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お兄ちゃん相関図模様
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夏「オーナー、大丈夫ですか?」
ランチのピークを過ぎ、事務所で事務仕事をしながら昨晩のことを思い出し頭を抱えていたら、夏が事務所に入ってきて俺に声をかけた。
奏一「大丈夫…昨日飲み過ぎて…」
夏「ふふっ、オーナーって、お酒弱いのに飲むの好きですよね」
弱いのに飲むとロクなことにならないと昨晩嫌という程思い知った。
今もまだ昨日の感触が残ってる…
忽那『奏一…』
羚凰『奏一さん…』
2人の艶のある声を思い出し、ゾクッと落ち着かない。
夏「あらら、オーナー顔真っ赤ですよ、風邪とか引いてないですよね?」
夏の手が俺の額に当てられ、熱がないか確かめてくれた。夏の掌は、女性にしては皮が厚い、厨房で熱くなる鍋などを扱ったりで、火傷なんかもする、だけど、線の細い指先の爪は、マネキュアこそしてないが綺麗に磨いてある。それに、女性ならではのいい匂いもする。でも………………
夏「熱は、なさそうですね。二日酔いに効くドリンク買ってきましょうか?」
奏一「ああ、お願いしてもいいか?」
夏は、「もちろん」とニッコリ微笑む。
俺は…、夏に触れられながら、何を考えた?
女性である夏に触れられながら、彩さんや羚凰に触られるのと何が違うんだろうか?と思ってしまった…。
羚凰の手は、ごつくて大きいから、男って感じでちょっと抵抗あるが、懐っこいのに緊張で汗ばんでるのが笑えた。彩さんの手は、柔らかくて細くて綺麗で…、目をつぶれば、男か分からないかもしれない…。
俺は元々家事の出来なさそうな女の手は嫌いだ。仕事や家事をこなして荒れちゃってるような手の方が好きだ。母さんの手がそうだった。女手一つで俺たちを育て、荒れてる母の手が良くなるように、母の日に上げたハンドクリームを大事そうに塗ってて、でも、毎日仕事に家事にでその手はいつも荒れてた、でもそれは、素敵な手だと思ってた。
結局昨日は彩さんと羚凰に挟まれて眠った。羚凰は硬いままで当たってたからどうなるかと思ったけど、俺に触れてたいのに、下半身が収まらず蛇の生殺しみたいな状態な羚凰が「好きだからこれ以上の事は絶対しない」と唱えながら耐えてるのが可笑しかった。
男だと言うことを考えなければ、好きな人の横で蛇の生殺し状態の辛さは俺にも分かる。
男だと言うことを考えなければ、羚凰のことは気に入ってたし、彩さんは数少ない甘えられる友達…、嫌う要素はない…、だけど、特別好きな何かはない…。
俺は2人になんて答えればいいんだ……。
悩んだ俺は、何となく修二の家へ行ってしまった。
相談できるわけでもないのに…。
だけどそこには、思わぬ人物がいた。
修二「急にくるなんて言うから、何も用意してないよ。友達も来てるし」
マキ「こんにちは♪奏一さん♪」
出た!不思議少年マキ。
今日は男の格好か。
リビングに案内されると、なんだかいい匂いがした。
どうやら修二とマキはお菓子を作っていたようだ。だが、得体の知れないべっちょり潰れたホールケーキらしきものがオーブンの中にあった。
奏一「なんだこりゃ…」
修二「そういう言い方をしないでよ初めて作ったんだから」
奏一「初心者がケーキか?もっと簡単なのからやればいいのに」
修二「いいの、練習する時間はたっぷりあるから」
「座っててよ」って追いやられ、マキと一緒にリビングのソファーに少し離れた隣同士で座った。
奏一「むつや華南の誕生日には早すぎるだろ」
そう漏らすと、マキが照れ笑いしてぺろっと舌を出した。
マキ「えへへ、アレは僕が作り方教わってました」
奏一「あ…、ごめん」
マキ「いいえ、僕料理の才能ないみたいで、簡単なのから教わったんだけど駄目で、だったら作りたいものを何度も練習したほうがいいって修二が手伝ってくれてるんです」
その時、ふと、嫌な予感がした。
ケーキなんて男が自分のために作るだろうか?
この子は誰かのために作ろうとしてる…。修二が台所にいるのを確認して、さりげなく聞いてみることにした。
奏一「付き合ってる人の誕生日ケーキかなにか?」
すると、笑ってたマキが、目をパチクリさせて、へらへら答える。
マキ「ふふ、そうなんです♪手作りは喜ぶよってむつに言われて。自分が作った料理写メってノロケて来るんですよ、ほとんど修二に手伝ってもらった癖に♪」
奏一「あー、それ俺にも送られてきたよ」
マキ「ふふっ、お兄さんに?むつ君て面白いな♪」
奏一「マキ君は、百目鬼のために作るの?」
そうだと言われたら、俺は冷静でいられるだろうか?
そう考えると、手の汗を握りしめた。
マキ「百目鬼さん?」
マキは瞳を瞬いて、俺をジッと不思議そうに見てから、ケラケラ笑いだした。
マキ「あはは、百目鬼さんにじゃないですよ。僕そもそも百目鬼さんと〝付き合ってないし〟。前回のアレだったら、尾行のための女装だから、仕事ですよ。僕はニューハーフじゃないです♪ゲイだけど♪。ウフフ♪似合いすぎててそうかと思ったんでしょ?僕って可愛いから♪今度その仕事で着たウエディングドレスの写メ見せましょうか?自分で言っちゃいますけど美人ですよ♪」
奏一「ウエディングドレス?」
マキ「仕事で着たんです♪」
奏一「でも百目鬼は君は現場に出さない事務員だと…」
マキ「あー、やもえずです。内容は言えませんけど、守秘義務があるから♪だけど、その時ちょこっと自己判断で動いたら超怒られちゃいまして♪」
あの百目鬼に怒られたと言う割に、ヘラヘラしてるマキ。百目鬼が怖くないのだろうか?そういえば、マキは俺が睨みつけても全く動じなかった。
マキ「ウフフ♪そんなに僕と百目鬼さんのこと気になりました?」
奏一「…いや、そういうわけじゃ…」
マキ「じゃあ、百目鬼さんが気になる?」
奏一「はえ?、そうじゃない」
なんか変な感じになってる気がして、この話題は直ぐに止めた。
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誰にも相談できないまま、時間だけが過ぎていく。
修二ほど深刻じゃないけど、誰にも相談できない苦しさが少しだけ分かって、当時修二の力になれなかったことを深く反省した。
そもそも俺が悩む原因を作った人物が側にいる状態がいけないのだろうが、仕事を依頼したのは俺だから、仕方のないのとだ、だけどどうしてよりによって、悩みの種のこの男は、こうも気がついてしまうんだろう。
百目鬼「悩み事があるんだろ、顔に書いてあるぞ奏一」
そもそもお前が原因だ。百目鬼!
百目鬼「それとも俺の顔見るのが気分悪いなら…」
奏一「気分は良くない!そんな辛気臭い顔されたら、こっちまで考えちまうだろ」
百目鬼「すまん」
全く牙をなくしたみたいな顔しやがって…
奏一「………悩みって言うか、聞いてみたいんだけど、百目鬼は修二の前の恋愛事情とかどうだった?」
俺の質問に百目鬼が驚いてた。そうだろう、俺は百目鬼が修二とどうだったかの話しも聞きたくないと殴った事がある。
百目鬼「……修二の前は、お前が好きだった」
奏一「ッ、その前だよ」
百目鬼「…初めて好きになったのが、中学の親友だ。その時俺は男が好きなんだって気づいた。告白はしなかったよ、できるわけもない、俺がそいつを好きになったのって、そいつの好きな女子が突然引っ越して泣くそいつが『百目鬼は突然いなくなるなよ』って言った時だ。好きな女が離れたことに悔し涙するそいつを、俺のために泣かせたいと思った」
奏一「…」
百目鬼「そいつがずっと好きだったけど、誰にも言わず告白もしなかった。俺自身、俺の考えてることが気持ち悪かった。高校は別々で特にいいなと思うのもいたけど、どうせ叶わないだろ?だから何もしなかった、そんな時、奏一お前と出会った」
奏一「まさか…俺に惚れたのも…」
俺には思い当たる節があった。
百目鬼と知り合って間もなくして、背伸びしてる俺に、百目鬼は頑張りすぎるなって言ってくれた…
その時、不覚にも泣いたんだ…
百目鬼「ああ、泣かせたいと思った。すまん」
奏一「……………お前、修二のことは諦めたのか?」
百目鬼「…………諦めた。…だけど、気持ち悪いかもしれないが、奏一と修二のことは好きだよ。どうこうしようとは思ってない、ただ、幸せになって欲しい…、俺に言われたくないだろうけど…すまん」
百目鬼の表情は、今まで見た表情と違い、少し悲しげででも穏やかな目をしてた。
奏一「……新しく好きな奴は出来たのか?俺はてっきりこないだ一緒にいた修二の友達のマキって子に手を出したのかと思ってたよ。でも流石に違ったな、修二の友達に手を出せるわけないもんな…」
百目鬼「…」
奏一「百目鬼には悪かったけど、マキ君にたまたま会って聞いた。〝付き合ってない〟って笑われたよ」
百目鬼「………………」
奏一「…俺、あんたのこと憎むのもう疲れたんだ…」
百目鬼「え?」
奏一「許せない気持ちはあるけど、許してしまいたい」
百目鬼「……そんなこと、言うな。俺は一生許されないことをした」
奏一「時々思うんだ…、あんたも修二も変わろうとして必死で、修二は本当に強くなった。あんたも変わった。俺だけが前進してない。それに、あんたに修二を汚されたと考えてる俺って、修二を汚れたって言ってるみたいじゃないか…」
俺はどうかしてる…。百目鬼に胸の内を話すなんて…
百目鬼「……奏一、俺が全部悪いんだ…すまない」
奏一「…あんたが昔みたいな優しい目をすると、苦しくなる…」
百目鬼「俺は、優しくなんかない。優しいのは奏一や修二だ…優しすぎる。俺のことは憎んで許さなくていいんだ。お前と修二が幸せになるように、邪魔しないように影から協力するから、いつでも使ってくれ」
奏一「百目鬼、あんたは修二と和解した。そんなことしなくていい」
百目鬼「今回の依頼はもう少しかかるが、他にも困ったことがあるなら俺に言え。片をつけてきてやるぞ」
奏一「いや…だから…」
百目鬼「犬凪羚凰…、こいつが関係あるか?」
え!?
百目鬼「あいつの目を見れば分かる。あいつお前を狙ってるだろ、告白でもされたか?」
奏一「あ……ッ…」
百目鬼「俺でよかったら話聞くぞ、お前も修二もそういう溜め込むとこそっくりだ。平気なふりして。奏一は今いっぱいいっぱいだろ?そういう事、誰にも相談出来ないのは辛い、話せよ、俺ならそいつを追っ払うこともなんでもできる」
お前が言うなと思いながら、昔はこういう神さんが頼もしくてカッコいいと思ってた。
修二は、こういう神さんに救われて…、酷い目にあっても、孤独を救ってもらったから、憎めなかったんだな…
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