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俺たちのバランス〜華南〜
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女と腕を組んで歩いてた。
ほんの一瞬。
だけどあれは、むつだった…。
修二の様子がおかしいのは、修二が何か知ってるから?でも、聞いてみて万が一知らなかったら余計な事を言うことになる。今の修二にそんなこと言えない…。
確かめるために、恐る恐るむつの携帯に電話する。妙に緊張して落ち着かないまま、コール音が響く。
だが、むつは出ない。
そりゃそうだ、女と歩いてたむつが見間違えなら、むつは今、時間仕事中だ。
確かめられない不安はあったけど、携帯に出ないのは仕事中だからだと言い聞かせ、むつにメールする事にした。
《仕事が終わったら連絡して。今日は俺が夕飯作る》
そう送って帰宅した。
夕飯の支度が出来た頃、修二が大学が終わって電話してきた。俺が早く上がったから、夕飯作って待ってるって連絡しといたからだ。
修二『ごめん華南。授業中でメール見れなくて、言えなかったんだけど、むつは今日も夕飯いらないって』
華南「は?…それはいつ連絡が?」
修二『1限終わったくらいだよ』
一瞬、俺のメールの後にかと思って焦ったが、午前中の時点でのメールだったことに安堵する。
だけど、むつのやつ今日も?
夕方の5時過ぎ、むつが仕事の合間だとメールで返事を寄越してきた。
《マジごめん。仕事でメール見れなかった。今日も夕飯一緒に食べれない。忙しいから、ごめん》
むつのメールを見て、俺は、むつを捕まえることを決意した。
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早朝5時半…
夜中から降り出した雨が降り続き、明け方だというのにあたりは薄暗い。ザァーザァーと降る雨は勢いをそのままに今日一日中降る予報だった。
雨音に隠れるようにして、マンションの廊下を歩く人影。グッショリと濡れたカバンの中からキーケースを取り出して、音がしないようにそっと鍵穴に差し込む。細心の注意を払って音のないように玄関を開けた人物は、ドアの隙間から見えた光景に凍りついた。
華南「おかえり、むつ」
玄関に座り込み、待ち構え構えていた俺に、むつは硬直して青ざめた。
青ざめたっていうか、もともと顔色があまり良くない。
玄関の隙間から俺を見つけたむつは、罰が悪そうに硬直したまま動かない。何か後ろめたいことがあるからだ。
華南「そんなとこ突っ立ってないで、入れよ」
俺がジッと見ながら言うと、むつはやっと動いて玄関の中に入った。ねれネズミみたいに濡れてたが、むつは気まずそうに突っ立ったまま、俺に次に何て言われるか怯えてるようだった…。
華南「お前、こんな時間まで何してんの?」
むつ「…仕事だよ…ごめん、疲れてるんだ」
華南「ふーん、お前の店何時までだっけ?」
むつ「…11時……でも、付き合いが合って…」
むつにしては覇気が無く、目は泳いで、俺との話しより、修二が寝ている寝室が気になるみたいでチラチラそっちのドアを見てる。
華南「俺さぁ、むつの店に電話したよ」
むつ「!!!」
店に電話した。その言葉に、むつは肩をビクッと震わせ、どんどん顔色が悪くなっていく。
それもそうだろうよ、なんせむつは…
華南「店長が、柴田くんは数日前に辞めましたって言ってたぜ」
俺の言葉に、むつはうつむき、ガタガタ震えだした。
そう、むつは、4月に就職したばかりのマッサージ店をいつの間にか辞めていたのだ。
しかし、予約を取る客のフリでかけたから、辞めた理由までは知ることはできなかった。だけどむつには効果てきめんだったんだろう。その場にガクッと膝を付き、玄関に頭をこすりつけた。
むつ「ご、ごめん…」
泣きそうな声を絞り出しそう言うと、わずかに震えながら顔を上げ、情けない顔で聞いてきた。
むつ「…しゅ…修二もこのこと…」
華南「修二はまだ知らない」
それを聞くと、僅かに表情が和らぐ。
仕事を何かしらの理由で辞めただけにしては、このビク付き方はおかしい…。仕事と女のことが両方絡んでるってことだ。
むつは、両手を床につけきっちり正座したままうついていた。自分から説明する気は無いらしい、何かあるんではないかと思いながら、今日の出来事を聞いてみた。
華南「むつ、お前、今日3つ隣の駅にいたか?」
むつ「ッ!!…」
むつが、バッと顔を上げ、驚いた表情で俺を見た。
さすがむつ……隠し事が下手くそだ……
答えを聞くまでもない、この表情は肯定だ。
だけど…答えを、むつの口から聞きたかった。
華南「答えろよ」
むつ「………………いました」
ああ…修二に何て説明すればいいんだ…
華南「お前、何やってんの?」
むつ「…………………ごめん華南…」
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