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俺たちのバランス〜むつ〜
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それは遡ること一週間とちょっと前…
むつ「お待たせしました。ご予約の田中太郎様…」
俺の働くマッサージ店に、初めて指名客が現れた。俺は緊張して声が裏返ちまう。個室風に区切りのある部屋。天井は店全体と繋がっていて、癒しの音楽が流れているので、小声なら隣の声は聞こえない。初めての指名客、この人を満足させれば次に繋がる。俺は気合と緊張MAX!
だが、そこにいたのは田中太郎ではなかった…
マキ「はぁーい♪田中太郎デェ〜す♪」
むつ「ぅをいマキ!…」
マキ「ふふふ♪やだぁ♪お客様にガンタレてるぅ♪クレーム出しちゃおっかなぁ〜♪」
むつ「グッ…。お客様、本日はどこを中心にやりましょう?」
突然現れたマキ。昨日俺の家で修二とイチャイチャしてたのに、まだ絡み足りないのか?
マキをうつ伏せにして背中から腰にかけて揉んでるとマキが無駄に吐息を漏らす。こいつ欲求不満なんじゃないか?つーか腰ほっせぇーなぁー、修二よりないんじゃねぇー?なのに背中の筋肉綺麗で柔らけぇーなー、ってか肌ツルツルで女みてぇー。
マキは気持ちよさそうにしてるけど、からかいに来たと思っていた、意味深に笑うマキは色気を無駄に振りまきながらチクチク言ってきた。
マキ「むつさぁ、頑張って転職して、今も必死に勉強やってるのは偉いけどさぁー。家に女の子連れ込んでるってどうなの?」
むつ「は!?連れ込んでねぇーし」
マキ「はい、手は動かして♪昨日連れ込んでたじゃん♪」
むつ「あれは勉強してたんだよ、講習で習ったの予習復習して、その日の客がこんなところ好んでたとかマッサージの勉強、店は女の客が多いし、女の体って色々面倒で注意点が多いんだよ。触り方とか力加減とか注意されるし…。修二にも華南にも許可とったぜ」
マキ「ふふ、修二や華南がダメだっていうと思う?」
むつ「…思わない。でも俺ちゃんと考えたぜ、マッサージの勉強でも女もいる所に行くって、やじゃねぇ?見えないところより見えてる方が良いじゃん?昨日はマキが居たから襖閉めたけど。いつもは開けっ放し」
マキ「ふーん。でも、誘惑の〝瞳には〟気をつけたほうが良いよ♪恋人を泣かすような事態にならないように気をつけてね♪そんなことになったら、僕も黙ってないぞ♪♪」
むつ「バカじゃねぇの?俺は仕事してんだよ」
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修二『あっ、むつ…恥かしい…』
可愛いけどよ、それって煽ってるんだぜ
華南『優しくしてやれよ』
俺はいつでも優しいだろ?
修二『…むつ君のキスってもっと激しいかと思った』
は?いつもしてるじゃん…
ーーーバタン!!!!
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痛ッてぇーー。
何だ今のでかい音…
頭に響いて…
ーチュンチュン
何処かで雀が鳴いていて、頭はガンガンして、背中が硬い畳に腰が痛む。体はぬくぬくと暖かい…
また修二と華南とヤッたまま和室で寝ちまった?
…朝?
修二がまだ寝てるって珍しくね?
むつ「しゅ…」
美樹「ぁ…おはようむつ君」
むつ「…」
眠いのと、頭が痛いので、顰めるようにしていた細い視界で、俺の腕の中の温もりから女の甘えた甘ったるい声が聞こえてきた。
美樹「…あの…離して貰ってもいい?」
美樹の言葉で、俺は美樹を腕枕してタオルケットの中で腰を抱いてることに気がついた。
ゾッとして飛び起きた。
ズキッ!
痛ッ…頭が…
美樹はタオルケットを握りしめ口元を隠す。
恥じらって俺を見つめながら、また甘ったるい声で驚きの言葉を口にする
美樹「むつ君って優しいんだね…」
『…むつ君のキスってもっと激しいかと思った』
夢の中の修二の台詞と被ってゾワッと嫌な汗が出た。
美樹「私、むつ君のこと好きになっちゃった…」
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何か起こったか分からなかった。
俺が〝知ってる〟のは、前日美樹を慰めるとかって酒飲んで…、起きたら美樹を〝俺が〟抱きしめてたことだけ…。
訳分かんねぇー。
昨日のこと美樹に聞いたら美樹は泣き出すし、大輝と胡桃には怒られるし「責任とりなさいよ!」とか言われて頭パニックで言葉が出ない。
一回思い出す時間欲しいって帰ってもらって。それから仕事行ったら美樹が休みで、仕事終わりに胡桃に捕まって怒鳴られて、つい、付き合ってる男いるって言ったら罵られて、揉めてたら店長が来て、揉めるなら辞めてもらうって、胡桃にはキモがられて…、色々言われて俺は反論したけどダメで、ムカついて店長殴っちまった。
美樹に電話して美樹に確認したけど…美樹は「一回でポイ捨てのつもりだったんだ」って言うし、俺は正直に「お前じゃ勃たねぇ」って言ったら泣かれ。
美樹『貴方の恋人に全部ぶちまけるから!』
ッて言われて、謝り倒した。
昼間は仕事探して、夜は美樹に謝って…。
マッサージ店は、4月の社員を補充したばかりでどの店も募集してない、アルバイトはあるみたいだが、その店のマッサージの講習を受ける間は無給だ。それに、ある店に行った時、名前を言っただけで断られた。俺が店の女の子に手を出す奴だって噂が流れてるらしい…。昼間のマッサージでの就職は一旦諦めて割りのいいバイトを探した。だけどどこも面接で落とされる。やっと見つけたのはなるべく避けてた深夜のバイト、昼間なら仕事だと言えるが、夜家に帰れないのを説明できない。でも、お金が無ければ俺の貯金なんてたかが知れてるし、仕事のない状態で修二と華南と向き合えない。最低でも、就職はしなきゃ…
俺…何やってんだろう…
修二と華南と一緒に居たくて無い頭使って1年かけて資格とって…
就職したのに2ヶ月でクビ…
しかも酔った勢いで女とヤっちまったらしい…
嘘だ…
俺が…女と…?
そんなことしたら、あいつらを悲しませる…。
修二からやっと、ほんのちょっと、甘えてくれるようになったのに…
華南…に…殴られるかな?
殴ってくるねぇかな…
夜の暗闇で赤いライトの棒切れを振る。
ただ突っ立って、車を誘導する。
真後ろでドカドカと工事の音が響いて、俺の頭の中は2人になんて言えばいいんだってことばかり…
覚えてない…
本当に何も覚えてない…
俺は本当に2人を裏切った?…
2人に説明する時、俺は覚えてないなんて言い訳は通用しない。
俺は覚えてない。美樹は俺と寝たと泣く。大輝と胡桃は責任とれって言われて…。
美樹『むつ君がキスしてきてそのまま…』
俺がヤらなかった証拠は何処にもない…。
俺…奏一さんになんて言えばいいんだ…
俺は……
俺の心は2人を裏切ったりしてないのに…
でも、現実は違う
俺は美樹をヤっちまったんだ…
裏切ったんだ…
ッ……………
「ヤダァ〜、今日も憂いてるぅ〜、可愛いぃ♡」
それは、女言葉だけど、どう聞いても酒焼けしたオッさんの声だった。
「あ〜ん、人生に疲れてるのね、私が癒してあげたァい♡」
「あんたあんなのがいいの?私はアッチ♡今日も筋肉の素敵な親方♡」
気色悪い2人の野太いおっさん声がして、俺と工事現場の男たちを見てきゃーきゃー言ってる人物。暗闇から現れたのは、女の格好をしてるがどう見てもおっさんでしかないオカマが2人、そして…
「ふふふ♪キャサリンさん、あの小ちゃい子はダメだよ♪、ダーリンがいるからね♪」
その聞いたことある声は、チャイナドレスを着てオカマの後ろからゆっくり近づく。
鈍い光を放つ瞳を細めながら、妖艶な微笑みを浮かべてニヤリと口角をあげた…。
マキ「うふふ♪むつ君みーつけた♪♪」
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