で綺麗に咲いていた。
百目鬼「珍しいな、自家製の月下美人の酒か…」
マキ「月下美人のお酒!?」
驚いて瞳を瞬くと、百目鬼さんは瓶の栓を外し、僕に手招きした。
百目鬼「いい匂いがするだろう」
瓶の中から香ってきたのは、度数の高そうなアルコールの匂いと甘い匂い。
いつか泉の温室で月下美人が咲いた時に嗅いだむせ返るような甘い匂い…
百目鬼「瓶に日付けがあるな、これは去年の夏に咲いた花みたいだ…」
去年の…夏!?
マキ「月下美人って一晩で枯れちゃうんじゃないの?」
百目鬼「ああ、確かそうだったな…、でも度数の高い焼酎に漬けるとこうやって咲いてるんだ、それにこれは飲めるんだぞ」
マキ「飲めるの!?」
百目鬼「月下美人の花は食べれるからな」
マキ「食べちゃうの!?」
あまりに僕が話に驚いて食いつくから、百目鬼さんは目を丸めてクスクス笑い出した。
百目鬼「ああ、俺は食べたことないけど、おひたしかてんぷらにするみたいだな」
マキ「ガーン!」
百目鬼「くく…、どうした…、花が食べれるなんて珍しくはないだろ?」
マキ「…ッ…だって…だって…、一晩しか咲かないのに…」
百目鬼「まぁ、食ったらなくなっちまうけど、こうやって焼酎に漬けとけば保存できるし、いつでも楽しめるぞ」
焼酎の中に咲き誇る月下美人は、普通に咲いた時と同じくらい綺麗に咲いていた。
真っ白な純白の花びらが大きく花開き、お酒の中で気持ちよさそうに揺れている。
修二『マキにプレゼントがあるんだ』
修二はなんでこんなもの持ってきたのか…
僕と修二の思考は似ている…
似ているなら…、
多分修二が言いたいことは…
きっと………
〝溺れてみろ〟
ってこと…………
僕が散々修二にしてきたこと…
修二はよくわかってる…
僕は説教されて聞くタイプじゃない…
身に染みて自分で悔い改めなきゃ動かない…
だから修二は説教してこなかった…
そして黙って見届けて
限界だと思ったら、そっと手を差し伸べる…
だけどそれだけじゃなくて、現実を突きつける。
逃げられない状態に追い込んで…
確実な方法で…
僕はまんまと嵌められた…
そして身ぐるみ剥がされて…
百目鬼さんの前に立たされた…
マキ「百目鬼さん…」
百目鬼「ん?」
百目鬼さんの僕を見る瞳は優しくて…
なんだかきんちょうする。
百目鬼さんは戸惑う僕の肩を抱き寄せた。
百目鬼「俺は、正直に話した…、…そんな俺が嫌なら、そう言ってくれ。今のお前に好きだと言えない、お前も言われても信じないだろ。ただ、お前は可愛くて大事にして胡散臭く笑わないようにしてやりたいと思ってる…それは本当だ…それじゃダメか?」
マキ「…僕は、百目鬼さんから逃げたいわけじゃない。百目鬼さんに迷惑かけて嫌われるのが怖い…。
それに、百目鬼さんの怖いもの…分かるよ。百目鬼さんの知りたいことも分かる。僕はいきなり何もかも変われないし話せない。でも、僕の気持ちは変わらない。好きだよ。百目鬼さんが好き…、ふふ…ビックリするぐらい、好き」
わけも分からず目頭が熱くなった。
潤んだ僕の瞳に、百目鬼さんは少し困ったようにしてる。〝そんな顔させたいんじゃない〟っていうのと、もう一つの自分と戦ってる顔。
僕も潤む瞳に不思議な気持ちだ、嬉しいのに…溢れてくる。
その中には、〝やっと〟って感情が混ざってる。
百目鬼さんは僕の目尻を優しく撫で、おでこに口づけてきた。僕がどうしてって顔したら、百目鬼さんは耳を赤くして渋い困った顔をして、それから僕の瞳から逃れるように僕をギュッと抱きしめた。
百目鬼「かんべんしてくれ…抑えが効かなくなる」
マキ「ふふ、どうして抑える必要があるの?」
百目鬼さんの首に両手で、絡みつく。
百目鬼「俺は…、優しくしたい」
マキ「ふふ♪どっちでも、僕は嬉しいのに」
巻きつきた腕を引いて、百目鬼さんの唇にチュッと軽くキスをした。
マキ「どんな百目鬼さんも好き。僕を全部食べて、そして…」
百目鬼さんに、溺れたい………………
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