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檸檬の観察日記3
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6月✖︎日
もう、梅雨も終わりになる今日。
初めてマキちゃんがバイトを休んだ。
なんでも、顔をぶつけて痣ができて、接客には不向きで、ちょっと痛いらしい。
その連絡を受けた百目鬼さんは尋常じゃなくイライラしていた。
っていうか。ここ最近、百目鬼さんの様子がおかしい…。
正確には、ずっと前、百目鬼さんの友人の依頼、小日向奏一さんの依頼を受けたあたりから様子がおかしくなり。決定的なのは、姫香さんの結婚式で、ストカー捕まえるのにマキちゃんがナイフの前に飛び出してから。
百目鬼さんは、明らかにマキちゃんを避けていた。
百目鬼さんは、マキちゃんを見なくなった。
それに、マキちゃんを矢田さんに送らせて帰すことも増えてた。
マキちゃんと百目鬼さんは、仕事のあとが2人の時間の筈なのに、全くその時間を取らなくなった。俺は、百目鬼さんがワザとそうしてるようにしか見えなかった。
マキちゃんはというと、いつも通り普通で、何も分からない。マキちゃんも落ち込んだりしたら喧嘩かなぁ?と思えるけど、マキちゃんから2人がどうなってるか知ることは出来ない。百目鬼さんはあんなにだだ漏れなのに…。マキちゃんは、仕事とプライベートをきっちり分けてる。
時々心配になる。マキちゃんは百目鬼さんのこと…好きなのかな?って。
避けられてるの気づいてないのかな?
マキちゃんの気持ちは全然分からないけど、百目鬼さんはすぐ顔に出る。他の人には分からないかもしれないけど、怖い顔がさらに怖くなる。
というか、マキちゃんと付き合いだしてから、百目鬼さんは驚くぐらい変わった。
マキちゃんと知り合う前は、もっと閉鎖的で、眉間にシワが寄りっぱなし。理不尽なことこそしないけど、直ぐ怒鳴るし言い方がキツイ。鬼のような人だった。まぁ、不器用だからなんだけど、俺たち所員は、百目鬼さんはそういう人だからと思っていた。
だけど、マキちゃんが事務所に舞い降りてからの百目鬼さんは、みるみる変わって、最初はマキちゃんにツンツンしてたけど、でも、優しくしてて、これはなんだと杏子と首をかしげてた。
なんだか、ミケを飼い始めた時の百目鬼さんみたいで可笑しかった。どう扱っていいか分からない、おしっこあっちこっちにされて怒って、怯えられて落ち込んで、ちょっとづつ優しくするみたいな。マキちゃんは人懐っこくて、居るだけで花みたいに周りが明るく華やかになる。
百目鬼さんは、チラチラ気にする癖に、俺は気になってないぞってスタイルだった。
もしかしたら、初めから、百目鬼さんはマキちゃんのこと気になってたのかな?
付き合いだすちょっと前とかは、出会った頃の態度が嘘みたいに、色々優しく世話焼いて、あの強面の直ぐ怒鳴る百目鬼さんが、〝今日の子供に喜ばれるおかづ〟って料理本こっそり買ってんの見たときは、陰で大爆笑した。
順調に付き合ってるのかと思ってたんだけど、百目鬼さんは日々変わっていくのに、マキちゃんはあまり変わらない。
百目鬼さんが露骨な嫉妬するようになったり、初めて俺と恋愛相談で飲みに行ったり。日々、百目鬼さんの想いは熱量を増してるようで、こないだなんか、マキちゃんの可愛さに隠れて悶絶してるのを見た日にゃ耐えきれず、目の前で爆笑して殴られた。
だから、時々喧嘩したのか百目鬼さんの機嫌が悪くなったりするのはあったけど、マキちゃんは変わらずだし。
一度飲みに行った日からは、5回誘ったら1回は飲みに行くようになったし、俺的にはいいことづくめだった。
百目鬼さんは相変わらず短気だけど、前みたいに常に眉間にシワは寄らない。怒鳴り方も前とは違って断然優しい。
マキちゃん天使に癒されて、百目鬼さんが潤ってるんだろうなぁ…って。
そう信じたい。
マキちゃんは、俺らの前では、そんなのちっとも見せない。
ただ、腕時計と最近増えたネックレスを眺める時は、天使みたいに微笑む。
だから、上手くいってると思ってた。
小日向奏一さんの依頼を受けてから、百目鬼さんは、マキちゃんを避け始め、なんだか色んなことを調べ始めた。
そして、決定的になったのは、マキちゃんがナイフの前に飛び出した日からは、2人はほとんど仕事の話しかしない、というか、マキちゃんが事務所にいる時間、百目鬼さんがいない事が増えた。
どうなってしまってるんだと心配したけど、マキちゃんはいつも通りニコニコしてる。
一体、2人はどうなってしまうんだろう?
百目鬼さんは、マキちゃんの前でこそ吸わないけど、タバコの量が増え、生活も荒れてきた。
百目鬼さんは、何も相談してくれない。ちょっと寂しい。
今日、初めてマキちゃんがバイトを休んで、百目鬼さんはイライラしながら死にそうな目をしてる。
もしかして…、マキちゃんに振られそうなのかな?
檸檬「百目鬼さん、大丈夫ですか?」
百目鬼「なんともない」
檸檬「今日飲みに行きませんか?」
百目鬼「あ?……あぁ、ちょっと、考えさせてくれ…」
疲れた顔した百目鬼さんは、弱々しくそう言った。こんな百目鬼さん、見たことない。
檸檬「俺!百目鬼さんの味方っすから!」
百目鬼「は?」
檸檬「俺で良ければ聞きますよ!ってか聞かせて下さい!最近の百目鬼さんは見てらんない、俺だって役に立つから、抱え込まないで言ってください!」
百目鬼「………。フッ…サンキュー」
百目鬼さんは、久々に柔らかく笑った。
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