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〔裏番外〕狂愛♎︎純愛38
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【賢史side】
神の放った言葉に、マキは茫然自失といった様子で目を見開いて服の裾を握りしめて固まってる。
神は神で、顔は恐ろしいぐらいマキを睨みつけてるが。言い出したのは自分の癖に、その瞳は辛くて仕方ないってザマだ。
マキ「…」
百目鬼「お前は俺には手に余る!手に負えない!そんなに身投げしてぇーなら俺の見てないとこでやれ!お前の面は二度と見たくない!」
あーあ、そんな言い方して…、後で後悔するぞ神…。
お前がどんだけ、女王様を大事にしてんのか知ってるぜ。
瀧本を調べるのに、だいぶ駆けずり回ってたろ。このやり部屋だって、神が調べてたから良かったものの。神が下調べしてなかったら、マキは何日も瀧本のいいように使われてた可能性だってあった。だから、ちゃんと裏を固めてたのにって神の悔しい気持ちも分かるけどよ、その苛立ちをボロボロのマキにぶつけるべきじゃあないな…。
流石に素人に鞭打ちされて、変な薬でおかしくなってる状態じゃマキに同情もするぜ。
普通ここは〝無茶ばっかりしやがって、俺がずっとそばに居るぞ〟って言う所じゃねぇーのか?だからモテないんだぞ神よ。
マキ「……ごめん…なさい」
みるみるマキの表情から女王様要素が消えていく、悲しいことを必死で我慢する子供のように俯いて、声を震わせていた。
百目鬼「…」
百目鬼はそんなマキを見ながら益々苦しげに眉間にしわを寄せて、唇を噛み締めてる。
ほら神、酷い事言ったって謝るなら今だぞ。
マキ「…で…」
百目鬼「…」
マキ「…捨て…ないで…」
肩をブルブル震わせて、今にも消え入りそうな声で言ったマキの言葉は、願いのようにも聞こえた。
だが、ブチ切れてる百目鬼に、その儚い思いは届かない。
百目鬼「ッ…捨てないで…だと?…」
ふつふつとしていた苛立ちが、グツグツと煮え切ったように、怒気を含んだ声が響くと、マキは、ビクッと肩を震わせて、恐る恐る百目鬼を見た。
聞こえた声と同じに、激震してる百目鬼を見て、マキの瞳からみるみる色が無くなっていく。
俺は事件現場で、何度か不幸な現状に直面して人の目から色が無くなる瞬間を見てきた。
マキの肩を持つつもりはない。むしろ別れたほうが良いと思ってる。だが、流石にこの状況は、同情する。やり方は間違ってるが。マキは、神をネタに脅されてたし、1人で片付けようと背中に傷まで作った。
マキ「…ど…めき…さん…僕…」
百目鬼「…そうだな…俺はお前を捨てるんだ…、俺は…お前を…ッ。
お前を修二の代わりにしてただけだ、だがお前は代わりにすらならない、手がかかるし、言うこと聞かないし、面倒くさいんだよ。だから捨てる。お前なんか、要らない」
マキ「……」
酷い言葉を並べながら、言ってる本人が1番苦しそうだ。
だが、今のマキの瞳に、百目鬼の表情は写ってはいないだろう…。
マキの瞳は、完全に死んでる。
マキ「…」
修二の代わり…ね。
神、お前は修二の代わりの奴に、俺が近づくといちいち嫉妬して追い払ったり、果ては裸で飛び出してきて取り返したりするんだ。
ひと月に一度デートに行って、仕事詰めて食事誘ったり、喧嘩するたびに荒れたりするのかよ…。みんな知ってる、歩く拡張機がいるのもそうだが、どんなに隠してるつもりでも神の全てがそうだと言ってる。
百目鬼神にとって、マキが特別だって…。
それでも、終わりにするんだな?
修二の代わりだなんて言葉で傷つけて、マキを遠ざけることを選ぶのか…。
俺には、マキが大事だから、誰かの代わりだと傷つけて、自分は恋人を捨てるひどい奴だって演じてるようにしか見えねぇーんだけど。
まぁ、俺は初めから神にはマキは合わないと思ってたし、続かないと思ってたからいいんだけどさ。
だってマキは、魔性だ。
神みたいに恋愛初心者には、マキはレベルが高すぎる。
百目鬼「マキ…、いや、茉爲宮優絆だったな。今日でお終いにする、事務所はクビだ。二度と俺に連絡してくるな」
マキ「…」
放心状態のマキに、そうトドメを刺し、百目鬼がマキの後ろへ歩いていく、そこは出口ではないため疑問に思ったが、理由は直ぐに分かった。
瀧本が奪ったマキの青い腕時計が転がってる。それを百目鬼が拾い上げて、持って出ようとした。
マキ「!!」
百目鬼の手の中に、腕時計があると気づいた瞬間、マキは急に覚醒した。
マキ「返して!!」
弾かれたようにフラつく体で青い腕時計が握られた百目鬼の手に飛びついた。
百目鬼「離せ!これは捨てる!」
マキ「これは僕のだ!返せ!」
フラフラのマキが百目鬼に勝てる訳も無い、腕時計は、取り上げられ、手の届かないほど高く上に挙げられてしまってる。マキは半泣きで飛びつくが、身長差と体格で完全にあしらわれてる。
マキ「ヤダッ!返せッ!僕のだ!」
百目鬼「こんなもののために身売りするなんてアホのする事だ!」
マキ「うるさい!僕の勝手だ!!返せ!」
マキの回答にカチンときた神が、鬼の形相になり、ついに腕時計を投げ捨てた。
投げられた腕時計は、ベランダの方まで飛んでいき、換気するため開け放たれたドアからコンクリートのベランダ床に叩きつけられ
ーパリ〜ン。
割れてしまった。
マキ「ッ~~~~~‼︎‼︎」
割れた音と一緒に、マキの表情も崩れた。
それこそ、粉々に…
神は、割れてしまった腕時計に唇を噛み締めて、何かを断ち切るように踵を返して玄関から出て行った。
取り残されたマキは、この世の終わりのような顔して、ベランダに向かってフラフラと歩き、崩れるようにペタッと座り混む。壊れた腕時計の破片を、1つ1つ拾って肩を震わせる。
マキ「…………ッ…~~~」
泣くなら、神の前で泣けば引き止められたかもしれないのに…。
神は、泣き顔に弱い…。泣けば、繋ぎとめられたのに…。
俺は神の味方だ。
これでよかったんだと思ってる。
だけど、目の前で蹲るのが、あの魔性マキ様だとは信じがたい。
いつもヘラヘラ笑って、俺をそつなくあしらい、友達を守るためや神を守るためにナイフを物ともせず、集団に襲われたり暴行されたりしても不敵に笑って済ますあの女王様が、今は小さい子供のように肩を震わせてる。
檸檬『百目鬼さぁーん!!マキちゃん置いてくの?!』
ベランダの下から、檸檬の苛立った声が響いてきた。マンションから出て行った百目鬼に檸檬がマキを連れて帰らないのかと怒ってる。
百目鬼『うるせぇーー!』
百目鬼の声が響いた途端、マキがピクッと動いた。
マキ「…かないで…」
うわ言のようなその声が、余りに悲しい声で、嫌な予感がした。
マキ「行か…ないで…百目鬼さん…」
賢史「おい…」
視点の合わないマキは、フラッと立ち上がり、ベランダから身を乗り出した。
マキ「百目鬼さん!!」
危ない!!
慌てて服を掴んで引き戻そうとしたが、マキはベランダから離れない。
マキ「百目鬼さん!百目鬼さん!どッ…き…さぁ…うぅぅ~~~ーーー」
マキの瞳から大粒の涙が溢れ出て、それと同時に体の力が抜けて崩れていく。
ベランダのコンクリートを爪で引っ搔き
動かなくなった腕時計を握り締め。
マキは崩壊した…
マキ「わぁああ¨ぁあ¨あ¨ーー‼︎‼︎‼︎‼︎」
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