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俺たちのバランス〜むつ〜
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チャイナドレスのマキに呼び出され、仕事が終わった早朝4時半にマキに案内されたのは、〝菫〟というお店だった。
中はオカマだらけ、しかもかなりグレードが低い。
店の中にはお客が数人いて、おっさんオカマと楽しそうに話したり慰められたり、中には寝ちまってるのもいて、奥の隅の方に大柄の男が突っ伏してた。
むつ「マキ、お前ここで働いてるの?」
マキ「違うよ〜♪、ママが僕に着せたい服買ったって、着せてくれたんだ♪どぉ?似合う?」
子供みたいにクスクス楽しそうなマキが、チャイナドレスを翻して一回転してみせる。
むつ「ブッ!!なんだそりゃ!右のスリットどこまで入ってんだよ!太もも見せすぎだろケツ見えんじゃないか!?ってかパンツは?まさかノーパンじゃないだろうな!」
マキ「むつ君のエッチ♪」
ふざけた顔して笑ったかと思ったら、マキは「あっち座って話そう」と、急にマジな顔になる。
そうだ…、マキは俺に説教するために呼だたんだ…。
改めて、自分の〝立場〟を思い出す。
俺はカウンターの隅に座らされ、マキはカウンターの中にいた着物姿で紫の髪のデカイオカマと話をしてた。
マキは怒ってる風だ…修二から何か聞いたんだろう…。あの日から…修二と華南を避けまくってる…、さすがにそろそろおかしいと思うだろうな…。でも、まだ言えない…、女の問題で仕事失ったなんて…せめて新しい仕事を見つけてからじゃないと、許して下さいなんて言えない…
マキ「ふふッ♪なぁ〜に?今から死刑台にでも登るの?そんな顔してないで、ほら、菫ママが朝食作ってくれたよ」
カタッと音がして目の前に置かれたのは、見事な和食。そして味噌汁まであった。
拍子抜けしてマキを見上げる、マキは神妙な顔してニコッと恐ろしいほどの笑顔を浮かべた。
マキ「菫ママのご飯美味しいから、お腹いっぱいにしてから、僕とお話ししようね♪♪」
むつ「…修二が…なんか言ったのか?」
マキ「言うわけないじゃん」
むつ「じゃ、華南?」
マキ「どっちからも何も聞いてない、とにかくご飯食べて、話しはそれから」
マキは俺に飯を食わせ、それを横でずっと見てた。
インスタントかと思った味噌汁は、手作りでビックリするぐらいうまくて、胃の中に染み渡る感じがした。温かいご飯を食べるのが久々だって改めて思い出す。
修二の作った夕食を、もうずっと食べてない…。
マキ「…むつの働いてた店に行ったよ。そしたらすっごい事になってた…」
むつ「…」
店と噂から…、一体どんなこと言われてんだろう俺…
マキ「バっっカだなぁ〜、だから気をつけろって言ったのに」
いきなり罵られると思ってた。だけどマキは、俺の目を真っ直ぐ見ながらため息交じりに言った。
マキ「それで?むつサイド的にはどうなの?」
むつ「俺…美樹とヤっちまって…」
マキ「はぁー、もう一度聞くよ。むつの真実はどうなってるの?」
むつ「え?」
マキ「むつはさぁー、美樹ちゃんに欲情したの?」
むつ「してない!」
マキ「じゃぁ好き?」
むつ「違う!、俺、美樹をどうこうなんて考えたこともない……、こんな言い方最低だけど、美樹を好きだと思ったこと一度もない…」
マキ「最低だと思うのはむつの本心?それとも周りにそう言われたから?」
むつ「…………ッ、周りに…、起きたら美樹が隣にいて…責任とれって…覚えてないっつたら…人として最低だって…、確かに、逆の立場だったら、『覚えてない、好きなんて思ったこともない』なんて最低だと思う…だから…」
マキ「ストップ。むつ君さぁ、修二と華南にも、『俺浮気した』って言うつもり?」
むつ「…しちまったんだ…、謝る時グダグダ言うなんて男じゃない…」
マキ「あは〜♪呆れるぅー♪こんな状況で自分のプライドが大事?修二と華南を傷つけるより、自分を守りたいの?」
むつ「違う!俺は、2人に謝るなら、『俺は浮気してない、女が勝手に言ってるだけで、付き合ってる男がいるって説明したら店長に聞かれて、色々言われて我慢できなくて殴っちまってクビになった』なんて言うつもりない!」
マキ「だから浮気を認めるの?」
むつ「ッ…」
マキ「だったら真実を話すべきじゃない?むつの真実を、覚えてないなら覚えてないで、カッコつけた言葉使わないで、問題が起きたら片方の意見だけじゃなくて両方聞かないと。その前後何があったか言ってごらんよ。僕が聞いてあげるよ。むつ君には借りがあるし…」
むつ「…俺、お前に何か借りたっけ?」
マキ「ふふ♪おバカさんだねぇ〜」」
マキは陽気に笑ったかと思うと、睨むように冷たい視線を向ける。
俺だって言いたい…、俺は浮気なんかしてない。酔ってて何も覚えてない、もしかしたらキスくらいしちまったかもしれない、だけど美樹にしたつもりじゃなくて、修二か華南だと勘違いして…、だって美樹に特別な感情なんかない…。
俺が押し黙ってると、マキがため息をつき厳しい目つきを和らげて、呆れたように言った。
マキ「ってか、言いたくない君の気持ちも分かるよ、でも、もう君の手には追えないんじゃない?素直に僕に話さないと、恋人を悲しませるよ?…このまま捨てられることになってもいいの?」
見透かしてるような不思議な瞳を向けるマキ。
俺にも分かってる、もう、俺一人じゃどうにもならない、誰かに助けて欲しかった…。限界だった…
俺は、正直に覚えてることを話した。そして美樹が怒って責任取らないなら恋人にぶちまけるって言ってることも…
マキは話しを聞き終わると、意味深に目を細めてカウンターに頬杖を付いた。
マキ「失恋して慰める会ね…。その慰める会で買い出しに行ったの大輝と胡桃って子なんでしょ?」
むつ「ああ」
マキ「…美樹だっけ?あの子むつのこと狙ってたんだよ」
むつ「は?」
マキ「確かめたいことがあるからさ、むつ君美樹ちゃんともう一度会って話してきなよ。『二人っきりで話しがしたい』って言えば美樹って子、絶対会いに来る筈だから♪♪」
ふふっと笑うマキは、恐いくらいの笑顔を浮かべる。
もう一度美樹と会う?そしたら美樹は納得してくれるんだろうか?
俺は美樹と2人で会うことにした…。
だけど、マキに言われるまま2人で会って、幾つか指示されたことをやったが、美樹は俺と話してて怒り出し、話しは解決しなかった。
マキはマキで、俺にまた会う約束をして去っていく。
俺は絶望を抱えたまま、雨が降る中走ってマンションに帰った。
すると、玄関に華南が怖い顔して待ち構えてた。
仕事を辞めたこと、美樹と歩いてたことを知っていた。
俺…、この家から追い出されるのか?
華南と修二と…別れなきゃならないのか?
そう思ったら、マキと話し合って、もらったアドバイスも全部吹っ飛んで、ただひたすら謝った。
むつ「ッ……ごめん…華南…」
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