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(番外編)純愛♎︎狂愛35
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奏一さんはタクシーで帰った。
僕は1人でベッドサイドに並べてあったキーホルダーを見つめた。
どれも、百目鬼さんが連れてってくれた場所。どれも百目鬼さんが買ってくれたもの…
百目鬼さんのくれた優しい時間は、彼なりの愛情だ、それは信じてる…
僕が喜ぶからって連れてってくれた場所。
僕が無理やりぬいぐるみを買ってるのに、律儀にお返しを買ってくれる…
『お前が、そうしたいなら、そうしろ』
あれはどういう意味だった?
僕に別れを切り出させたかった?
それとも…
僕がそうしたいなら付き合ってても良い?
奏一さんは百目鬼さんを好きじゃなかった。だけど、百目鬼さんが、奏一さんを好きなのは事実で、それが過去のものとして消化されてるのか、今も燻ってるのか…、今の僕には分からない…。
奏一『取っ払って考えてみたら?
マイナス思考厳禁で』
奏一さんが言ったことも分かる。だけど、僕といる事で百目鬼さんが苦しんでる事も、セックスしたくないのも事実。
僕が好きだと言い続けても、「好き」だと帰ってきた事は一度もない。
修二『2人とも不器用だからね』
…修二。
僕は、ちゃんと素直になるよう努力したし、好きだって言い続けたよ。
だけど。喧嘩ばかりだし、百目鬼さんは幸せそうじゃない……
僕は別れたくない。別れたくなんかないけど…、百目鬼さんが僕を無下にできないのは、修二の存在があるから、過去に過ちを犯したから、修二の友達の僕を、大事にしなきゃって思い込んでるんじゃないかって気持ちが消せない。
だって、僕のしたいようにすればいいって…
〝別れ話しか〟って〝別れ〟ってワード出してきたのは百目鬼さんなんだよ?
僕は別れたくない、別れたくなんかないよ。初めて繫ぎ止めたいって思った。誰にも渡したくないって、馬鹿みたいに嫉妬した。
『お前が、したいなら、そうしろ』
僕のしたいようにしてもいい?
僕のしたいように、僕が過ごしたいように過ごしていい?
百目鬼さんはどう思うの?
僕のことどう思ってるの?
考え出したらキリがなかった。
触れたい、キスしたい、抱き合いたい…
言葉も欲しいけど、今すぐ百目鬼さんに抱きしめて欲しい。
たまらない気持ちが込み上がってきて、いても立っても居られなくなった。
時計を見たら、終電間近。
間に合うと思ったら、体が勝手に動いてた。
女装の格好のまま、不釣り合いな靴を履いて駆け出した。
斜め掛けカバンだけ握りしめて。
ホームに滑り込んでくる電車を横目に見ながら、全力で走って改札口を通り、けたたましい発車ベルに焦りながら階段を駆け下りて、終電に飛び乗った。
ハァー、ハァー、間に合った…
閉まったドアに寄りかかりながら息を整えていると、駆け込み乗車の僕を周りがチラチラ見ていて恥ずかしい…
そして…羞恥で落ちた視線で、運動靴を履いてきたことに気がついた。
女性ものの大人っぽいシックの黒のワンピースに、ゴツいスポンーツシューズ。
夜の闇と電車の車内の明かりで、電車の扉の窓ガラスが僅かに僕を移す。
あっ、しまった、女装のままだった…
百目鬼さんになんて言い訳しよう…
電車に乗ってる間、百目鬼さんに自分の気持ちをなんて話そうか考えながら、女装の言い訳も考えなくちゃならないって思ったら、ため息が出た。
こんな夜中に行ったら怒られるだろうなぁ…
でも、行っていいか聞いたら、ダメって言われちゃうし…。
そうやってウンウン考えてたら、電車は、あっという間に終点の百目鬼さんのいる駅に着いた。
改札を出て、百目鬼さんちに向かいながらも、どんな風に話をしたらいいか決まらない…。自然と歩調が遅くなり、駅からそう遠く無い百目鬼さんちに時間がかかった。
百目鬼さんのことだから、こんな時間に来たことをまず怒るでしょ、それをなんとか鎮めてから、こないだの話をしながら僕の気持ちを話して…、そんでそれから僕のセックス依存のこと話して…。
あっ、後からだと益々怒るかな…。誕生日に名前に…今回で3回目?でもでも、百目鬼さんは話を聞いたら、
〝セックス依存症だぁあ?てめーはちんこが好きなんだろう!〟
ってキレそう……ああ…どうしよう…
目の前の角を曲がったら、百目鬼さんの家に着いちゃ…
ーキキィィィッ!!!
マキ「わッ!」
目の前に、黒のワンボックスカーが進路を塞ぐように回り込み急停車。
止まった瞬間、後部座席のドアが大きな音とともに開け放たれた。
マキ「ッ!!」
そこには、目出し帽を被った数人の男たち。
脳裏を過ぎったのは、賢史さんの警告
賢史『お前、身の回りに気を付けろよ』
ヤバイッ!!
瞬時に踵を返したとほぼ同時に、男たちが車から飛び出してきた。
無数の手が伸びてきて、僕を捕まえようとしていた。
ヤダ!!
一瞬手が触れたが、僕の反応の方が早くて、指が触れただけで振り切って走った。
背後から数人の足音が追ってくる。
振り向く余裕は無い。
この人たちに捕まったら、色んな意味でヤバイからだ。
賢史さんに警告されてたのに、夜中に一人歩きしたこと。
捕まったことが百目鬼さんに知れたら、きっと凄く怒られる。
あの人たちが誰かは分からない、朱雀の人かもしれないし、そうじゃ無いかもしれないけど、とにかく、捕まったりしたら、全部台無しになっちゃう。
仲直りも出来ない、事務所もクビになる…
それだけは分かった。
スカートがまとわりついて捲れ上がってても、そんなの気にする余裕はなくて、ただ逃げ回った。
何度も捕まりそうになって、だけど運動靴が幸いして、逃げ足も速いし、戦ったりもできた。
走れば走るほど、百目鬼事務所が遠ざかる。
どうしよう!この人達しつこい!
あまりにも追っての距離が近すぎて、携帯が出せない。
息も苦しい…。
唯一の救いは、この土地に一週間ちょっといて、買い物なんかしてたから、多少なら道が分かること。本当は裏路地とかに入りたいけど、そこまでは分からない、行き止まりに入り込んだらお終いだ。
5人?6人?
か弱い乙女を狙うには、ちょっと卑怯じゃないの?ってか、マジウザい!
僕は百目鬼さんと仲直りしに来たのに!!
あとちょっとで駅前ってところで、ロータリーに黒のワンボックスカーが入って来たのが見えた。
ズルイ!!
思わず心の中で叫んで、知らない道へ曲がってしまった。
建物の間の細い道を全速で駆け抜け、道の脇に置いてあったものをなぎ倒して走った。
段々と後ろの追っての団体さんとの距離が出てきて人数が減り始めた。
狭い道を曲がって曲がって、後ろの気配が追いつかなくなったところで、物陰に隠れた。
マキ「ハァー、ハァー、け、携帯」
全速力で走った疲労感で手が重く感じる中、ハァーハァー息を切らして、鞄から携帯とポーチを取り出し、催涙スプレーを手にした。
息を切らせながら、脳裏を過ぎったのは、賢史さんのからかう声。
『女王様の切なげにロミオを呼ぶ声か?』
まさに今、百目鬼さんに会いに行くのを邪魔されてる。賢史さんの呪いだ!なんて無駄な八つ当たりをして、恐怖から冷静さを引き出し楽観視してみせる。
ってか、今の状況じゃ、ロミオは僕で百目鬼さんがジュリエットじゃん!ウケる。
息が整ったところで、辺りを伺いながら身を潜めて携帯の電話帳を開いた。
百目鬼さんに電話して助けを…
あっ…。
ダメだ、百目鬼さん呼んだりしたら、追いかけてる人たちの思うツボかも。
奴らの正体は分からないけど、朱雀である可能性が高い、朱雀の目的は百目鬼さんへの嫌がらせだ。僕を人質にして百目鬼さんを呼び出す事が目的かも…、だとしたら思うツボ…。
ってか、僕は偶然こっちに来たのに待ち伏せみたいだった、もしかしてあの目出し帽の奴らは百目鬼事務所に乗り込むつもりだったかも!?
大変だ!そ、そうだ!賢史さんに…
電話のコール音が、やけに長く聞こえる…
賢史『はい』
賢史さんの声にホッとした。そんな自分が少しおかしかった。
僕は声を潜めて早口で言った。
マキ「百目鬼さんが狙われてる」
賢史『落ち着け、状況は?』
マキ「事務所の近くに黒のワンボックスカーから目出し帽の奴らが出てきて僕を攫おうとした、僕はたまたま来たのに待ち伏せ風だった、百目鬼さん達が危ない!事務所に押し入るかも!」
賢史『馬鹿かッ!危ないのはお前だ!今どこだ!』
アハ♪。そうとも言う♪♪
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