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〔裏番外〕狂愛♎︎純愛28
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その晩、俺たちは別々に寝た。
俺はベッド、マキはリビングのソファー。
寝れる訳もなく、かといって起き上がる気力もない。何度も見た時計は、全く進まない。
マキが泊まる日は、必ず腕に抱いて眠っていたのに、同じ屋根の下にいるのに、俺の左腕にその温もりは無い。別れなければと思ったばかりなのに、無い温もりがもう恋しい。
マキは眠れてるだろうか?誰かの体温が無いと眠れない、それも幼少期の寂しさのせいか?その温もりは誰でもいいんだよな…、俺といない日は水森泉と寝てるんだろ?俺じゃなくてもいいんだよな。ああ、醜い嫉妬が渦巻いてる。マキは、寂しさを埋めて貰えれば誰でもいいんだ…。俺じゃなきゃダメだったら…、毎日この腕に抱いて、朝起こしてやって、温かい朝ごはんを寝ぼけた口に突っ込んでやるのに…。
俺じゃなきゃ生きられないならいいのに…。
握り締めた拳は、悔しさと虚しさに支配される。そんなこと出来ないと分かっているのに、望まずにいられない。マキは、寂しいだけだ…俺と居ても泣かせるし…危険に身を投げる…。そう言い聞かせて唱えても、手放す瞬間を想像するだけで胸が抉られて、理不尽な苛立ちが込み上がる。
マキが安全に暮らせるのも、幸せに暮らせるのも、俺のいない場所なんだ。
そう唱えて目を瞑るも、眠ることはできなかった。
翌朝、5時ごろ物音のしないリビングが気になって寝室から出た。ソファーに居たマキと目が合った。
良かった…居た。
マキの顔を見た瞬間、ホッとしたのと、落ち着いたはずの気持ちが騒めく。〝手放したくない…!〟と、また乱されて荒れ狂う。
マキ「どうしたの百目鬼さん」
百目鬼「…いや、水を…」
咄嗟についた嘘で切り抜けようとしたが、マキは柔らかく微笑んで、何事もなかったように振る舞い、俺の水を用意してくれた。
あんなに酷いことしたのに、マキは普通に歩き回った。
本当は辛いだろ?それとも経験豊富で大したことない?いや、まず謝らなきゃ…
過去に俺に無茶な抱かれ方して平然としてる奴はいない。マキだけだ。
マキだけが俺を受け止められた。だけど、10も年下の子供にそんな負担を強いたくない。そして同時に、俺は醜い嫉妬に駆られる。こんな無茶をしても平気なように、マキは経験豊富なんだと過去の男たちを想像してまう。
眉を寄せる俺に、マキは昨日の事は全然たいしたことないって笑う。
マキは…、俺が別れるって言ったら…、こうやって笑うんだろうか?
それとも別れたくないと泣いてくれるだろうか?
マキ「はい♪百目鬼さんの分♪」
マキは、自分の分も用意して飲みながら、俺に水の入ったコップを手渡してきた。
俺に気を使って明るく振舞ってる。それは分かっているが、マキの真実はどこだ?
名前を偽られたのは頭にキた、だからと言って無理やり犯すなんて間違ってる。
マキはいつもいつも大丈夫だと言ってくれるが大丈夫な訳がない。
百目鬼「…」
マキ「…」
百目鬼「…昨日は…」
マキ「昨日は、僕が悪かったの、本名言わないなんて、結婚詐欺みたいだもんね」
百目鬼「…」
マキ「百目鬼さん、ごめんね、僕のこと許してくれる?」
百目鬼「…」
マキ「僕、事務仕事だけする。百目鬼さんの言うことはちゃんと聞くから、僕を許してください」
きちんと頭を下げられた。マキは、俺と居たいと思ってくれてる…。
だが、事務所には来させられない。瀧本に目をつけられる。朱雀にも。
百目鬼「…事務所仕事を手伝わせるかは、もう少し考えさせてくれ」
マキ「…じゃあ、プライベートは?いつ百目鬼さんに会いに行っていい?」
不覚にも、その言葉が嬉しかった。
マキが、自分から俺に会いたいと言うのは珍しいことだ。いつもは会う曜日が決まってるし、俺が時間が出来て会えると言っても、マキは一言目に必ず「忙しいのに仕事大丈夫?」と聞いてくる。会えば喜ぶが、自分から会おうとはしてこなかった。
だが、今は危険に巻き込まれる可能性があるから、いつとは言えない。
マキが、付き合い続けようとしてくれてる事は嬉しい…。別れなきゃと思っていた筈なのに、いつなら会えるか考えちまってる。
百目鬼「…それも、しばらく考えさせてくれ…」
マキ「…許せないから?」
真っ直ぐ見つめられて堪らず目を逸らした。許せないとかが重要じゃない、危ないことはするなって事なんだ。
百目鬼「…許せてはいない…、だけどもう、怒ったりしてない…時間が欲しい…。今は、家で大人しくしててくれ」
マキ「…ごめんなさい」
俯いたマキの声が、突然震えた。
マキ「僕と…もう一緒にいたくない?苦しいから?」
泣きそうな声で問われて、咄嗟に、「一緒にいたい」と言いそうになって奥歯を噛み締めた。
さっきまでニコニコしてたのに、パジャマの裾を握りしめ肩を震わす姿に、胸が痛む。
唐突に、雪哉の言ったことを思い出した。マキに向けた罵声を修正して無い。マキは、自分が淫乱で俺を苦しめて楽しんでると俺に言われたままだ。苦しいのもマキのせいじゃ無い、俺が勝手に…
百目鬼「あれは、すまない、お前のせいじゃない、俺の問題だった、口にすることじゃなかった、すまん…」
マキ「でも、僕と一緒いると苦しいと思ってるんでしょう?」
百目鬼「ッ…それは…、俺の問題だ」
マキ「苦しんじゃん。
それって僕が跨ってばかりだから?」
それもあるが…
やめろ、酷い言葉を言いそうになる
百目鬼「…だから、俺の問題だって…」
マキ「それとも、奏一さんに顔向けできないから?」
百目鬼「ッ…」
マキは…お見通しだった……
マキ「奏一さんと、会うようになって、罪悪感が増したんでしょ。奏一さん、修二の友達の僕に手を出すなんてことないよなって言ってた…」
百目鬼「…」
マキ「そのこともあって、百目鬼さんは苦しいんでしょ、奏一さんと和解出来そうなのに、僕と付き合ってるから、奏一さんに顔向けできないから、苦しいんでしょう?」
反論出来ない…。
その通りだ……。
マキ「…奏一さんと、最近いい感じなんでしょ?」
は?
百目鬼「変な言い方するな。俺は、仕事をしてるだけだ。そりゃ、奏一と話せるようになったのは嬉しいが、あくまで仕事だ、俺は、自分が過去に何をしたか、忘れるつもりはない」
マキ「…、でも、許されるなら許されたいでしょ?」
なんか、また、余計な事しようとしてるな
百目鬼「おい、首を突っ込みすぎだ」
マキ「…どおして?僕も関係あるでしょう?」
百目鬼「関係ない、お前と奏一は関係ない」
マキ「関係あるよ。百目鬼さん、僕と付き合ってること奏一さんに言える?」
百目鬼「ッ!!」
マキ「百目鬼さんは、僕と付き合ってること奏一さんに黙ってるの、奏一さんを騙してるみたいで苦しんじゃない?」
俺は…、マキに何てこと言わせてるんた…。
マキ「百目鬼さん、僕は百目鬼さんにいつも優しくしてもらって、いつも美味しいもの食べさせてもらって、とっても大事にしてもらって、とても幸せ。百目鬼さんは、ちゃんと変われてるよ。
だから、我慢しなくていいよ、僕は百目鬼さんにとっていい恋人じゃない。いつも怒らせて、いつも心配かけて…。だから、〝僕のことがめんどくさい〟なら、言ってくれて構わないよ。百目鬼さんは、我慢しすぎだよ、本当のこと言ってくれていいんだよ。苦しいのに、半年も僕に付き合ってくれたんだ。
百目鬼さんが終わらせたいなら、終わらせていいんだよ。」
百目鬼「!!」
さっきまで、別れなきゃと思っていたのに、マキに別れを切り出された瞬間、俺は身勝手にも、ショックを受けた。
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