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俺たちのバランス〜むつ〜
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ふと、目が覚めた。
ぼーっと見えるのは、明るい日差しに照らされた白い天井。
早朝の白んだ空よりはっきり明るいから、時間は7時頃かもと薄っすら思いながら、意識がはっきりしてきて気がついた。俺は温もりに包まれてる。左右の人間がぴったり寄り添ってて、俺はベッドに仰向けに寝ていた。
あの日の出来事が過ぎり、少しだけ不安になりながら自分の左側を見ると、スヤスヤ眠る修二の姿があった。
ああ、修二だ…良かった…
ホッと胸をなでおろし、修二の寝顔に愛しさがこみ上げる。
あっ、時間は?修二が俺より遅いなんて…
そう考えていたら、反対側から華南の声が聞こえてきた。
華南「まだ、寝かせてやれ」
華南は俺の右側で頬杖付いて起きていた。
華南「お前が帰ってこない間、無理して起きて待ってたりしたから」
むつ「あっ、ごめん」
華南「大丈夫。1日おきにセックスで失神させて無理やり寝かせたから」
ニカッといやらしく笑ってピースサインを出す華南、修二を守ってくれたことには感謝したいが…そのやり方…。
むつ「…俺、修二の心に消えない傷を作っちまった…」
華南「大丈夫。…って言ってやりたいけど、本当のところは修二にしか分からない」
むつ「…俺、自分を殴りたい」
華南「殴ってもその不安はぬぐえないし、修二の気持ちは確かめられないぜ」
むつ「あー!頭の中開いて見せてやりてぇーなー、俺、修二と華南のことしか考えてねぇーのに、俺は俺たちの将来に不安なんかないのに」
華南「フッ、やっぱむつはむつだな。俺はあったぜ不安」
むつ「は?何で?」
俺が聞き返すと、華南はフッと目を細めて笑う。
華南「いつか、修二とむつだけでくっついちまわないかってさ」
むつ「ぇ?……はぁあーーーー!!」
それは、俺が考えてたことと似てた。修二と華南がどんどん大人になって親密になって置いてかれてるような感覚。だけど俺はそれを不安に思ったことはない。もっと頑張んなきゃって…
華南「だってさ、修二は小1の頃からむつが好きだったんだぜ、それを中2からの付き合いの俺が、どうやっても同じぐらいにはならないだろう」
むつ「はぁあー?長さなんか関係ねぇだろ!お前は修二にとって必要な人間だろ!だって、最初に百目鬼のこと修二から聞いたんだろ?俺なんか死んでも言わねぇーって宣言されて結局百目鬼から聞かなきゃ俺、知ることもできなかったかもしんねぇーのに」
華南「修二にとってむつは、それだけ大事だったんだよ。俺は別に修二が俺のこと大事に思ってないとは言わないぜ、自分の過去を晒して俺を遠ざけて、百目鬼と俺を接触させないようにって考えてくれた…、ちゃんと修二の優しさ分かってる。むつも今なら分かるだろう?大事な人にほど言いづらいことがあるって」
むつ「……ああ」
ズキっと胸が痛む。今回のことで思い知った、言えない苦しさ。修二が「死んでもむつには言いたくない」と百目鬼とのことを隠した時、俺は地団駄踏んで怒ることしかできなかった。子供だった。
そう反省して俯くと、華南が俺の顎をすくってキスしてきた。チュッチュッて甘やかすような小鳥のキスに、俺は気がついた。
〝俺も不安がある〟と言った華南は、不安なんじゃなくて、俺が落ち込んでるのを和らげるためにそう言ったんだってこと…。華南の優しい眼差しとキスが、そう言ってる。
華南「普通に考えたら、何で3人で付き合ってんだって思うよな、だけどさ、むつを好きで見てるとむつにとって修二が必要で大事な人間だって感じる。修二を見ててもそう、修二にを見てれば見てるほど、修二にとってむつが必要で大事な人間だって分かる」
むつ「華南だって修二にとっては必要な人間だぜ、だって、俺じゃガサツすぎて、修二を支えきれてない、華南がいなきゃ、百目鬼の時も、今も、修二を守りきれない。俺、華南がいないと、きっと修二を傷つけるし、お前がいないなんて俺、考えたことねぇーよ、止めろよ、そんなこと考えるの。俺、お前いないなんて困るよ…、華南はいつもカッコよくて、俺の目標で、俺の背中を預けられる奴だ。お前に背中からすっぽり抱きしてられんのとか気持ちいいし、安心すんだよ、お前の腕の中が一番安心すんだよ」
華南「フッ、しおらしいむつは元気が無くて寂しいと思ってたけど、いいね、そんな熱烈な言葉が聞けるとは思わなかったよ」
むつ「うっせーよ」
華南「むつは、そんな風に俺が好きなんだ」
むつ「うるせぇー、悪りぃかよ」
華南「耳を真っ赤にしながら睨まれても可愛いだけだぜ」
むつ「…うっせーな、いいだろもう!俺反省してるんだよ!今は反撃できねぇーんだよ!虐めんなよ!俺は修二が心配だって話ししてんだよ!」
華南「むつは俺と修二の太陽だ。
焦んなくても良いんじゃない?俺たちにはまだまだ時間がいっぱいある」
むつ「太陽?…時間はあるけど…、修二の目が曇っちまうかも」
華南「大丈夫だよ、むつ言ったじゃんか、金貯めて結婚するって言ったろ?永遠の愛を誓うんだろ?」
むつ「……。なんか、人から改めて言われるとアレだな。俺って随分恥ずかしいこと言ったんだな」
華南「おーい、言った本人が冷静になんなよ、俺が恥ずかしいわ!」
むつ「いやー、だって、プロポーズの言葉を改めて考えるとかある?しかもあんだけ啖呵切ったのに、修二覚えてねぇーし」
華南「あー、あれはちょっと恥ずかしいかも…、もう一回修二にはプロポーズしなきゃだしな」
視線が合って、お互い同じことを思ってると気がついて可笑しくなった。
今回のことで修二の心を不安にさせたかもしれない、だけど後悔しても取り戻すことはできないし、嘆いてる時間が勿体無い。不安にさせ傷つけたなら、なおさら前に進めなきゃ、早く再就職して、金貯めて、この気持ちと俺たちの気持ちを形にすればいい。
修二が不安なら、何度でも言えばいい
「俺は修二をちゃんと好きだ。華南をちゃんと好きだ。俺たちの家がすっげー大事だ!!」
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修二「おかえり、むつ」
華南「おっかえりー」
早朝5時。夜間のバイトから帰ってきた俺を修二と華南が迎えてくれる。
早起きして待っててもらう生活に逆戻り…。
むつ「ただいま、修二、華南」
悔しいけど、踏み越える。
2人に感謝して俺は2人を抱きしめた。
修二「むつ、マキが帰ったら電話してって」
むつ「分かった」
修二が華南と2人分の朝食を並べ、俺には夕食のメニューを並べてくれる。
朝のこの時間、一緒に食事する。
マキ『ハァーイ♪あなたの女神マキちゃんでーす♪』
むつ「早朝からバカ言ってんなよ。要件は?」
何事もなかったみたいに過ごして、でも、前とはちょっと違う。
なんか、前より確かなものができた気がした。
マキ『あー、そんな風に邪険にしていいのかなぁー?』
むつ「ごめんマキ、俺眠いんだよ」
マキ『あら素直♪素直な子には吉報がございます♪』
むつ「きっぽう?」
マキ『むつ君資格持ってるんだからさ、出張マッサージやってみない?』
むつ「やる!」
仕事して、恋もして、生活もして、学生から社会に出た途端やることがいっぱいで毎日大変で、学校で勉強してこなかったことだらけで、って、勉強まともにやってなかった俺が言えたことじゃないけど…
もっと、いや、せめてもう少しまともに勉強して社会を知ろうとしてたら、もう少し馬鹿じゃなかったら、考えたらきりがないけど。
俺は今から仕切り直しだ。
大事なものを守るために…
華南「むつ、次の休み土曜だよな」
むつ「うん土曜」
華南「なぁなぁ」
いやらしい顔した華南が手招きしてる。修二は台所で食器を洗ってた。
華南「土曜はむつが前着てたヒョウ柄下着、修二に着せようぜ」
むつ「マジ?嫌がんじゃねぇ?」
華南「見たくないの?」
むつ「見てぇ」
華南「んじゃ、決まり♪」
修二「ちょっと!なんか良くない相談してるでしょ!華南の鼻の下伸びてるよ!」
華南「あはは内緒ぉー♪なぁ、むつ」
むつ「なぁー、かなーん♪」
修二「益々怪しいんですけどー!」
部屋の中は、3人の笑い声で満たされる。
【俺たちのバランス〜終了〜】
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