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嵐に巻き込まれるのはいつも百目鬼
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酔ってほんのり頬を染めた檸檬が、フワフワした口調でニヤッと楽しそうに言った言葉に衝撃を受けた。
百目鬼「……違うだろ。
俺じゃなくて、マキが俺をだろ」
俺のショックを受けた表情に、檸檬が愉快そうに吹き出した。
檸檬「アハハッ。マキちゃんは確かに百目鬼さんのこと好きぃーって感じはあるけど、ラブかライクか結構分かんない感じにしてるよ。まぁ俺は百目鬼さんとの付き合いの方が長いから、百目鬼さんがマキちゃんにやたら優しいの分かるし、百目鬼さん、結構嫉妬が顔に出てるよ」
…あんなに気を付けてたのに…。俺は、何にも改善できてない…ってことか。嫉妬や独占欲で目が眩まないようにしてたつもりだ…、修二の時みたいに自分の欲が制御できない程丸出しにならないように気を付けてたつもりなのに……
百目鬼「俺は…マキに近づきすぎてる…のか」
檸檬「え?何で?百目鬼さんマキちゃんと付き合ってるんでしょ?」
百目鬼「ッ…、付き合ってはいるが、親しき仲にも礼儀ありって言うだろ、俺は自分を制御できる距離でいないと、相手を壊す」
檸檬「えー…っと、壊すって?」
百目鬼「俺は…」
俺は檸檬に自分の恋愛観について話した。
相手を全部手に入れたくなって、相手を泣かせてしまうこと。詳しくは言わなかったが過去に好きな人に酷いことをしたこと。マキはそんな俺を恐れず真っ直ぐ好きだと言ってきたこと。そんな理解を示すマキを手放したくなく思い、大事にしてやりたいのにめちゃめちゃにしたい衝動に駆られ乱暴してしまうこと…
なのに、マキはなんでもない風にして、すぐ煽ってくる…
マキが俺に甘えるのは全力で甘やかしたいが、マキはすぐエロに持ち込む…
最近は猫耳と尻尾が見えて重症化して制御がきかないこと…
恋愛の話しなんてものは、修二とマキにしかしたことがなかった。
だが、このままではマキか危険な気がした。
俺は修二の時、溜め込みすぎて修二を傷つけた。
だから、檸檬がどう受け取るかは分からないが、俺よりマキに年齢の近い今時の檸檬なら、何か知れると思った。
百目鬼「マキが寂しがりやで甘えたがりなのは分かるが…、マキは自分の魅せ方を分かってるから、すぐに可愛い顔してベタベタと…」
檸檬「…へー、俺は、マキちゃんそんな風に見えないなぁ…寂しがりとか甘えたがりとか…そんな感じ見たことないし」
百目鬼「は?見るからにそうだろ」
檸檬「それ、百目鬼さんの前だけじゃない?」
百目鬼「俺の…前だけ?」
檸檬「そう、好きな人と二人っきりの時だけ♪
ほら、賢史さんが最近言ってるじゃん〝女王様〟って、僕もそっちの印象だな。強くて賢くて優しくて平等で母親みたいな…、こないだもナイフ手掴みしちゃうとか。腕っ節強くて隙がない感じ?」
確かに、俺もマキの初対面は似たような印象だ、強くて賢くて妖艶な魔性のような子供…。
でも、今は、小悪魔みたいに色香を漂わせ跨ってきたと思ったら、中身は野良の子猫みたいで、俺が甘やかすと甘えるのに、手を伸ばさないとジッと大きな瞳で俺を見上げてる。それがムカついて仕方ない。
百目鬼「マキは、誰にでもベタベタニコニコしてるじゃないか」
檸檬「まぁ、そうだけど。百目鬼さんが言う子猫みたいな印象はないな、どれかっていうとホワイトタイガー的な、神秘的で強くて綺麗な感じ?マキちゃんて人懐っこいけど一線引いてるでしょ」
一線引いてるどころか、スパイも侵入不可能なセキュリティー万全で一体何十のロックが掛けられてるか分かったもんじゃない。
檸檬「マキちゃんてデレると子猫ちゃんみたいなの?超見たい。きっと天使みたいで、ギューって抱きしめずにはいられなくなるんでしょう」
檸檬はマキを可愛いだの天使だの言いすぎだ。
百目鬼「その子猫は、可愛いだけじゃないぞ、色んな奴に狙われるし、隠し事するし、今日なんかエロ下着を他の男から貰ってやがった」
檸檬「エロ下着?」
百目鬼「生地の少ねぇー、ビキニみたいな幅しかないリスの尻尾と耳の付いたの貰ってきて、しかも、他の男の前で試着だとか何種類かあったから選ぶのに友達と着回ししたとかとんでもねぇーことしてやがった」
思い出したら怒りが湧き上がり、すでに5杯目のグラスが空になる。
檸檬「うわー。そりゃまた何でそんなことを、そんなことしたら百目鬼さん怒るに決まってるのに。それでどうしたの?」
百目鬼「マキの部屋に行ってその服は処分した。男が服をやるなんて脱がすためだろ。あいつはそっちに関して軽率なんだ。暴漢に襲われても逃げないで平気でナイフ掴むし…」
そういえばキーホルダーを取り返すために惚れ薬飲まされて暴行されたこともあった…。なのに、そんなこと微塵も感じさせない…。
百目鬼「初めから分かってた、ああいうタイプには降り回される。これ以上降り回されれば、また、手が出ちまう…。手が出る前に正しい距離を取らなきゃ…、でなきゃ、万が一の時逃がしてやれない…」
檸檬「んー…、でもさ、百目鬼さん、最初に言ってたよね、マキちゃんは、百目鬼さんが前好きだった人にした酷いことを知ってて好きだって言ったって。それに、逃すなんて、別れることを考えて付き合ってるなんておかしくない?」
百目鬼「………檸檬、お前は、朱雀に居た時の俺を知らない」
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翌日、激しい二日酔いで目覚めた。
自分の家のソファーに横になっていて、向かいのソファーの下に、檸檬が転がってた。
ああ、昨日は檸檬が二次会は百目鬼さんの家でー、とか騒いで潰れたんだった。
檸檬はあれこれアドバイスしてくれた、でも結局、俺がキレちまったらお終いだ。
二人とも飲みすぎた。飲まなきゃ、喋ってられなかった。誰かと朝まで飲むなんて、久々だ…
今まで人にセクシャリティーの話しをしないから、昨日は檸檬が相手だというのにやたらと緊張した。
二日酔いの重い体を起こし、朝の支度に取り掛かる。
檸檬と一緒に出勤し、2人とも酒臭いと杏子に叱られた。
ーピリリリリ♪ピリリリリ♪
昼前の時間。着信音が頭に響く。顔をしかめながらとると、その声に思わず立ち上がった。
修二『百目鬼さん、今話せる?』
ーガタン!
百目鬼「しゅッ!…。…奏一を通さないなんて、なんかあったのか?」
修二『兄貴はいいよ、謝りたくて電話したんだ』
百目鬼「お前と接触するときは必ず奏一を通す約束だ」
修二『分かった僕ちゃんから直接兄貴に連絡する。だから百目鬼さん聞いて、昨日はむつがなんか言ったみたいでゴメンなさい』
百目鬼「……その件なら済んだ」
修二『百目鬼さん怒らないで、僕の話しを聞いて』
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