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お兄ちゃん相関図模様
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それを目にした時。
俺の信じていた世界は崩壊した。
ー約7年前…
奏一『助けに来たぞ修二ッ!!………』
一週間行方不明だった弟の修二は、裸に剥かれ、拘束具で犬みたいに繋がれて、男に犯されて喘いでた。
俺の大事な弟の修二を、犯し監禁していたのは、俺の所属する族、朱雀の右腕、そして俺の兄貴的存在だった人物。〝百目鬼神〟だった。
なんでこんなことになったんだと、悔やまない日はない。
壊れたテープみたいに「ごめんね兄貴」と表情無く繰り返す弟を抱きしめながら、百目鬼を殺したいと何度も思った。
だが、この事件の中身を詳しく知ると、自分の無力さが招いたことだと知る。
弟の修二はゲイで、ずっと片思いを拗らせて誰にも相談できず苦しんでいたこと…。
百目鬼が、俺のことが好きだったこと…。
弟と百目鬼は慰めあってて、セフレだったこと…。
どれも受け入れがたい真実ばかりだ。
壊れた人形のようになってしまった修二が言うんだ、「百目鬼さんが相談に乗ってくれなかったら、逃げ出してた。百目鬼さんと会ってた僕にも責任がある」
俺は、修二の父親代わりのつもりだった。喧嘩が強くて頭が悪くなきゃ、修二を守っていけると、家族を守れると思ってた。ガキだった。
修二の悩みに気付かず、助けも遅れ、平気なふりする修二を励ますこともできない。あの事件のあと、修二を立ち直らせたのは俺じゃない。修二の想い人、事件のことを何も知らない幼馴染の同級生、むつだった。
殺したいほど憎んだ百目鬼は、修二のセクシャリティーの相談に乗ってて、修二を支えてた。俺があの時点で修二のセクシャリティーを相談されても、正しい答えを返せたか怪しい。「男に恋なんて気の迷いだろ」って、言っちまったかもしれない。
俺は修二の兄貴で、親父代わりで、家族なのに。あんなことした百目鬼にも、子供だと思ってたむつにも
劣ってる。
あれから時は流れ…約7年たった…。
修二「兄貴、兄貴!」
奏一「修二…」
俺の経営するレストランバーの事務所で、パソコンとの睨めっこに疲れ、目を瞑って壁にもたれていたら、アルバイトを終えた修二が入ってきた。
修二「仕事中うたた寝?最近働きすぎなんじゃないの?」
奏一「俺は今、休憩中だ」
修二「僕ちゃん上がりだから帰るよ」
奏一「送ろうか?」
修二「ハハッ、もうすぐ20歳なんだし、それにもう〝その心配〟はないだろ。買い物して帰らなきゃならないし」
幸せそうに笑う修二がいる。
あの事件で傷ついた修二は、今、むつと華南と暮らしてる。彼らが修二の心を救い、前へ前へと共に歩む。そして、今の修二は百目鬼とも和解した。
俺は許せないが、修二にとっては、和解することで心が和らぎ、百目鬼と普通に話せることは、修二の安心に繋がる。修二がそうしたいなら、俺は修二のしたいようにさせる。もちろん、絶対二人で合わせたりはしないで、影から監視はするがな。
ープルルルル
店の電話が鳴った。夕方のこの時間は売り上げ報告の電話だ。雨続きで客足が伸びず、雨同様売り上げを聞くのも優つ。
電話の相手は、3号店料理長の夏(なつ)。
夏『オーナー昨日はお疲れ様でした、そしてご馳走様でした』
奏一「お疲れ様。昨日はちゃんと帰れたの?」
昨日は、とある事情から3号店で残業をした。夏と2人だったので、晩ごはんの食事を買ってきて店で食べ、気を利かせてお酒を夏が買ってきてくれたが、俺は仕事が残ってるから飲まないと断った。そしたら夏が、俺の分もかたずけてくれたという話。
夏『帰れたのって、家までオーナーに送ってもらったのに帰れないって私オーナーの中でどんな人なんですか?』
奏一「階段で寝ちゃいそう」
夏『あれ?見てました?フフッ』
奏一「冗談は置いといて、違う話題から入るということは、売り上げ悪いね」
夏『雨にも負けて風にも負けて、5万ちょいです』
奏一「負けましたね」
夏『ディナーで取り返しまーす』
奏一「任せたよ」
夏『了解です、』
夏は、女にしとくのはもったいないと時々思うほど、よく出来た人だ。女性だからの良さか?
店のピーク時に厨房を仕切る夏はなかなか貫禄がある。彼女、俺と同じ27で独り者。婚期を逃さないか心配だ、まぁ、彼女なら売れ残ったら俺が申し込みしてもいいかな、彼女なら俺が忙しいのもブラコンなのも理解あるし、イケメン弟が付いてくるって喜びそうだ。まぁ、夏が俺で良ければだけど…。
羚凰「お疲れ様でーす!あっ、修二君♪お疲れぇー」
明るい陽気な声を響かせて事務所に入ってきたのは、ドアの枠に頭をぶつけそうな高長身のこいつ。
修二「羚凰(レオン)さん、お疲れ様です」
羚凰「もう上がり?俺も上がりだよー、一緒に帰る?そうだ、近くに美味しいケーキ屋があるんだよ、俺が奢るから一緒にお茶して帰ろうよ♪」
犬凪羚凰(けんなぎレオン)身長190㎝のこの超大型犬のような犬顔のこいつは、今年の4月からうちに入社した社員だ。
奏一「俺の目の前で、弟をナンパするとはいい度胸だな」
羚凰「今日も怒った顔が素敵ですよ奏一さん♪」
奏一「気色の悪いこと言うな」
羚凰「奏一さん今度俺とデートして下さいよ。武勇伝聞かせてください!」
奏一「俺は忙しい」
羚凰「仕事終わりにちょこっと」
奏一「暇なら俺の代わりに仕事しろ、そしたら修二と食事が出来る」
羚凰「ああ、両手に花っていうのも有りっすね☆」
奏一「生きてるうちに言い残すことはあるか?」
羚凰は元朱雀の一員。俺とは被ってないが、元特攻隊長の俺の伝説を知って俺に憧れてるとかなんとかで、俺の睨みが全く効かない変わり者。
犬みたいに人懐っこく、図体デカイのに気配りが出来て空気を読むし鼻が効くから邪魔には感じない、むしろ、利口でよく働くしモテる。
ふわふわの茶髪に、人懐っこい顔して、図体デカイのにスルッと人の懐に入るのが上手い。4月に面接に来た時、朱雀の仲間にこいつのことを聞いたが、羚凰の評判は良く、懐けば従順で番犬としては頼もしいとのことだった。
修二「ふふっ、また戯れて遊んでる、羚凰さんほどほどにしないと兄貴口聞いてくれなくなっちゃうよ」
奏一「戯れてない」
羚凰「戯れてまーす」
奏一「レーオーンー」
修二は、羚凰が俺に恐れず冗談とか言ったりするのが嬉しいみたいだ。俺は威圧感があるから、対等に喋る奴が店の中になかなか居なかった。
修二「ふふッ、じゃあ兄貴、僕ちゃん帰るけど、最近働きすぎだから今日くらい早く寝てね」
奏一「ああ、そうする」
着替え終わった修二は鞄を肩にかけながら、頭の中は、俺への心配が1、恋人へ作る今日の晩ご飯9、といった所だろう。
早く帰りたいって顔してやがる。
先週ちょっと元気なかったから心配したが、もう大丈夫そうだな…
修二が事務所から出ると、修二にニコニコ手を振ってた羚凰が、真剣な顔して振り返る。顔を見ただけで、良くない話だと直ぐに分かった。羚凰は低い声で俺に耳打ちする。
羚凰「奏一さん、二号店から連絡が…、またやられたそうす」
奏一「今度はなんだ」
羚凰「看板です」
奏一「はぁ…またか…」
最近忙しい理由。
誰かが、営業妨害してきてる。
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奏一「見つけたら半殺しじゃ済まさない!」
その日の夜、早めに仕事を切り上げ、いつもの面子で酒を飲み、酒に弱い俺は大分早い段階からクダを巻いていた。
谷崎「おいおい、物騒なこと言うなよ」
二つ上の先輩、筋肉バカの谷崎亮司(たにざきりょうじ)は先輩だけど対等な関係、修二が高校生の時の担任。事件のことも知ってる、頼れる人間の1人。
奏一「二ヶ月だぞ、二ヶ月も看板破壊だの落書きだのゴミのポイ捨てなどって、どうも死にたいらしい」
谷崎「お前はもう朱雀じゃないんだから、一般人なんだ。店もあるし、何より、大好きな弟の修二に犯罪者の身内を作るなよ」
奏一「ッ、しゅうじぃ〜」
谷崎「ゲッ!溺愛スイッチ入っちゃったよ」
奏一「もうすぐ一年だ…、修二が実家出て一年。幸せならそれでいいんだ…だけど兄ちゃんは心配だ…、男との将来は決して明るくない…」
反対な訳じゃない、心配なんだ。
理解できないんじゃない、分からないんだ。
一番の理解者になりたい、だけど、俺は百目鬼を許せないし、男となんて自分は考えられない。
あんな現場を見たら尚更…。
忽那「後悔しているんですか?修二くんの同棲」
奏一「彩さぁ〜ん、俺は後悔してるんじゃない、心配なだけだ、巣立つまでずっと手元に置くつもりだった修二が自立して、更には俺の事心配する弟を見て寂しくなっただけだ…。いつの間に大きくなったんだなぁ…」
忽那「ふふふ、奏一の中では、修二君はまだまだ幼い子供なんですね。でも彼をああして気の優しい凛とした子に育てたのは、奏一、貴方ですよ」
忽那彩(くつなあや)は、亮司と同じ高校の保険医。
黒髪の美形で、スラリとした身長に優雅な立ち振る舞い。男なのに男子校の花と言われてる。いつもニコニコしている彼は、アヤちゃんの名で生徒に親しまれてる。メンタルケアの資格も持っているため、修二が在学中には何度もお世話になった。
奏一「修二は初めからいい子だった、小学校低学年の頃、親の離婚の後俺はちょっと荒れたりしたのに、あいつはジッと我慢して、……俺や母さんに迷惑…かけない…ように………」
忽那「眠いですか?…」
奏一「…眠く…な………」
酒を飲み、酔いが回る頃には決まって修二の話をして、クドクド同じことを言うだけ言って眠っちまう。それが俺の悪い酒の飲み方。だから、ほとんど居酒屋には行かず、忽那の家で缶を開けて寝てしまうのがお決まり。
谷崎「はぁー、今日は潰れんの相当早いな、このまま寝かすか?、俺は明日朝練あるから早いし帰るけど」
忽那「ええ、私が寝室に運んでおきますから」
谷崎「奏一もいい加減、弟離れして嫁さん貰えばいいのに、最低でも弟が成人するまで、弟が一人前の男になるまで結婚しないとかって女に宣言しちまって、弟最優先。年を考えろよな、今となっちゃ奏一は修二に心配されてる立場なのによ」
忽那「ふふふ、そうですね。修二君も今年度成人ですし、恋人との同棲も1年上手くいってるみたいですし、弟の修二君にも自分のために時間を使ってくれと言われたみたいですしね、そろそろ肩の力を抜いて自分のことに専念してもいい頃ですね」
それを聞いて谷崎はため息混じりに頷き、酔いつぶれる奏一を心配し
忽那は、優しい手で奏一の頭を撫で、柔らかくを細めた…。
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