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(番外編)純愛>♎︎狂愛
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僕はどこかおかしいのだろうか?
胸がチクチクズキズキ止まらない。
上手く頭が回らない。これもあの変な薬の影響なのかな?
僕の診断は全部清史郎が聞いてるからよく分からない。
泉「そういえば、さっきの方、禅さんの知り合いなんですか?」
禅「俺の知り合いじゃなくて、父さんの客だ。茉爲宮って珍しい名字だからそうだと思ってカマかけた」
泉「そうですか、次に神託する時は、呪われるとでも言っといて下さい」
顔色1つ変えず、サラッと毒を吐く泉に、禅さんは苦笑い。
禅「俺の客じゃねぇーし、ってか俺まだ神託になる儀式してねーし」
泉「はぁー、反抗期で横道それずに修行してたらこんな役立たずにならなかったのに」
禅「あっ、酷い、冷たい。折角血の滲むような努力で修行終わって久々の再会なのにロマンの欠片もない」
泉「ロマン?マロンの方がまだ役に立ちますね」
泉の酷い言い草に、禅さんが気の毒で仕方ない。
泉が物凄い不機嫌。禅さんが修行開けるのソワソワしながら待ってた癖に…。ごめんね禅さん、今の泉はメチャクチャ僕のことでピリピリしてるんだよね。
禅「さっきキスしたのまだ怒ってんの?」
泉「ッ!、その口を閉じないと二度と開かないように縫い付けてもらいますよ」
禅さんが顔を覗き込むように言うと、すかさず平手打ちが飛ぶ。予想してたのか交わす禅さん。鈍い地響きとともに泉はメチャクチャ睨んでた。
ワオ♪
泉が不機嫌なのは禅さんの自業自得だった♪。
そして酷く怒ったのかと思ったら、泉が今まで見たことないようなキラキラした笑顔で反撃を開始。
泉「マキ、私と美琴さんの結婚式には、是非来て下さいね」
禅「ちょとちょっと!まだ婚約してないだろ!」
泉は禅さんをガン無視。
タジタジの禅さんは一生泉には勝てないね。
禅さんには申し訳無いけど、僕は泉の味方だから、これからは見守ることしか出来ないな。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
2週間ほどの入院で、無事に退院となった。
退院の日、清史郎さんが色々世話をしに来てくれた。
泉も来るって言ってたけど、まだ姿が見えない。
結局、百目鬼さんは、来てくれなかった。
来る訳ないと思っていても、ドアがノックされるたび、もしかしてって思った。
携帯も鳴らない。メールも来ない。
来るのは、むつから何で海行かないんだと怒りのメール。あと、修二からも。
百目鬼さんが毎日くれてたメールも、毎日言ってくれた「おやすみ」も、もう聞けない。
本当に終わっちゃったんだ…。
考えがよぎるだけで涙が出そうになる、だけど、清史郎さんがベッタリでそんな暇も無い、いや、むしろその方がいいかもしれない。1人だったら一日中百目鬼さんのことを考えてしまいそうだ。
賢史「退院なのに元気無いな」
退院の手続きで清史郎さんが離れてる間に、ロビーに座ってたら、突然賢史さんが現れた。賢史さんは、手に小さな箱を持っていた。
マキ「あっ、エンジェルプリン…」
賢史「おいおい、食いモンしか目に入ってないのかよ」
マキ「へへ、ごめんなさい」
賢史さんの手元を凝視してしまってて、慌てて顔を見て笑ったら、賢史さんが僕を見て、少し驚いた顔した。
賢史「ちゃんと食えてんのか?」
マキ「あは、大きい声じゃ言えないけど、早くお家に帰ってご飯食べたい」
病院食が不味いって遠回しに言ったら、賢史さんは察したみたいに苦笑いした。
賢史「細いのにこれ以上細くなるなよ」
マキ「え?ますます綺麗になった?♪」
賢史「俺は尻がプリッとしてた方が好みだ」
マキ「僕のはプリップリだよ♪」
賢史「どれどれ」
ベンチからお尻を浮かして賢史さんに向けると、賢史さんは僕のお尻を眺めてから思いっきりひっぱたいてきた。
マキ「痛ッ!」
賢史「60点。プリンやるからもう少し肉つけろ」
マキ「えー、賢史さんポッチャリ好き?」
賢史「…自分の顔、鏡で見てから言えよ…」
マキ「えー!僕ってかなり可愛い方なんだよぉ!賢史さん条件が贅沢ぅ!」
賢史さんは「ダメだこりゃ」って、プリンの箱を押し付けてきた。
「ありがとう」ってかわい子ぶりっ子で受け取ったけど、正直、今はこのプリンを見たくない。
入院中は、頭を整理する時間はあったけど、ずっとずっと期待してた。「言い過ぎた」って、うな垂れる百目鬼さんが来るんじゃないかって。だから、別れたことを受け止めることはまだ出来てない。
今だって、もう少ししたら来てくれるかもって気持ちが消えない。
でも、分ってる。
百目鬼さんは来ない。
僕と百目鬼さんは終わったんだ。
そうじゃなきゃ、賢史さんがこんな所に来る訳ない。
賢史「家に帰るのか?それとも、実家か?」
マキ「清史郎さんと暮らすことになった」
賢史「へー、過保護そうだもんな」
マキ「うん、しばらく外に出してもらえないよ。でもいいんだ、夏は、僕の玉のお肌が焼けちゃうからあまり外出したくないし」
僕が口を尖らせてそう言うと。賢史さんは困った顔してた。
賢史「……元気出せよ」
マキ「ふふ♪、僕は元気だよ♪強いて言えば欲求不満?♪♪、っていうか、優しい賢史さんって、キモイ♪」
賢史「俺は優しさでできた男なんだぞ、お前こそ贅沢な」
マキ「ふふふ♪」
退院の手続きが済んだ清史郎さんが戻ってきて、賢史さんと挨拶を交わし、賢史さんは帰っていく。
荷物を持って外に出ると、呼んであったタクシーと一緒に、泉が待ってた。
マキ「泉♡」
泉「マキ、私もご一緒しますよ」
マキ「今日は1人なの?」
キョロキョロ禅さんを探したけど、禅さんの姿はなかった。
泉「セットみたいに言わないでください。折角良い物をお持ちしたのに、あげませんよ」
ギロッと睨まれて、慌てて手を合わせて謝った。
僕と泉のやり取りを、清史郎さんが荷物をタクシーに詰めながらクスクス笑ってる。
マキ「ごめんごめん、ゆるぴて泉きゅん」
泉は、ため息つきながら、小さな紙袋を僕に持たせた。
特にラッピングされてる訳じゃない、茶色い紙袋。なにかな?手を入れて中の物に手が触れた。
泉「壊れた部品は新しいのと交換したそうです。ちゃんと販売元に頼んだので復元出来てると思います」
マキ「…」
僕の手の中には、新品同様の青い文字盤の腕時計があった。
だけど新品じゃない。青い文字盤はわずかな色の歪みがあり、それが百目鬼さんに貰った物とまるっきり同じだ。
マキ「え?…え?…ええッ?!」
だけどおかしい!
僕は壊れた腕時計を毎晩握って眠ってた!
アワアワして口をパクパク動かしてたら、泉はサラッと暴露する。
泉「ああ、ビニール袋の中身はダミーとすり替えてありました。2日目からマキはダミーを握って寝てたんですよ。メソメソしちゃってしっかり見れてませんでしたからね。まったく、マキともあろう人が、しっかりして下さい。まぁ、気づかなくてよかったんですけどね、本物も治る保証がありませんでしたから」
マキ「ふえ…ぇ、僕…2週間も気付かなかったの?」
僕は目をパチクリさせながら、ぴよぴよしながら口をパクパクさせてたら、泉はシラっと続ける、
泉「はい、まったく、ぜぇんぜん、目が死んでましたからね。さっ、タクシーに乗って帰りましょうか、新居の整理も手伝いますよ」
マキ「うにゃ!そ、そういえば泉くん!?ど、どうして売ってるとこ分かったの!?ねぇ!」
泉は不敵に笑うばかりで、教えてくれない。
もしかして百目鬼さんが?って思ったけど、壊したのは百目鬼さんだから。そんな訳ない、この腕時計有名なブランドだったのかな?高そうだもんな…
僕の頭はグルグルして腕時計を持つ手が震えて止まらない。
ありがとう泉
腕時計は僕の目の前で青い文字盤をキラキラ輝がやかせ再び時を刻んでいた。
僕の腕時計…
百目鬼さんが一所懸命選んでプレゼントしてくれた僕の宝物。
これがあれば、頑張れる。
二度と百目鬼さんに会えなくても、この腕時計があれば頑張れる。
結局。
百目鬼さんが
僕の前に現れることはなかった。
百目鬼さん。
百目鬼さんにも心から好きな人が出来るといいね。
僕は、百目鬼さんと出会えて過ごせた日々。本当に幸せでした。
心から人を好きになるって、何もかもコントロールできなくて、不安や嫉妬でいっぱいで、でも、幸せなことなんだね。
今はまだ無理だけど、時間が経って現実を受け止めることが出来たら。ちゃんと考えるから、今はまだ、この腕時計に縋らせて…
人を好きになって、一緒に歩んでいくって難しいね。
好きな人が出来ると、頭ん中馬鹿になっちゃって、百目鬼さん一色で、僕は溺れたんだ…。
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